SEA 2022.08.17

旅の記憶とともに振り返る
心動かされた
離島の美しい海6選

「ふと海を見に行きたくなることはありませんか?」筆者も子供の頃、海に遊びに行った懐かしい思い出がずっと頭に残っており、海はいつまでもワクワクする場所。今回は思い入れの深い離島の旅エピソードと一緒に、感動した海の風景を厳選してご紹介します。

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
夏らしいノスタルジックな
景色が根付く「日間賀島」

三河湾に浮かぶ「日間賀島(ひまかじま)」。愛知県における離島は、都会の喧騒から逃れる絶好の旅行先と言えるでしょう。漁船が連なっている湾や、青空と海に映えるカーブミラー、いたるところに置かれた蛸壺など。島の日常と海が緩やかに結びついている、心洗われるような素朴な風景が広がります。

一周約5.5kmとコンパクトかつ起伏の小さい島では、島のどこを歩いても美しい海を眺められます。遮るものがなく、見渡す限り爽快な海。そして夏雲も相まって、まるでドラマのワンシーンのような風景に出会えることも。「こんなに雄大な海が愛知にあったなんて...!!」と、なんだか再発見です。特に、島の北側の道と海のコラボレーションはとても絵になり、妻の後ろ姿を撮影していました。汗をかきながら海辺を歩いた記憶さえも何だか愛おしく、夏の海といえば真っ先にこの「日間賀島」を思い浮かべてしまいます。

初めてにして一番の感動。
心洗われる透明の海と過ごす「小豆島」

筆者にとって旅の原点となった瀬戸内海の「小豆島」。初めて上陸した時、その海の透明度に感動したことを今でもよく覚えています。福田海岸を越えてアップダウンの中、真っ青な海を横目に自転車で駆ける、小豆島一周の道。南風台と呼ばれる展望台の下には、もう一つのエンジェルロードが顔を覗かせています。

中でも、島の風光明媚な海を物語ってくれるスポットが、「三都半島(みとはんとう)」。東部の道には、海に並走する素晴らしいシーサイドロードがあって、半島の先端にあたる釈迦ヶ鼻は、澄んだ水色の海を見せてくれます。西部・神浦(こうのうら)の集落には、綺麗なビーチが寄り添い、波が作る流線美に見惚れました。細部の美しさに息を呑み、時折両手を空に向かって広げたくなる。「小豆島」には、瀬戸内海の雄大さと繊細さの両方を感じられる海の風景が待っています。

海とともに神話を感じる。
国境の島「壱岐島」

かつて日本の国防上、最重要拠点の一つだった長崎県「壱岐島(いきのしま)」。神話にも登場するように、史跡や伝承が多く存在し、女王卑弥呼の邪馬台国と双璧をなした一支国があったと言われています。辰ノ島海水浴場をはじめとして、海が美しいのはもちろんですが、海からもミステリアスな歴史を感じられる点が面白いです。

その代表的なスポットが、島の沿岸部に残る「八本柱」です。もともと壱岐島は”生き島”として動く島だったため、島がどこかに行ってしまわないように、8本の柱を島の周囲に立てて固定したと伝わっています。また”壱岐のモン・サン・ミシェル”と呼ばれる「小島神社」もパワースポットとして近年人気が高まっています。太古のロマンや歴史の謎に触れる機会の多い「壱岐島」。国生み神話からはじまり、知的好奇心の刺激される旅が待っています。

祈りの島に根付く七色の海。
忘れられない景色に出会う「中通島」

長崎県・五島列島の主要5島のうち、一番北側に位置する「中通島(なかどおりじま)」。世界遺産に登録された「頭ヶ島の集落」とつながっており、キリシタン文化が根付く”祈りの島”です。どこかミステリアスなこの島には、まさに”虹色の海”といっても過言でないほど、色彩豊かな海が待っています。

例えば、高井旅海水浴場の真っ青な海や、知る人ぞ知るプライベートビーチ・ハマンナが見せるターコイズブルーの浜辺など。夕暮れには矢堅目公園の高台から、太陽の光の道に見惚れました。中でも島の南西部・桐集落に広がる、エメラルドグリーンの美しい入江に出会った時の感動は、今でも強く印象に残っています。自然と暮らしが共生している島の原風景こそ、五島列島らしさ。個性豊かな海はどれも、人情味を内包している気がします。目的なしに巡るだけで、癒される時間と風景が「中通島」にはあります。

キリシタンの姿を思い浮かべる。
最果ての海が美しい「福江島」

五島列島の主要5島のうち、一番南に位置する「福江島(ふくえじま)」。一周約150kmと大きなこの島では、めまぐるしく海の風景が変わります。絶景として名高いのは、西部の高浜海水浴場。”日本一美しい”とまで言われるグラデーションがかった海を望むことができます。

一方、島の沿岸部には溶岩台地が広がっており、美しい海とは対照的な、力強くて荒々しい海が見られる点も特徴です。遣唐使が寄港した岐宿や、北西部の三井楽半島は、最果ての島らしいスケール感を感じさせます。自転車で福江島を一周して、三井楽半島の「渕ノ元カトリック墓碑群」に到着したのは、ちょうど夕暮れ時。沈んでいく夕日と墓碑が織りなす、祈りの島らしい情緒を味わいました。この場所の存在は、弾圧を逃れるため「福江島」に移住したキリシタンが、堂々と自らの宗教を信仰していたことを物語っています。

橋と海の共演に息を呑む。
ソーダブルーの海が待つ「久米島」

琉美の島(琉球一美しい島)と呼ばれる「久米島(くめじま)」。全長7kmにわたって海上に続く砂州・はての浜が有名ですが、島のいたるところに圧倒的に美しい海の風景が待っています。ソーダ色の海水がタプタプと溢れるような畳石や、自然地形が織りなす南部のアーラ浜など。青色が深く、爽快な海を眺めたいのなら、やはり沖縄なのだと再確認させられました。

The王道と言える海の風景以外にも、久米島には変化に富んだ見応えある海の風景が根付いています。その代表例が橋と海のコラボレーションです。潮の満ち引きによって海の色が変わる新奥武橋や、干潮時だけ渡ることのできる海に浮かぶシールガチ橋など。シールガチ橋では、仕事休みに釣りを楽しむおじいちゃんと歓談に耽りました。久米島に惚れ込み、移住をして数年経つと、満面の笑みで話してくれました。都会にはない自然の豊かさを享受する悠々自適な老後に、なんだか憧れを抱く自分がいました。

「海の風景」を求めて古今東西へ

あなたにとって海はどんな場所でしょうか。幼き日の思い出の景色、大らかに広がる包容力のある存在、磯の香りが懐かしい場所。きっと海を通じて、何かの感情や、五感の記憶が呼び起こされるのではないでしょうか。

単に美しいだけでなく、様々なインスピレーションを与えてくれる、特別な存在である海。離島の数だけ、心動かす海がある。「どんな海に出会えるだろう?」離島へ旅をする理由は、意外とシンプルかもしれません。