MOUNTAIN 2023.04.19

球美の島「久米島」
沖縄の正統的な田舎を
めぐる一周自転車旅

那覇から飛行機で約35分の場所にある久米島。琉球一美しい島=球美の島と謳われる離島には、沖縄離島らしい原風景が根付いています。1周約50kmとコンパクトで、近年は久米島シュガーライドも開催される、サイクリストの新たな聖地となっています。

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
旅の始まりは久米島空港か兼城港

久米島へのアクセス方法は、飛行機かフェリーの2択です。最寄りの空港から花空港までアクセスし、そこから久米島行きの飛行機に乗り換えるか、もしくは那覇泊港から兼城港(久米島)のフェリーに乗るという方法があります。時間のある方は前者、時間に余裕があって少しでも節約したい方は後者を選ぶと良いでしょう。なお前者を選択する場合、輪行に超過料金は一切かからないJALがオススメです。朝に那覇空港入りができれば、飛行機乗り換えで最短でお昼過ぎ、フェリーで夕方には久米島入りをすることができます。

久米島一周自転車旅のおすすめ順路

一周約50kmと比較的コンパクトな「久米島」。時間に余裕があれば1日で走り切れる距離なのですが、見どころが多いので1泊2日の行程をオススメします。順路としては、島を時計回りに走るコースが良いと思います。理由としては以下の2つ。道路は左側通行のため、海がより近く感じられるということと、宿泊施設が集まるイーフエリア(イーフビーチ周辺)をちょうど中間地点に設定できるからです。また北部は島で一番アップダウンが多いので、帰りの便に間に合わないという事態を避けるために、なるべく平坦が多く余裕を持って走れる南部を2日目のコースとしたい意図もあります。

田園地帯を抜けてミーフガーへ

まず一つ目の目的地としたいのは、北部の景勝地「ミーフガー」。久米島の出生率が高い理由だと伝えられている巨大な奇岩です。このミーフガーに至るまでの道が、久米島らしい景色変化を見せてくれる筆者イチオシの区間。牛が飼われている長閑な田園地帯を走り、久米島灯台をすぎると爽快な海岸道路に入ります。海食崖のような荒々しい地形を眺めながら、ロングストレートを快走すると、ダイナミックにたたずむ「ミーフガー」が展開。ミーフガーに向かって真っ直ぐ吸い込まれていくような道は、思わず息を呑んでしまう迫力を備えています。

島の原風景を駆ける北部ライド

ミーフガーを後にしてヒルクライム。具志川城を通り過ぎると、ダイナミックな海を振り返ります。適度に息が上がったところで、久米島一周道路に辿り着くと、緩いアップダウンの連続。テンポ良く道をこなしながら、島の北部を駆け抜けています。サトウキビ畑の間を走る道や、点々とする赤い屋根の家、地域に根付くパイン園や久米仙の酒造所など、次々と流れていく島の原風景に癒されます。ハイライトは「比屋定バンタ」。坂をクリアした先に、断崖地形と深い海の織りなす絶景が大パノラマで展開します。天気が良ければ、遠く「はての浜」が美しいです。

魅惑の海が広がる奥武島散策ライド

海に飛び込むようなロケーションの「てぃーだ橋」を過ぎると、いよいよ島の中心エリアへ。沖縄らしい集落景観の中を走り抜けます。道路中央線の代わりの「真謝のチュラ福木」が面白いです。奥武島(おうじま)へ続く「新奥武橋(しんおうばし)」へ至ると、そこに広がるのはソーダブルー色の海。深いグラデーションを作りながら、透明度の高さを見せる美しい海の風景を楽しむことができますよ。奥武島のメインスポットは「畳石」。火山活動と海の浸食で形成された幾何学模様と、鮮やかな海のコラボレーションに見入ってしまいます。少しミステリアスで、いつまでも眺めていたくなる、ひたすらに綺麗で落ち着くスポットです。

感動のはての浜センセットツアーに乗船

久米島に訪れたら、やはり東洋一美しいと謳われる「はての浜」にも足を運んでおきたいところ。しかし日中だと、サイクリングの時間が確保できなくなるのでおすすめしたいのが「はての浜サンセットツアー」。新奥武橋のたもと近く、泊フィッシャリーナから船に乗り、日没間際の「はての浜」へアクセスします。ターコイズブルーの浜とはまた違って、ほのかに紫色に染まる情景が幻想的。日中に比べてツアーのお客さんも少ないため、ビーチを独り占めできることも。心洗われる夕暮れの時間を過ごすことができますよ。

自転車を持ち込める
リゾートホテルに宿泊

サイクリストに優しい久米島。イーフエリアのリゾートホテル「リゾートホテル久米アイランド」は、お部屋にマイ自転車をそのまま持ち込むことができます。自転車の自立スタンドのほか、工具や空気入れも貸してくれるので、何かあっても安心です。豪華な朝食バイキングも嬉しいポイント!和・洋・琉球料理を30種類以上が揃っており、プチプチの海ぶどうや、島豆腐など、久米島の食材も数多く並びます。夕食は近くの居酒屋「浪路」さんへ。「刺身盛りのボリュームが半端ない!」と地元のお客さんからも有名です。

閑静な集落と秘境アーラ林道をゆく

ゆっくり休んで朝食でエネルギーを補給したら2日目のスタート。県道245号線を南下して、島尻集落へ走るシーサイドロードは、島一周道路の中でも一番気持ちの良い区間です。島尻はこじんまりとした素朴な集落。集落全体で花を大切にしており、随所に花畑が広がります。島尻集落からは久米島の中でも秘境の雰囲気を漂わせる「アーラ林道(県道245号線)」へ。青い海のイメージとは一線を画し、緑の深い山岳道路を走り抜けます。タイミングよく2月に訪れることができたため、冬に咲くカンヒザクラも鑑賞しながら、気持ちの良いヒルクライムを楽しむことができました。

隠れた絶景ビーチと絶品・車海老そば

アーラ林道を通り抜ける前にぜひ立ち寄って欲しいのが、儀間集落の外れにある「アーラ浜」です。ひたすらに静寂で、宝石のような海の色を見せるビーチ。ぜひゆっくりと時間を取りたい、久米島の隠れた絶景スポットです。振り返ればアーラ岳の山容も。あの山麓を自転車で越えてきたと思うと、なんだか感慨深いですね。アーラ浜を後にしたら、お昼に立ち寄ってほしいのが「ゆくい処 笑島(わしま)」さん。久米島名産の車海老をスープのベースに、トッピングにも車海老を贅沢に使用した「車海老そば」をいただけます。サイクリングで消耗した身体に、濃厚な旨味が凝縮したスープが染み渡ります。

久米島のミステリースポットへ寄り道

帰りの便まで時間に余裕があれば、久米島のミステリースポットを巡ってみてはいかがでしょうか。その一つが「おばけ坂」。平坦な道なのに、なぜか傾斜がついているように見える、不思議な道です。上り坂に見えるのに、勢いをつけて走ってみると、ペダルを漕がずに進むことができます。またカンジンダムのほとりにたたずむ「五枝の松」も密かな見どころスポット。地面を這うように枝を伸ばす、壮大なリュウキュウマツは樹齢250年余と推定され、日本の名松百選にも選ばれています。久米島の農業の守り神と言える松です。

いかがでしたでしょうか。久米島の王道からディープな魅力まで満喫できる1泊2日の自転車旅。ぜひマイ自転車を輪行してトライしてみては?