OTHER 2022.12.28

離島ひとり旅の
愛好家が教える
粟島サイクリング旅

新潟県の離島といえば真っ先に浮かぶのが佐渡島ですが、そのさらに北には粟島(あわしま)があります。面積は9.86㎢、人口約350人の小さな離島には昔ながらの食堂や商店、何もない風景に自然が作る絶景など、離島の魅力が凝縮されています。今回は、都内で働きながら週末で離島へひとり旅に出かけている筆者が、2011年から数年にわたって4回訪れサイクリングをした様子を、写真を交えながらお届けします。

大畠順子
(離島ひとり旅愛好家)
普段はラジオ局(TOKYO FM)に勤務しながら、休日に全国各地の離島を旅する。思い立って気軽に行ける離島から、船が週に1便の島、定期船のない島、絶海の孤島まで、さまざまな島旅を実践。これまでに訪れたのは80島以上。著書に旅のエピソードをまとめた『離島ひとり旅』(辰巳出版)。 Twitter:@oohatasan ブログ:旅と日々のこぼれ話。時々、離島ひとり旅(https://tabinokoborebanashi.com/)
サイクリングが気持ちいい粟島
内浦港で自転車を借りて出発!

粟島でおすすめなのがサイクリング。島をぐるっと1周できる道路があって、アップダウンはあるものの約23kmとちょうどいい距離感です。健脚な方であれば2時間弱で1周できますが、離島の美しい風景を写真に収めたり、休憩したり、坂道は自転車を押して歩いたり、昼食を取ったりしながら4時間くらいかけて1周するのがおすすめです!ゆっくり宿泊はもちろん、サクッと1周して海に入って夕方の船で帰る日帰り旅もできます。

新潟県村上市の岩船港から大型船(フェリー)で90分、小型の高速船で55分。粟島に2つある集落のうち「内浦」にある粟島港に到着します。2つの集落「内浦」と「釜谷」にはそれぞれ民宿と飲食店が数件ずつ。「内浦」には観光協会や役場があります。

自転車は港の待合室に併設されている観光案内所で貸してくれます。初めて訪れた際は職員さんに「途中に自動販売機も何もないので、必ずこの集落で飲み物を買っていってください」と念を押されたのが印象的でした。

自転車を借りたら、反時計回りでサイクリングに出発!もう1つの集落「釜谷」までは1時間〜1時間半の道のり。その間は青々とした緑、澄んだ空、輝く海に包まれながら、アップダウンの激しい坂道を乗り越えていきます。途中には絶景ポイントの八ツ鉢鼻展望台も。道のりを写真で紹介します!

1杯なんと2000円!
幻?の粟島ラーメン

汗だくになって到着した釜谷集落にあるのが、かもめ食堂。なんと1杯2000円の粟島ラーメンがあるお店です。筆者は粟島に4回訪れているのですが、初めて訪れたときは船酔いで食事どころではなく、帰宅後にラーメンの存在を知るという悔しい思いをしました。その1年後、2度目の訪問のときは、粟島ラーメンを食べて2000円の理由を確認する!と意気込んでいたのですが、到着して注文をすると「ごめんね、予約がないと作れないのよ」と言われ、絶句することに…。そして、さらにその1年後、3度目の訪問で前日に予約をして、念願の「粟島ラーメン」にありつくことができたんです。

ラーメンが出てきてびっくり!まず、どんぶりが大きい。2.5人前くらいの麺の量です。その上にどっさりと海の幸が乗っています。アワビ、イカ、タコ、サザエ、メカブ、ワカメ、なぜかジャガイモ。東京で刺身として注文したら2000円でもお得すぎる量の豪華な海の幸でした。ぜひ一度、食べてみてください。かもめ食堂には他にも、普通サイズでタコとワカメとサザエが入った「磯ラーメン」や、サザエがどっさり入った「サザエだらけ!海カレー」など人気メニューがたくさんあります。

絶景のなかを一気に下る
爽快感は別格

腹ごしらえをして釜谷集落を出発!しばらく進んだら、コースのなかで勾配が一番キツい坂道があります。自転車ではとても進めないので、押して登りました。ちなみに2014年の訪問時に、新潟市内から来た小学生低学年の男の子とそのお父さんが親子2人でサイクリングをしていて、同じルートなので展望台などで休憩のタイミングが何度か重なりました。その親子が急な坂道を先に登り終えていて、坂の上から「がんばれ〜!がんばれ〜!」と応援してくれたことが思い出に残っています。

坂道を登り切ると展望台があります。達成感と目の前の絶景に癒されます。そして、ここから一気に下るのですが、この下り坂が本当に気持ちいいんです!右側がすぐ海になっていて、特に初夏〜夏は左手の萌える緑とのコントラストが美しくて最高です。坂を下り、まだまだ続く海沿いの道を進むと、ポニーのいる牧場やキャンプ場、海水浴場が見えてきます。さらに進むと、出発地点の内浦集落に到着します。

熱々の石で沸騰させる
粟島名物「わっぱ煮」

粟島の名物料理といえば「わっぱ煮」です。杉を曲げて作った「わっぱ」という容れ物に、焼き魚・味噌・ネギを入れて、高温に熱した石を入れて沸騰させてから食べる独特な料理なんです。内浦地区の食堂「あわしま屋」は島で生まれた漁師のご主人が経営する、島で最初の食堂です。同じく内浦地区の食堂「みやこや」でも食べられます。

わっぱに石を入れると聞いたときはびっくりしましたが、石を入れて煮立つ様子はなんとも食欲をそそります。味噌ベースで魚の旨みがじんわり感じられる素朴な味で、粟島らしさのある一品です!

また、初めて粟島を訪れたときは、昔ながらの食堂や商店以外に何もない!という島だったのですが、3度目の訪問の際、お洒落なカフェがオープンしていたのを見つけたときはとてもびっくりしました!それまでは役場の方の「集落にしか飲み物を買う場所がないので、サイクリングのときは必ず飲み物を買ってくださいね」とアドバイスされ、自動販売機で飲み物を購入し、島を一周してヘトヘトになって戻ってからも自販機で飲み物を買う、というスタイルでした。帰り際にカフェでアイスコーヒーが飲める衝撃は大きくて、ありがたい存在です。

粟島のサイクリング旅はいかがでしたか?ちなみに私が訪れたときは電動自転車の貸出はありませんでしたが、現在、観光協会のホームページを確認すると「アシスト付き」が追加されているので、電動自転車が追加された可能性があります!なお、自転車はフェリーでも高速船でも数百円で持ち込めるので、クロスバイクやマウンテンバイクをお持ちの方は持ち込むのも選択肢ですよ。