GOURMET 2025.11.19

五感で感じる小豆島の食文化。醤油・佃煮・ごま油の工場をめぐる旅へ

オリーブの島として知られる小豆島ですが、その魅力はオリーブだけではありません。400年以上にわたり受け継がれてきた醤油づくりをはじめ、佃煮やごま油など、伝統の技と島の恵みが息づく“食の宝庫”でもあります。今回は、そんな小豆島のディープな魅力を五感で楽しめる、見応えたっぷりの工場見学スポットを3つご紹介します。

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
オリーブだけじゃない。小豆島の豊かな食文化

日本で初めてオリーブの栽培に成功した地として知られる小豆島。オリーブオイルや加工品は、今や島の代名詞となっています。しかし、その食の魅力はそれだけにとどまりません。
「醤油」や「佃煮」、食卓に欠かせない「ごま油」もまた、島を代表する特産品。醤油蔵が並ぶ町並みや、港にただようごま油の香り——小豆島では、古くから続く食の伝統が今も暮らしの中で大切に受け継がれています。

ヤマロク醤油|木桶仕込みの醤油づくりを間近で体感

100年以上にわたり小豆島の醤油文化を受け継ぐ「ヤマロク醤油」。国の有形文化財に登録された木造の醤油蔵では、伝統的な杉樽仕込みの現場を間近で見学することができます。蔵の扉を開けると、ふわりと鼻をくすぐる独特の香り。それは、長年この蔵に棲みついた酵母菌や乳酸菌が生み出す、発酵の深い香りです。静かな蔵内には、高さ2メートルを超える杉樽がずらりと並び、熟成を待つもろみがプチプチと音を立て、呼吸をしています。かつて木桶を新たに作れる職人が少なくなった現状を受け、五代目社長自身が技を学び、自ら手がけた“初樽”が蔵に据えられています。木桶仕込みの醤油づくりは、時間と自然の力、そして人の手によって守られる、まさに奇跡のような営みです。見学を通じて、醤油が単なる調味料ではなく“生きた文化”であることを実感できるでしょう。見学の最後には、鶴醤や菊醤といった醤油のテイスティングも楽しめます。さらに、敷地内の「ヤマロク茶屋」では、鶴醤を使ったプリンやアイスなど、ここでしか味わえないスイーツも。蔵の香りとともに、伝統の味を五感で堪能できる特別なひとときが待っています。

小豆島食品|手仕事で生み出すアットホームな佃煮体験

島の静かな集落に佇む「小豆島食品」は、創業からおよそ70年、昔ながらの手づくり製法を守り続ける佃煮の老舗です。現在は4代目・久留島克彦さんが舵を取り、伝統を受け継ぎながらも、新しい味づくりにも挑戦しています。使用する素材は、同じ島で仕込まれるヤマロク醤油の「鶴醤」をはじめ、鹿児島・枕崎産の鰹節や、奄美諸島・喜界島の砂糖など、全国から厳選された逸品ばかり。余計な添加物を加えず、素材本来の旨みを引き出すのが小豆島食品のこだわりです。扉を開けると、木の香りと醤油の香ばしさが混ざり合う、どこか懐かしい空気が漂います。レトロな雰囲気の工場では、平釜でじっくり炊き上げる佃煮づくりの様子を見学可能。炊きの工程では、克彦さんが2時間以上かけて木べらで絶えずかき混ぜ、味を均一に仕上げていきます。その姿からは、島の風土に根ざした職人の誇りと温もりが伝わってきます。見学の後には、できたての佃煮を試食できる嬉しい体験も。持参したパックライスを工場内にある電子レンジで温めて、熱々のご飯の上にのせて一口食べれば、素材の旨みと優しい甘辛さが口いっぱいに広がり、箸が止まりません。小豆島食品の佃煮は、少量生産のためここでしか買えないものも多く、一度味わうと忘れられずに郵送で取り寄せるファンも多くいます。伝統と真心が息づく味わいは、まさに“小豆島の宝”と呼ぶにふさわしい逸品です。

かどや製油|ごま油の香りに包まれる資料館見学ツアー

全国シェアNo.1を誇る「かどや製油」。その長い歴史の原点は、実はここ小豆島にあります。土庄港に降り立つと、潮風に混じってふわりと漂う香ばしいごま油の香り。まさに“ごま油の島”の入口に立ったことを実感します。工場に併設された資料館「今昔館」では、創業から150年以上にわたる歩みや、ごま油の製造工程を映像や展示でわかりやすく紹介。見学ツアー(要予約)では、ごまの香りを比べながら楽しむテイスティング体験もできます。ここで初めて知る人も多いのが、ごま油の製法プロセス。ごまを焙煎して搾る「圧搾法」は、昔ながらの製法で、時間がかかりますが、香ばしさとまろやかさを最大限に引き出せるのが特徴です。小豆島の工場ひとつで、家庭用ごま油の需要をまかなえるのは驚きです。なお、かどや製油は島とともに発展してきた企業として、近年は「ごまのみらい小豆島プロジェクト」を始動。国内ではほとんど姿を消した国産ごまの栽培を復活させる取り組みを進めています。見学ではスタッフとの会話を通じて、地域とごま油づくりの深い絆を感じられるのも魅力。見学後には、直販価格で定番のごま油に加えて、ごまらー油など珍しい商品も購入可能。誰もが馴染みのあるごま油ですが、ここでしか味わえない奥深さに出会う体験が待っています。

小豆島で味わう、五感で楽しむ伝統の食体験

小豆島はオリーブだけでなく、醤油や佃煮、ごま油といった伝統食文化の宝庫です。ヤマロク醤油では木桶仕込みの醤油づくり、小豆島食品では手仕事の佃煮、かどや製油ではごま油の香りと製法を体感でき、いずれも職人の技と島の自然が息づく体験が可能。五感で味わう工場見学を通じて、身近な食材の奥深さや島の魅力を改めて実感できます。