海に囲まれた北海道には数多くの絶景が広がる5つの有人離島がある。それぞれに個性がある島々は、雄大な自然や島ごとの名産品が魅力。高山植物が風に揺れている島や、海鳥が大空を飛び交う島など、数多くの絶景と出会うことができる。島や地域、観光名所の名前は、アイヌ民族が開拓して発展した歴史からアイヌ語を語源としているものがほとんどで、聞き馴染みのない地名の由来を一つひとつ調べてみるのもおもしろい。今回のShima旅は、日本の最北端に位置する離島である「礼文島」と「利尻島」を巡る、カメラ旅の様子をお届け。
Rebun Island
35mmのフィルムに残す 日本最北端の離島でしか見れない 広がる大地と、風光明媚な景色
一島一町の日本の最北端の島として、北海道北端の稚内市より西方59㎞の日本海上に位置する「礼文島」。東西8㎞、南北30㎞とやや細く長い形で、面積約82㎢の小さな島が浮かんでいる。海抜0mから高山植物が群生していることが有名で、年間10万人を超える観光客が訪れる、観光と水産が盛んな島となっている。観光地として1974年に国立公園に指定され、多くの観光客が全国から訪れるようになった。国立公園ならではの美しい景観と、貴重な高山植物による観光の町「花の浮島礼文」をフィルムカメラを旅の相棒に、雄大な大地でたくさんのシャッターを切った。
一島一町の日本の最北端の島として、北海道北端の稚内市より西方59㎞の日本海上に位置する「礼文島」。東西8㎞、南北30㎞とやや細く長い形で、面積約82㎢の小さな島が浮かんでいる。海抜0mから高山植物が群生していることが有名で、年間10万人を超える
観光客が訪れる、観光と水産が盛んな島となっている。観光地として1974年に国立公園に指定され、多くの観光客が全国から訪れるようになった。国立公園ならではの美しい景観と、貴重な高山植物による観光の町「花の浮島礼文」をフィルムカメラを旅の相棒に、雄大な大地でたくさんのシャッターを切った。
吉永小百合さん主演の映画「北のカナリアたち」の撮影ロケ地として、島の代表的な観光地になっている「北のカナリアパーク」。緑いっぱいの大地や青い空が広がる中で、校舎の赤い屋根が一際映えるフォトジェニックな風景が見られる。
海を挟んで利尻富士がそびえる雄大な景色に、思わず息をのむ。旅のお土産に、「ここで見た感動を伝えたい!」とカメラを片手に散策。芝生が広がるパーク内は木製のテーブルやベンチが置いてあるので、休憩スポットとしてもおすすめ。
実際に撮影で使用された校舎の中には、当時の写真や衣装が展示されている。その様子は、映画を見た人はもちろん、まだ映画を見れていないという人も自身の学び舎を思い出して、懐かしく思うくらい細かく小学校の描写を再現している。
公園内には「カナリアカフェ」が併設していて、北海道のローカルジュース「リボンナポリン」や「北海道メロンソフト」などが楽しめる。地域おこし協力隊が中心になり、毎年夏限定で数多くの観光客を出迎える。見渡す限りの緑と青に囲まれて、ゆったりとした島時間を過ごしていると、まるで逃避行している気分に。
北のカナリアパークと道を挟んだところに「北のカナリアパーク前」というバスの停留所を発見。時間を気にせず、バスに揺られてゆらゆらと旅してみると、思いがけないシャッターチャンスがあるかも?!次のバスを待っている時間も、絵になる風景を探してレンズをのぞいているとあっという間に時間が過ぎた。
島の右端にあたる船舶村で車を走らせていると、道沿いにパン屋さんを発見。地元の漁師さんに人気の「プラージュ ド ラパン」のパンは、老若男女問わず誰にでもおいしいと思ってもらえる味を目指して、ご夫婦が毎朝手作りしている。お店には、オーソドックスな「メロンパン」や「ピーナッツコロネ」のほか、らぱんオリジナルの豚まんのあんを詰めた「ぶたぱん」などがラインナップ。午前中には売り切れてしまうことが多いので、早い時間に立ち寄るのがおすすめ!
島の最北端の地である「スコトン岬」は、海岸の断崖がそのまま岬になった景勝地。海に張り出した形の展望スペースからは、海底まで見えるほど透き通った海が見られる。海を眺めていると、野生のアザラシが顔をのぞかせるかも?!大海原の正面には無人島の「海馬島」、対岸には「金田ノ岬」、晴れた日には遠くのサハリンまで見渡すこともできるこの地は航海の難所で、夜には海馬島灯台が航路を照らす。またスコトン岬、ゴロタ岬、澄海岬を巡るコースの出発地点なので、3つの岬を写真に撮って、見比べてみると新たな発見があるかも。
特産品である「利尻昆布」をはじめ、利尻昆布と鰹の合わせ出汁「礼文だし」や、全国の物産展でも人気の「サーモン昆布重ね巻」などお土産品を豊富に取り揃えている「島の人 礼文島本店」。30年以上続くお店は2013年5月にリニューアルオープンを果たし、年間十数万人が訪れるほど店内は観光客でにぎわう。イートインスペースでは利尻昆布の粉末を使用した「昆布ソフトクリーム」を購入できる。
岬めぐりコースや礼文岳コースなど、7つのトレッキングコースが整備されている礼文島。中でも人気の「桃岩展望台コース」は、礼文島南部、香深から桃岩展望台、元地灯台を経て知床へと続く全長約6.4kmを巡る。断崖と青い海が続く礼文島西海岸や、海に浮かぶ利尻山を背景に眺めながら、「フラワーロード」といわれるほど高山植物のお花畑を満喫することができる。普段見ることのないお花を写真に残して、調べる時間も思い出に。
トレッキングコースの道中には、礼文町の町花に指定されている島固有種のレブンウスユキソウをはじめ、レブンシオガマやチシマゲンゲなど、高山植物が咲き乱れている。島の雄大な自然が育んだ花の種類は、なんと約300種類もあるそうだ。極寒の地に差し込む光から、パワーを吸収して咲き誇る花々は見ているだけで元気がもらえる。
島を代表するグルメといえば海の幸だが、その中でも礼文といえば新鮮な「生ウニ」。寒流のリマン海流と暖流の対馬海流がぶつかる栄養豊富な海で、最高級の利尻昆布を食べて育つウニは、驚くほどのおいしさ。漁期が6~9月のキタムラサキウニと6~8月のエゾバフンウニの2種類が獲れ、前者はあっさりクセのない味わい、後者は濃厚な旨み、甘みが特徴。港の近くにある「炉ばた ちどり」で、漁期限定の採れたての「ウニ丼」を味わい、島の味を堪能してみよう。
北海道の各地の漁場で行われている「ホッケ漁」。礼文島・利尻島周辺などは漁獲量が多いことで有名で、中でも礼文島のホッケは非常に評判が高い。北海道の郷土料理として有名なサケのちゃんちゃん焼きのように、味噌と長ねぎを乗せ、焼いて食べる「ほっけのちゃんちゃん焼き」は島ならではの食べ方。柔らかいホッケの身と甘みのある味噌がよく絡み、白いご飯がどんどん進む。お店の人に教えてもらいながら、島流の食べ方をしていると、島暮らしを体験した気分になり心も躍る。
新桃岩トンネルを抜けて、元地の集落を右に進むとすぐ到着するメノウ浜。浜には小粒の砂利が広がり、パワーストーンとして知られる瑪瑙(メノウ)石が打ち上げられていることで知られている。瑪瑙の種類はさまざまあるが、礼文島のものはとてもきれいな乳白色・透明色をしているものが多い。見分けるのは難しいが、自分だけのパワーストーンを見つけると一生の宝物になること間違いなし。
浜を上がったすぐにある「5Rstore」は「Refuse・Reduce・Reuse・Recycle・Rebun products」5つのRをテーマにした礼文島漁師の昆布屋。島の海で採れた天然天日干し利尻昆布をはじめ、流木浮玉シーグラスを再利用した雑貨や海にやさしい雑貨、浜に流れ着いた漂着物など島由来にこだわった商品を数多く置いている。現役漁師である旦那さまと、島に移住して7年目になる奥さまがオーナーを務め、島を訪れた人を温かく迎えてくれる。
©YOSUKE KASHIWAKURA
2021年から礼文島と神奈川の2拠点生活を始めた、ネイチャーフォトグラファーの柏倉陽介さんが撮影した礼文島の美しい風景たち。SHIMA-Omoi-Bitoでは、柏倉さんが写真家になったきっかけや、礼文島の魅力、地域創生への想いについて語ったスペシャルインタビューを公開中です。ぜひご覧ください。
ネイチャーフォトグラファー 柏倉陽介さん
自然風景や環境保護など多岐にわたる撮影をしている。米国立スミソニアン自然史博物館、国連気候変動枠組条約締約国会議などで作品を展示。数々の国際的な写真賞を受賞し、国際モノクローム写真賞では審査員を務める。
Rishiri Island
雄大な自然に心も体も解き放たれ 研ぎ澄まされる感性に 思わずシャッターを切るカメラ旅
日本の北のてっぺんである北海道の稚内市から西へ52㎞に位置する日本最北部の離島「利尻島」。礼文島からはフェリーで約45分乗ると到着する。全国的にも有名な「利尻昆布」や「ウニ」など日本海の海の幸や天然の恵み・湧水に恵まれた、漁業と観光の島で、6月〜8月の最盛期に多く見られる「昆布干し」は島の夏の風物詩。冬には氷点下の世界になる寒冷な気候と、360度海に囲まれているという地理的条件から、コマドリなど約317種類の渡り鳥や、リシリリンドウなど日本ではここにしか咲かない植物が数多く観察できる。ありのままの自然を、自分の目に、そしてフィルムに焼きつけるカメラ旅。心洗われる癒しのひと時を過ごしてみよう。
日本の北のてっぺんである北海道の稚内市から西へ52㎞に位置する日本最北部の離島「利尻島」。礼文島からはフェリーで約45分乗ると到着する。全国的にも有名な「利尻昆布」や「ウニ」など日本海の海の幸や天然の恵み・湧水に恵まれた、漁業と観光の島で、6月〜8月の最
盛期に多く見られる「昆布干し」は島の夏の風物詩。冬には氷点下の世界になる寒冷な気候と、360度海に囲まれているという地理的条件から、コマドリなど約317種類の渡り鳥や、リシリリンドウなど日本ではここにしか咲かない植物が数多く観察できる。ありのままの自然を、自分の目に、そしてフィルムに焼きつけるカメラ旅。心洗われる癒しのひと時を過ごしてみよう。
日本百名山に数えられる標高1721mの山「利尻山」が、島の真ん中にそびえる。その美しい山容から「利尻富士」とも呼ばれ、古くから霊峰として信仰の対象とされてきた。この山は、北海道の銘菓「白い恋人」のパッケージに描かれている雪山のモデルになった山で、利尻や礼文を訪れたことがない人でも見覚えがあるのでは?!パッケージのアングルを真似して写真を撮りたい人は、島内にある「沼浦展望台」を訪れてみて。
「ペシ岬展望台」までの道中には、会津藩士の墓や鴛泊灯台などがあり、頂上までは急な坂道を登る。下から見上げるより、時間をかけずに登ることができるが、急な勾配のため動きやすい服装がおすすめ。頂上からは、それまでの疲れも忘れるほどの絶景が望める。
1884年に創業し、140年以上の歴史を誇る「寺嶋菓子舗」。なめらかさと濃厚なコクが特徴の「利尻プリン」には、プレーンや熊笹、ごま味のバリエーションがあり、地元客や観光客に人気がある。また、銘菓の「利尻島マカロン」や「利尻まんじゅう」などもここでしか味わえない。そのほかにも、最中やケーキなどさまざまな和菓子・洋菓子をお手頃な価格で提供している。島民のお誕生日やイベントには欠かせない、島唯一の和菓子・洋菓子屋さんである。
和菓子を作っているお父さんが見せてくれたのは、昔お店で使っていたせんべいの焼き型。この型で焼いたせんべいには「利尻富士」の絵柄が入り、お店でも人気の商品だったという。息子さんが手がける洋菓子にも、島をモチーフにしたオリジナルのお菓子が数多く、地元愛を感じる。
寺嶋菓子舗から徒歩5分のところにある「北見神社」。1825年、場所請負人の藤野喜兵衛が漁場を開くのに伴い、伊勢の御師に請願し建立されたといわれている。境内は町の有形文化財に指定されており、1924年に建立された「北海道三景の碑」が立っている。
築130年以上になる、利尻に現存する最古の建物の内装をリノベーションし、現在では「カフェ自休自足」や海藻アートを展示する「石蔵文化ギャラリー」、お土産などの物販コーナーを併設する施設になっている。雨の日でもゆっくり過ごせる場所なので、生憎の天気になってしまった時にもってこい!今回はハガキやしおり、キーホルダーを作る体験ができる「利尻海藻押し葉体験」コーナーで、海藻押し葉を使ったハガキを作ってみた。
体験で使う海藻や花は、すべて島で採れたもの。地元のインストラクターやNPO法人の人たちによって、一つひとつ手作業で押し葉や押し花になっている。渡された素材のパックの中には、すじめやてんぐさなどの海藻4種類と、えぞいぬなずなやしゅうめいぎくなどの草花5種類が入っていた。体験で使いきれなかったものは持ち帰れるのもうれしい。
下書きのように海藻押し葉を手でちぎったりして、ハガキに載せる海藻の形や配置を決めていく。せっかくなら利尻で見た風景を思い出に残そうと、「利尻富士」をイメージしたハガキを作成。ピンセットを使用して慎重に貼っていく工程は、夏休みの工作をしているような感覚で時間を忘れて夢中になる。
1913年に建てられた旧鬼脇村役場庁舎を利用した「利尻島郷土資料館」。昔ながらの洋風歴史的建造物で、1973年に資料館として開館している。展示内容は、利尻の自然をテーマにしたジオラマや、近世から近代開拓期の島の生活、ニシン漁場の雰囲気を再現した展示が中心となっている。大正・昭和時代にタイムスリップしたかのような趣ある館内では、写真撮影も可能。利尻山をバックにした建物外観は、映画のワンシーンのようで思わずシャッターを切っていた。
資料館の裏にはさまざまな植物が育てられ、島ならではの高山植物などを見学することもできる。カラフルなお花を見ていると、自然と口角も上がっている自分に気づいた。
利尻島でしか買うことができない乳酸飲料「ミルピス」。1967年から半世紀以上、お母さんが原液から手づくりしている。一口飲むと、どこか懐かしいさっぱりとした味わいが口に広がった。ミルピス以外にも、島内で採取したギョウジャニンニク・利尻昆布・ハマナスなどほかでは見かけない無添加ジュースも豊富。店内に貼られている手書きのメニューやお店を訪れた人たちの感想が書かれたノートに、人の温もりを感じる。
うっそうとした原生林に囲まれた神秘的な「姫沼」。大正時代に湧き水をせき止め、当時あった3つの沼をひとつにして現在の形に。ヒメマスを放流していたことから、その名がついた。湖面に映る「逆さ利尻富士」が美しいことで知られていて、カメラ旅にはうってつけの絶景スポット。沼の周囲には約20分ほどで一周できる遊歩道が整備されているので、自然の中を気軽に散策することができる。昼はのんびりと野鳥のさえずりに耳を傾け、夜には空に無数の星が輝く。入り口付近の売店には、利尻や姫沼の風景を撮った写真や絵葉書などが販売されているので立ち寄ってみて。
鴛泊港フェリーターミナルの正面に、2020年7月4日オープンした「PORTO COFFEE」。スペシャルティーコーヒーのエスプレッソを使用したアメリカーノやラテ、紅茶を楽しむことができるコーヒーショップでは、イートインはもちろんテイクアウトもできる。ドリンクと一緒に、店内で焼き上げたパンやマフィンも提供されていて、特にバターにこだわったクロワッサンが店の一押し商品となっている。島を訪れる人を温かく迎え、送り出してくれる、白戸さんの「おかえりなさい」という言葉に、旅の疲れも癒される。
店内でおしゃれなオリジナルグッズを発見。キャップやタンブラーなどお店のロゴが入った商品は、お土産やプレゼントにもぴったり。旅の思い出を身につけ、次の旅に出ることを考えるとワクワクが止まらない。
港を行き交うフェリーを眺めながら、汽笛の音をぼーっと聞いていると島旅の終わりを感じ、少し切なく感じた。旅の中で、カメラで切り取った数々のお気に入りの景色。現像するまでのワクワクは、フィルムを使ったカメラ旅ならではの楽しみ。
想像をはるかに超える
ダイナミックな自然を目の当たりに
自然と体が癒される時間
札幌からさらに飛行機に乗って1時間、降り立った瞬間から小さな島とは思えない壮大な自然に心を奪われる。観光産業が発展しているので観光スポットも整備されている反面、利尻礼文サロベツ国立公園に指定されているためありのままの自然を楽しめるのが礼文島・利尻島の魅力。自然も、グルメも、体験もあり、旅気分を味わいながら、何もない良さを実感できる島のスローな時間を過ごす贅沢を満喫した。旅の相棒となったフォルムカメラは限られた枚数の中で、心が動いた瞬間にシャッターを切る。その時の感動が1枚の写真に宿っているような、いつまでも旅が愛おしい記憶になった。