唯一無二の島の情緒に魅せられる。離島の半島・岬をめぐる3つの旅へ
日本の離島には、個性豊かな地形や文化が息づく半島や岬が点在しています。今回は、長崎・五島列島の「三井楽(みいらく)半島」、香川・小豆島の「三都(みと)半島」、北海道・礼文島の「岬めぐりコース」を巡る旅へ。青く澄んだ海と緑あふれる景色、土地に根付く歴史やアート作品が、訪れる人を迎えてくれます。海風に吹かれ、波音に耳を澄ませながら、五感で楽しむ離島の半島旅に出かけてみませんか。
長崎の西方、五島列島の中心に位置する福江島。その北西に伸びる半島が「三井楽半島」です。かつて多くのキリシタンが移り住み、信仰を守り続けたこの地には、自然と祈りが共存する独特の景観が広がります。京ノ岳を源とする溶岩が放射状に流れ出してできた地形は、ゆるやかな斜面を描きながら海へと続き、海岸線には黒々とした溶岩礫が連なる荒々しい風景が印象的。草原越しに広がる海と、背後にそびえる七ツ岳などの山並みが織りなす雄大なパノラマは、まさに“最果ての島”の名にふさわしい迫力です。
半島の見どころは「渕ノ元(ふちのもと)カトリック墓碑群」。海を望む斜面に静かに佇むこの墓地は、全国的にも珍しい配置をもち、十字架やマリア像が丁寧に刻まれています。夕暮れ時には、オレンジ色に染まる海と墓碑が一体となり、幻想的な光景を生み出します。かつて外海から移住してきた信徒たちも、この夕陽を眺めながら遠い故郷に思いを馳せていたのかもしれません。また、半島の付け根に広がる「高浜海水浴場」では、“日本一美しいビーチ”とも称されるエメラルドブルーの絶景が出迎えてくれます。自然と信仰が息づく三井楽半島は、離島ならではの原風景と深い祈りの時間を感じられる、特別な旅先と言えるでしょう。
香川県・小豆島の南端に穏やかに伸びる「三都半島」は、周囲約30kmと小ぶりながらも、自然とアートが調和する見どころ豊かなエリアです。瀬戸内海の穏やかな青と、半島を包む山々の緑が織りなす風景は、訪れる人の心を静かに癒してくれます。移動には車が便利ですが、のんびりと島の風を感じたいならレンタサイクルもおすすめです。島内では電動自転車のシェアサイクル「Hello Cycling」が活躍し、気の向くままに景色を楽しみながら巡ることができます。国道436号線から南へ向かう道は、木々に囲まれた緩やかなアップダウンが続き、木漏れ日の合間から瀬戸内海の澄んだ青が顔をのぞかせます。しばらく進むと視界が開け、潮風を感じながら走る爽快なシーサイドルートへ。小豆島らしい穏やかな時間を全身で味わうことができます。
半島の先端にある「釈迦ヶ鼻」は、四国・高松方面を一望できる絶景スポットです。毎年2月になると、白砂の浜辺と早咲きの河津桜がコントラストをなし、思わず息をのむ絶景が広がります。穏やかな海辺に身を委ねれば、波音に包まれながら日常を忘れるような贅沢な時間を過ごせます。なお半島の随所には、瀬戸内国際芸術祭のアート作品が点在。なかでもひときわ存在感を放つのが、神浦の町を見守るように立つ「ダイダラウルトラボウ」です。かつてこの地にあった石垣や役目を終えた船、瀬戸内の海で集められた流木などを組み合わせて作られた巨大な作品で、圧倒的なスケールと迫力を誇ります。その対となる新作「ナップヴィナス」は、全長23メートルの女神像。解体された家屋の柱や漁具、採石場の道具など、この地で暮らし働いてきた人々の記憶を受け継ぐ古材が使われています。その姿は、まるで母のような包容力を感じさせ、神浦の歴史と人々の営みにそっと寄り添うように佇んでいます。
北海道・礼文島の北端に広がる「岬めぐりコース」は、島の魅力をぎゅっと詰め込んだトレッキングルートです。全長約12.4kmで、スコトン岬からゴロタ岬、澄海(すかい)岬を経て浜中まで続き、途中にはレブンアツモリソウ群生地もあります。歩行時間は6時間弱で、北の厳しい気候と島独特の地形を体感できる中級者向きコースです。スタートのスコトン岬までは、路線バスでアクセス可能。トド島を望む大海原が広がる景色は、訪れるたびにその壮大さに圧倒されます。舗装路を進むと鳥居や展望台が点在し、礼文島の最果て感を味わいながら歩くことができます。ゴロタ岬の頂上、ゴロタ山(標高約180m)からは、海と島のパノラマが一望でき、まさに絶景の連続です。
鉄府までの区間は、稜線上で咲く高山植物や海食崖を眺めながらのトレッキングが楽しめます。傾斜が急な箇所もあるため、滑りやすい足元には注意が必要です。澄海岬まで進むと、斜面に咲く高山植物とエメラルドブルーの入江が織りなす絶景が広がり、礼文島の自然の美しさを存分に感じられます。最後の浜中までは舗装路が続きます。途中で群生地を通過しますが、開花時期以外は立ち入り制限があるため注意。ゴール地点のバス停からフェリーターミナルへ戻ることで、島旅を締めくくることができます。アクセスのハードルはやや高いものの、礼文島北限の情緒と自然を堪能できるこの「岬めぐりコース」は、島を訪れたらぜひ挑戦したいトレイルです。
三井楽半島、三都半島、そして礼文島の岬めぐり。それぞれが離島ならではの個性を放つ、魅力あふれる半島です。最果ての海と空が広がり、歴史の名残やアートが息づく風景の中には、訪れるたびに新しい発見があります。レンタカーや自転車、トレッキングなど、思い思いの手段で巡れば、道中の景色や出会いも旅の楽しみのひとつに。海風に頬をなでられ、波音を聞きながら過ごす時間は、日常を離れて心をそっと癒してくれます。離島の岬をめぐる旅で、日本の海と自然、そしてそこに刻まれた歴史や文化を感じてみませんか。