長崎県の島は日本本土と大陸の中間に位置することから、古代から海上交通の要であり、交易・交流の拠点であった。特に朝鮮半島との間に飛び石のように浮かぶ対馬・壱岐島は、大陸文化を受け入れる最前線の島。海岸の景勝地を中心とする一部地域が壱岐対馬国定公園にも指定されており、悠久の自然が作り出す美しい絶景や対馬海流による豊かな漁場が魅力となっている。美しい自然を見て、島ならではのグルメを食べて、大陸との交流の歴史を学んで、ゆったりとした島時間に癒されて。旅を特別なものにしてくれる場所が無限にある対馬・壱岐島を、仲の良い友達と楽しむ今回の島旅。いつもと違う非日常感を味わうことで、お互いの新しい一面が見られるかも?
大陸由来の文化と
豊かな自然に触れる
福岡の博多から約130㎞、韓国の釜山からは約49.5㎞に位置し、「国境の島」と呼ばれている対馬。外交や交易の拠点として朝鮮半島や中国大陸との文化交流が盛んだった歴史があり、現在も朝鮮由来の出土遺物や民俗行事などが残る。島の89%が山林で原生林が残っているため、ツシマヤマネコやアキマドボタルなど大陸からやってきた生物が生息。また暖流の対馬海流によって、栄養が豊富な漁場が生まれることで多種多様な魚介類が採れる。そんな豊かな自然と歴史深い文化に触れながら対馬を存分に楽しみたい。
福岡の博多から約130㎞、韓国の釜山からは約49.5㎞に位置し、「国境の島」と呼ばれている対馬。外交や交易の拠点として朝鮮半島や中国大陸との文化交流が盛んだった歴史があり、現在も朝鮮由来の出土遺物や民俗行事などが残る。島の89%が山林で原生林が残っているため、
ツシマヤマネコやアキマドボタルなど大陸からやってきた生物が生息。また暖流の対馬海流によって、栄養が豊富な漁場が生まれることで多種多様な魚介類が採れる。そんな豊かな自然と歴史深い文化に触れながら対馬を存分に楽しみたい。
釜山から約49.5kmほどの距離にある対馬では、どこの観光地に行っても韓国人観光客を見かけた。韓国にいるのでは?と錯覚するほど、ハングルでの説明や看板が多い。韓国との交流の歴史を後世に伝える取り組みや、来島する多くの韓国人に向けた接客の仕方。そこから独自の文化が根付く対馬の姿が見えてきた。
かつて対馬には朝鮮との外交機関である以酊庵(いていあん)が設けられており、そこで働いていた外交僧たちの生活拠点でもあった西山寺。現在は早朝の座禅や写経といった修行体験ができる「宿坊 対馬西山寺」として、国内外から多くの観光客が訪れている。由緒ある境内を散策したり、厳原港から吹く心地いい浜風を感じて心と体を癒したい。
長年韓国で暮らしてきたご夫婦に教わる韓国文化体験教室「対馬STORY」。韓国語を学び、韓国のり巻きのキンパを作る中で、対馬・韓国それぞれの文化が往来していた国交の歴史も聞くことができた。ハングルで書いた文字の形も、好きな位置に具材を並べて巻くキンパも、それぞれの性格が出ておもしろい。
朝鮮半島と九州に挟まれた対馬海峡で採れるアナゴは、脂のノリがよく肉厚で濃厚。「すし処 慎一」ではそんな極上のアナゴを使ったさまざまな料理が味わえる。また戦後に対馬在住の韓国人から味付けが伝わったとんちゃんを「三楽寿し」でいただいた。醤油や味噌がベースになった甘辛い焼き肉ダレに豚ロースを漬け込んだ対馬のソウルフードは、韓国文化が対馬流にアレンジされたまさに国境の味。
対馬は古くから、国外から自国を守るための要塞としての役割を担ってきた。国際交流の島であるとともに、自衛隊が配備された国防最前線の島でもある。対馬最北端に位置する「韓国展望所」からは、天気に恵まれれば釜山の街並みが見えることも。韓国の古代建築様式を取り入れた展望台も見応えがある。望遠鏡を覗くとその近さにびっくり。
江戸時代に対馬藩の城下町として栄えた厳原地区。貴重な資料が見られる博物館や文化を体験できる施設など、多くの歴史的建造物が点在している。島最大の市街地でもあるこの地区には、宿泊施設や飲食店が集合。受け継がれてきた文化は残しつつリノベーションした店も増えており、古さと新しさを兼ね備えた城下町は常に多くの観光客でにぎわう。
対馬藩主家であった宗家累代の菩提寺である「万松院」。そこにある歴代藩主の墓所の御霊屋は、日本三大墓地の1つだ。御霊屋へと続く132段の石段、「百雁木」とそこに並ぶ石灯籠の荘厳な雰囲気に、2人の背筋がピンっと伸びた気がした。 樹齢1200年といわれる大スギが3本残る神秘的な御霊屋への道を、積み重ねられてきた歴史に想いを馳せて1段1段登る。対馬が舞台の「Ghost of Tsushima」というゲームのモチーフとなったといわれている場所で、その聖地としても話題を呼んでいる。
130年以上の歴史を持つ「つしま総本舗株式会社」の焦し醤油プリンを城下町でぱくり。九州醤油独特の甘さが特徴の醤油は、対馬のお袋の味。醤油の甘さが洋菓子にぴったりハマり、対馬醤油のコク深さをより一層味わうことができる。
対馬に新しい風を吹かせる「YELLOW BASE COFFEE」。島に住む人も観光客もみんなが交流できるようなオープンスタイルの店内は、対馬の“BASE(=基地)”として多くの人が集まる。対馬に住む人だからこそ分かる島の魅力を聞いて観光したい。
偶然にも1年に1度開催される子どものための祭、地蔵盆の日に対馬を訪れることができた。30のお地蔵様が色紙や提灯で飾られており、幻想的な夜に。今年は280個もの提灯が対馬醤油の前の川沿いを彩り、島の子どもたちを温かく迎えた。
明治元年に建てられた木造2階建ての旅館、旧有明荘を改修した全2室のホテル「hotel jin」。素材を活かし不要なものを極力取り除いたエンプティな内装で、侘び寂びを感じられる落ち着いた空間に。洗練されたデザイナーズホテルに刺激を受け、明日からも丁寧に過ごしたくなった。
透きとおった海と
島の神秘に癒される
玄界灘に面し九州と対馬の間に位置する壱岐島は、大陸との交易の地として栄え、島全体が博物館のごとく遺跡や神聖な場所が多く残されている。日本の黎明期から島名が登場し「古事記」の国生み神話では、伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)の夫婦神によって作られた8つの島のうち、伊伎島として5番目に誕生。エメラルドグリーンの海が広がる壱岐島では、ビーチや新鮮な海の幸、心地いい潮風など全身でその魅力を感じられる。時間を忘れられる壱岐島で、神様からのパワーをいただき、透明度の高い海の恵みを堪能する癒しの旅を。
玄界灘に面し九州と対馬の間に位置する壱岐島は、大陸との交易の地として栄え、島全体が博物館のごとく遺跡や神聖な場所が多く残されている。日本の黎明期から島名が登場し「古事記」の国生み神話では、伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)の夫婦神によって作られた8つの島のうち、
伊伎島として5番目に誕生。エメラルドグリーンの海が広がる壱岐島では、ビーチや新鮮な海の幸、心地いい潮風など全身でその魅力を感じられる。時間を忘れられる壱岐島で、神様からのパワーをいただき、透明度の高い海の恵みを堪能する癒しの旅を。
神社庁に登録されている神社だけでも150以上ある「神々が宿る島」。小さい祠(ほこら)も合わせると1000以上の神社が存在し、日本一神社密度が高いのでは?といわれる場所だ。町の中だけじゃなく、内陸や海のそばなど島のいたるところで見られる神社は、島の人々の生活に溶け込み心のよりどころとなっている。
干潮時だけ参道が現れる「小島神社」。太陽と月の引力が生み出すパワースポットとして「壱岐のモンサンミッシェル」とも呼ばれている。400年もの間、島の人々から信仰を集めてきた海に浮かぶ神社は、島全体が小枝1本も持ち帰ってはいけない神域。左右を海に挟まれた参道を歩く不思議な感覚に包まれるはず。
猿田彦命(サルタヒコノミコト)が祀られる「男嶽神社」には、御神体にちなんだ200体以上の石猿が奉納されている。石猿は願い事が叶った参拝者が奉納したもので、多くの参拝者の願いを叶えてきたことが分かる。ご神体の岩の前では、コンパスの針が正常に動かないという不思議な現象が起こることも有名。
透き通るほど綺麗な海が特徴で、プライベート感を味わえるビーチがたくさんある。波の音を聞きながらゆるやかな時間を過ごすのも良し、遊覧船に乗って奇岩にぶつかる荒波から自然の壮大さを感じるのも良し。玄界灘の好漁場に恵まれた釣りの聖地でもあるため、四季を通してさまざまな魚を釣ることができる。
無人島の「辰の島」へ向かう遊覧船。船からは透明度が高いエメラルドグリーンの海や断崖絶壁にぶつかる荒波など、ダイナミックな自然を間近で見ることができる。太陽に照らされてキラキラ光る波に思わずうっとり。船長の隣に座って、この島のこぼれ話で盛り上がった。
毎朝8時から11時ごろまで開かれる「勝本朝市」では魚や海産加工品、野菜、果物などが売られている。島のほとんどが山地の壱岐島では耕地は少ないけれど、家で作物を育てている人は多いそう。家で採れたニンニクを炊飯器で炊いた黒ニンニクを売っていたおばあちゃんとの話にも花が咲いた。昔ながらの商店街で、壱岐島の日常を感じられるお土産を買うのもおすすめ。
玄界灘で採れた新鮮な壱岐島の魚介がたっぷり乗った「宝石海鮮丼」。海女さんたちが採るウニを使った名物の「うにめし」は、ウニの炊き込みご飯で壱岐島の郷土料理だ。「うにめし食堂はらほげ」ではほかにも「生うに丼」、「壱岐アジフライ」、「いか刺し」とメニューが豊富で選べない!
おさかな石けんやオリジナルTシャツづくり体験ができる「ACB(アシベ)工房」。思い思いの形に切ったカラフルな石けんを、おさかな型の容器に入れておさかな石けんを作った。太陽に透かすと半透明の石けんがキラキラ。使っていくと魚の骨が露わになっていくところも、遊び心いっぱいで愛おしい。
古民家を手づくりで改装したDIYカフェの「cafe tsukuru」。夏季限定の純氷かき氷にかかる自家製シロップは、イチゴのつぶつぶ食感がたまらない。オーナーの好きなものが詰め込まれた空間は家のような落ち着きがあり、ついつい長居をしてしまった。
魚に合うビールに着目し、壱岐島らしいビールを造り続けている「ISLAND BREWERY」。壱岐島発祥の麦焼酎に使われる白麹由来の柑橘を思わせる爽やかな酸味が、魚料理にやさしく寄り添う。醸造所内にバースペースを併設し、発酵タンクでビールが造られている様子や古民家が立ち並ぶ港町を見ながら、島での思い出を振り返って素敵な夜を過ごそう。
旅の疲れを癒すには、海を眺められるプライベートサウナ「ISARIBI SAUNA」がぴったり。壱岐島の竹をあしらったサウナ室と酒樽の水風呂で壱岐島を感じ、ルーフトップからレトロな港町を見ながらの外気浴に癒された。ととのった後は味覚が研ぎ澄まされ、隣にある「蔵呑み処らんぷ」で食べた壱岐牛や新鮮な魚を使った創作料理が身に沁みた。
太古の歴史を遡り
新たな文化にも刺激を受けた
初心を思い出す旅
大陸からの文化を受け入れ、独自の文化を築いた対馬。輝く海に囲まれた豊かな自然に畏敬の念を抱き、大昔から神様を信仰してきた壱岐島。その歴史や文化を実際に体験したり、島民から教わったりと、知的好奇心をくすぐられる学びの多い旅となった。また離島ならではのゆったりとした時間の中で座禅やサウナ、幻想的な祭りを体験でき、対馬・壱岐島でしか味わえない癒しを得る旅でもあった。島を活性化させようと歴史ある場所を改修したお店や島の特産物を使った新しい商品などに触れ、私たちの感性もアップデートされたように感じる。非日常的な体験をする中で普段とは違う新鮮な気持ちになり、それぞれの意外な一面を見れた瞬間も。そんなことを宿で伝え合い、2人の友情を振り返る良い機会にもなった。