OTHER 2025.03.12

ペダルを漕いでアートに出会う!心躍る離島トリップ3選(佐久島、直島、小豆島)

瀬戸内国際芸術祭をきっかけに、アートをめぐる離島の旅が注目されています。島の自然や文化に根ざしたアート作品は、どれも豊かな創造性にあふれ、訪れる人に、島の魅力を新たな角度から発見させてくれるでしょう。そんなアート巡りには、自転車での移動が最適です!

オリーブのリーゼント(作家:清水久和)@小豆島

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
島とアートが響き合う、瀬戸内国際芸術祭で進化する瀬戸内離島

近年アートを活用した島おこしは、日本の過疎化が進む島々で地域活性化の手段として注目されています。特に香川県の直島や瀬戸内海の島々で開催される「瀬戸内国際芸術祭(通称・瀬戸芸)」が代表例です。3年に1回行われるこのイベントでは、アーティストが地域に滞在し、地元の自然や文化を題材にした作品を制作し、観光客を呼び込むことで離島に大きな経済効果を生んでいます。

多くの作品は、島の原風景ともいうべきロケーションに調和しています。作品の素材には、島のアイデンティティや伝統を表現するものが使われていることが多いですが、一方で環境問題など現代の課題を投げかけるものもあり、さまざまなインスピレーションを与えてくれるのが特徴です。瀬戸内国際芸術祭は、地域の伝統や自然資源を再評価し、新しい文化を作り上げているという側面があります。会期を終えても展示される作品もあり、島を象徴する風景が次々と生まれています。

スターアンガー(作家:ヤノベケンジ)@小豆島
歩く方舟(作家:山口啓介)@男木島

アートと島の雰囲気を感じられる自転車が最高の相棒!

2022年に5回目を迎えた瀬戸内国際芸術祭は、規模を拡大し続け、アートが展示される島々も増加しています。また、これまでの開催で生まれた多くの作品が、会期後も島々にそのまま残されているため、瀬戸内の離島ではいつでもアート巡りを楽しめます。「●●島(島名) アート」とGoogle Mapで検索すれば、多くのアート作品が展示されていることが一目でわかるでしょう。

そんなアート巡りには、自転車での移動が最適です。多くの作品は、空間全体を活かしたインスタレーションとして展示されており、作品に辿り着くまでの道のりもまた、アートの一部と感じられることがあります。自転車なら、ゆっくりと風景を楽しみながら、アートが配置された場所全体を体験し、鑑賞をより深めることができます。また、近くに複数の作品が集まっているエリアもあり、自転車の機動力が大いに活躍するのもポイントです。

そこにいた(作家:イ・スーキュン_李秀京)@小豆島

ぶらりとフォトジェニックなアート旅を楽しめる「直島」

瀬戸内の離島とアートが織りなす風景の中で、最も有名な作品のひとつが草間彌生さんの作品です。直島には、草間さんの作品がふたつ展示されています。まず、直島の玄関口である宮浦港に設置された「赤かぼちゃ」。テントウムシを連想させるポップなデザインが特徴的で、瀬戸内海の青と見事なコントラストを生み出しています。この作品は内部に入ることもでき、丸窓越しに海を眺めるのも魅力のひとつです。また、県道256号線からは、静かな漁港と「赤かぼちゃ」を一望できるポイントもあり、その風景は直島ならではの一体感を感じさせます。

もう一つの草間彌生さんの作品「南瓜」は、島の南部の海岸沿いに設置されています。心地よい道をサイクリングで進むと、美しい砂浜に面した場所に突如現れるこの作品。その絶妙なロケーションは、まるで秘密基地のような魅力を持ち、四国と瀬戸内海が背景に広がる中、波の音を聞きながらアートを楽しむことができます。

赤かぼちゃ(作家:草間彌生)@直島
南瓜(作家:草間彌生)@直島

三都半島がアツい!日本屈指のアートめぐりができる「小豆島」

瀬戸内国際芸術祭の舞台となる離島の中で、最も大きな島が小豆島です。芸術祭の会期中には、世界的に注目されるアートアイランドとなりますが、会期が終わってもそのまま残され、小豆島ならではの風景を形作るアート作品が多数存在します。その代表的な作品が「オリーブのリーゼント(作家:清水久和)」です。醤油蔵を抜けた広場に佇むこの作品は、日本と西洋の要素が融合した小豆島の空気感を伝えてくれます。隣家で借りられるリーゼントの被り物を使って写真を撮るのが定番の楽しみ方です。

さらに、小豆島の南部に位置する三都半島(みとはんとう)も、アート鑑賞の拠点として知られています。2016年から展示されていた「潮耳荘(作家:伊東敏光、助成:広島市立大学)」という作品は、2022年の瀬戸内国際芸術祭後に解体されましたが、代わりに「ダイダラウルトラボウ(作家:伊東敏光、助成:広島市立大学)」という新たな作品が展示されています。廃船や流木、石垣など、地元の素材を使って作られたこの作品は、島の漁村を見渡す高台で荘厳に佇んでおり、独特の存在感を放っています。

三都半島では、2022年の会期中に制作された「境界線の庭(作家:土井満治)」や「ヒトクサヤドカリ(作家:尾身大輔)」、「舟物語(作家:フリオ・ゴヤ)」といったアート作品が展示されており、会期外でもアート巡りを楽しむことができます。道中にはアップダウンがあるものの、景色が素晴らしく、走りやすいコースです。全長約30kmのルートをサイクリングするのもおすすめです。レンタサイクル(シェアサイクル)なら、HELLO CYCLINGの電動アシスト自転車を利用すると、さらに快適に巡ることができます。

ダイダラウルトラボウ(作家:伊東敏光、助成:広島市立大学)@小豆島
ヒトクサヤドカリ(作家:尾身大輔)@小豆島
オリーブのリーゼント(作家:清水久和)@小豆島

アートと共に歩む佐久島、島おこしの始まりの地

島とアートといえば、前述してきたような瀬戸内国際芸術祭が注目されがちですが、それ以前からアートによる島おこしが始まっている場所があります。それが三河湾に浮かぶ「佐久島」です。過疎化と高齢化が進む中、1996年に始まったアートプロジェクトは、ありふれた島の風景にアートを組み合わせることで、新しい観光資源を生み出すことに成功しました。コンパクトで回りやすい佐久島は、まるで一つの美術館のような空間となり、多くの観光客を惹きつけています。

さらに、佐久島がすごいのは、この取り組みが今も続いていることです。開始から約30年が経つ中、2023年にはアート作品「佐久島のお庭(作家:松岡徹)」に大波と小波というベンチが追加され、2024年には「佐久島アート・ピクニック」が開催されるなど、一過性の取り組みではなく、島の魅力を磨き続けています。

おひるねハウス(作家:南川祐輝)@佐久島

島の風景と調和する秘密基地たち|佐久島のおすすめアート

佐久島は、島全体がまるで美術館のようで、多くのアート作品が島の風景に溶け込むインスタレーションとなっています。中でも特におすすめの作品をいくつか紹介します。まず、南東部に位置する「佐久島の秘密基地/アポロ(作家:POINT_長岡勉+田中正洋)」。これはアポロ11号の月面着陸をイメージして作られたアート作品で、内部には人が寝転がれるスペースがあり、窓の外には美しい三河湾のパノラマが広がります。波の音をBGMに、いつまでもくつろいでいたくなる居心地の良さが魅力です。

島の北側に位置する「星を想う場所(作家:荒木由香里)」もぜひ訪れてみてください。この場所は、高千谷海岸に設置された、ミクロな宇宙をテーマにしたアート作品です。佐久島の浜辺で集めたシーグラスや小石、さらに島民から譲り受けた小物が組み込まれています。古き良き離島の旅とは一味違って、自然や文化に根ざしながらも、新たな離島の表情を見せてくれるアート作品。これからもどんどん進化していくアートの島々から目が離せませんね!

星を想う場所(作家:荒木由香里)@佐久島