MOUNTAIN 2022.07.13

絶景のアイランドホッピング!
〜自転車で駆け巡る島旅〜
5つの魅力とは?

美しい自然に触れながら、島民との温かな出会いにあって、初心者でも始められる離島自転車旅。これまで日本各地の島を自力で旅をしたトラベルライターがその魅力を語ります。

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
島の魅力を再発見する自転車旅

数え切れないほど、個性豊かな島々に恵まれた日本。

神話に登場する壱岐島や、どこか異国情緒漂う小豆島、暮らしとキリシタン信仰が緩やかに結びつく五島列島など。ひとえに島といっても、一括りにできないほど様々な表情を見せてくれます。

初めて訪れる目新しい土地なのに、なぜか故郷のように懐かしい。上手く表現できない、相反する感情を抱かせてくれる場所です。

今回はそんな島の魅力を再発見する「自転車旅」という楽しみ方をご紹介します。まるで島に溶け込むように旅をして、一期一会の出会いに触れる。走りごたえと爽やかさに富んだ旅の魅力をお伝えしましょう。

筆者の原点は瀬戸内
オリーブの島「小豆島」

筆者がはじめて自転車で島を旅したのは瀬戸内。オリーブの島として有名な、香川県の小豆島です。
余談ですが、実はその時の記憶が忘れられず、その後何度も足しげく通うほど小豆島が大好きになったため、小豆島の地名をお借りして、”土庄”というライター名で活動しています。

当時、通学の延長からロードバイクにハマっており、ふと思い立って、自転車に乗って小豆島を訪れました。
今思うと、はじめからこの自転車旅というスタイルをとったからこそ、島を旅する楽しみ方が何倍も広がってきた気がしています。
待っていたのは、心洗われるような海の色と、心地よい潮の香り。都会の雑踏はなく、ひたすらに穏やかな景色と時間が流れていました。
そして人との出会いにあふれ、自分が触れたことのない価値観を知ることもできたのです。当時学生だった私にとって、社会人へつながる大事な影響を島から授けていただきました。

絶景を集める
壮大な島の自然を駆けめぐる

自転車で島を旅する中で、いつも味わってきたのが、島の自然の豊かさです。
宝石のように陽光がキラキラと輝いたり、澄んだターコイズブルーを見せてくれたり、時にはオレンジ色に染まったり、いつも海の表情変化に癒されます。
そんな果てしなく美しい海を見ながら、軽快にペダルを漕いでいく時間は、言葉に言い表せない爽快さに富んでいます。

一方で、海だけでなく、意外と山深い側面もあり、緑や紅葉の美しい島の姿も垣間見てきました。
例えば、はじめて訪れた小豆島には、寒霞渓という大渓谷が発達しています。

渓谷に色づく壮大な緑の先に、瀬戸内の多島美と真っ青な大海原が広がる情景は、今でも胸に焼きついて離れません。自転車で上ったからこそ、感動や達成感もひとしおです。

移動だけでない。
人の暮らしと自然に溶け込む道具

移動手段である自転車ですが、島の生活に溶け込むために、とても適した道具だと思っています。
ゆったりとペダルを漕いでいると、いろんな風景が見えてきます。
水揚げしている漁船と漁師、お魚を恵んでもらえないかと待つ猫、街角で盛り上がっている井戸端会議など、都会暮らしで忘れかけていた、古き良き日本の姿があります。
また内陸部には棚田が展開していたり、湧水が汲めたりと、豊かな山の恵みを受けて成り立つ日本の原風景を見られることも。

コンパクトな島には、港町から山間部まで、人の暮らしと自然が共存する日本の伝統が息づいています。
そんな、どこか懐かしい記憶の片隅にある風景を、自分の足で見にいくという経験こそ、なんとも旅情を高めてくれるのです。

島が第二の故郷に。
道中、意外な発見や出会いがある

風景だけでなく人との出会いに富んでいることも、島を自転車で巡る魅力だと思っています。

ロードバイクで島を訪れると、物珍しさから声をかけていただく機会も少なくありません。「どこから来たの?」から始まり、10分ほど談笑にふける時間。
このひとときこそ、自分の癒しだったりします。ありのままの自然体で、何も気にせずコミュニケーションが取れる。ここには、都会で感じる窮屈さは微塵もありません。
そして時には話が弾んで、思わぬ方向に進むこともあるかもしれません。筆者も3年前に、五島列島・福江島を自転車で旅した思い出が今でも記憶に残っています。
朝、鎧瀬(あぶんぜ)海岸という景勝地に自転車で立ち寄った際に、ワンちゃんを散歩させているおばあさんに会いました。その後なんと自宅に招き入れていただき、朝食をいただいた後、ついにはお宅に泊めていただくことになったのです。
ワンちゃんは赤ちゃん犬で、この日初めて、お外で散歩をさせたのだそう。まさに紙一重の一期一会でした。他にもこの五島列島では、数え切れない濃い出会いがありました。
おおらかで優しく、とても人情味のある方が多い島。自転車で巡りながら、自然体で出会いを楽しみ、人の温かさに触れると、心のふるさとが一つ増えたような充足感に満たされます。

島のファンに。ルートを変えて
再訪がさらに楽しく

一つの目的地へ旅をすると、スタンプラリーのような感じで、次の旅はまだ訪れたことのない場所へ決めがちではないでしょうか。
しかし、自転車で島を訪れると、はじめから島の深い魅力に触れるため、何度でも再訪するファンになりやすいという側面も。
感動的な風景や印象的な人の出会い、時にはその島で感じた爽やかな風さえ愛おしくなります。
その中で、島を再訪する際に、アプローチを変えるという切り口も面白いです。
例えば、前述した小豆島には5つの港があり、兵庫県の神戸・姫路・日生(ひなせ)や、岡山県の宇野・新岡山、香川県の高松などからアクセスできます。
輪行を活用すれば、自転車ごと電車に乗せて移動できるため、自転車旅にスタートとゴールが同じでなければならないという制約はありません。
訪れるたびにアプローチを変えることで、大好きな島の再訪を楽しみつつ、また新たな島の表情に出会えます。そして、その表情を知って、よりその島が好きになるという循環が生まれるのです。
また再訪を繰り返すなかで、次第に自分だけのルートを引けるようになるのもポイントでしょう。あえて遠回りのルートで島を目指したり、時には島と島をつなぎ、アイランドホッピングを楽しんだり。
旅に深みが生まれるという意味でも、自転車という手段は、とてもオススメできる移動手段です。

自転車に乗って島旅を始めよう!

いかがでしたでしょうか?今回は自転車旅ライターの視点で、自転車で島を巡る魅力をご紹介しました。

美しい自然の中で、爽快に駆けるサイクリング。時には島の生活に溶け込んで、現地での一期一会に触れる機会。普段忘れていた大切なことを思い出し、いっぱい元気をもらえる時間。
宝物のような忘れられない旅行体験が詰まっています。

最近はレンタサイクルが整備されている島も多いです。マイ自転車を持っていないという方は、ぜひレンタサイクルのある島から自転車旅を楽しんでみてはいかがでしょうか?

きっと普段の旅行とは違う、新たな出会いや感動が待っていると思います。

文章・写真:土庄雄平