OTHER 2026.06.17

那覇空港での乗り継ぎが小さな旅に変わる。3〜4時間で楽しむ観光&シェアサイクル

那覇空港の先、各離島へアクセスする際に、乗り換えで立ち寄ることの多い那覇空港。2時間ほどなら空港で過ごすのも一つですが、3〜4時間あれば、ちょっとした“もう一旅”ができてしまいます。今回は、そんなわずかな乗り換え時間を活かし、沖縄の空気を感じに外へと出かけた記録です。

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
空港にとどまるか、外へ出るか——約4時間の選択

目的地は沖縄離島のひとつ、久米島。中部国際空港から向かう場合、日本航空(JAL)の便で那覇を経由するのが一般的です。今回は7:30発で10:05に那覇着、そして久米島行きは13:55発。乗り換え時間は約4時間弱ありました。空港グルメを楽しむプランも考えましたが、さすがに少し時間を持て余しそう。しかも同じJAL系列での乗り継ぎなら、荷物はそのまま預けられるため身軽です。それならば、いっそ空港の外へ出てみよう——そう思い立ち、市内へ足を伸ばすことにしました。

ゆいレールで、ふらっと那覇の街へ

那覇空港と市内を結ぶ、沖縄唯一のモノレール「ゆいレール」。数分おきに運行されており、使い勝手は抜群です。今回向かったのは、空港からほど近い奥武山公園。乗車時間はわずか10分ほどと、驚くほど気軽に足を延ばせます。壺川駅でおりて、北明治橋を渡ると南国らしいゆったりとした時間が流れています。ヤシの木が並び、地元の人がジョギングや散歩を楽しむ光景に、旅先の日常が垣間見えるよう。公園内を少し歩くだけでも、空港の中では味わえない“沖縄らしさ”を楽しむことができました。

短時間旅の味方、シェアサイクル活用術

そして今回は、奥武山公園駅からシェアサイクルを活用することに。シェアサイクルは借りた場所とは別のポートへ返却できるため、移動の自由度が高いのが特徴です。料金は10分単位の時間制が基本で、30分以内なら数百円ほどと手頃。歩けないことはないが、少し遠いスポットへアクセスするときに重宝します。短時間でも効率よく動けるうえ、街の空気を感じながら自分のペースで巡れるのも魅力です。目的地にしたのは「旧海軍司令部壕」。沖縄戦において大日本帝国海軍の司令部として使用された防空壕です。小高い坂を上がった場所にあり、電動のシェアサイクルを利用できて助かりました。訪れたのは春先ながら、沖縄はすでに初夏の空気。額ににじんだ汗も、風にさらされるとすっと引いていき、むしろ心地よい涼しさを感じられました。

那覇の高台で向き合う、過去と現在

沖縄を訪れると、空がぐっと近く感じられ、思わず開放感に心を奪われる——そんな感覚を覚える方も多いのではないでしょうか。本州とはどこか異なる、のびやかな空気が流れています。小高い丘の階段を上り、慰霊塔前の広場に立てば、那覇市街を見渡す爽快なパノラマが広がり、その先には、遠くからでも澄んだ色合いが伝わる海が広がっています。しかし、この美しい景色の裏側には、沖縄戦の記憶が色濃く残されていることも忘れてはなりません。旧海軍司令部壕の前に立つ慰霊塔は昭和33年に、沖縄海友会および海軍戦没者慰霊之塔建立発起人会によって建立されました。穏やかな風景の一方で、消えることのない戦争の歴史が重なる場所なのです。

壁に刻まれた、忘れてはいけない痕跡

旧海軍司令部壕の内部に足を踏み入れると、ひんやりとした空気とともに、当時の緊張感がじわりと伝わってきます。司令官室や幕僚室、通信室などがほぼそのままの形で残されており、壁に残る手掘りの跡や、自決した時にできた手榴弾の痕跡からは、当時の切実な状況がリアルに感じられます。なかでも、追い詰められた兵士たちが最期を迎えた場所には、思わず言葉を失うような重みがありました。併設の資料館では、写真や遺品、証言などが展示され、沖縄戦の実情をより具体的に知ることができます。なかには思わず目を背けてしまいたくなる壮絶な展示もありました。私は戦争を経験しているわけではないですが、昨今の不安定な国際情勢のなか、実際に戦争が行われた場所に立ち、その歴史を知ると、戦争が決して遠い出来事ではないのだと、考えさせられます。心に刺さったものを忘れてはいけないという思いを胸に、旧海軍司令部壕をあとにしました。

ほっとひと息、地元食堂で味わう一杯

那覇空港を出てから、気づけば約2時間半が経過していましたが、ゆいレールとシェアサイクルを組み合わせたことで、移動は想像以上にスムーズでした。まだ飛行機の搭乗まで、1時間20分もあります。せっかくなので昼食をとることにし、奥武山公園駅で自転車を返却して、徒歩で行ける垣花食堂へ。店内に入ると、店の人は自然体でくつろぎ、お客さんもそれぞれのペースで食事を楽しんでいる、どこかほっとする空気が流れていました。旅先でこうした日常の一コマに触れると、自分もその中にすっと溶け込んでいくような感覚になります。注文したのは「肉そば」。やさしい出汁の沖縄そばに、炒めた野菜がたっぷり入り、味の染みたお肉がいいアクセントに。気づけば箸が止まらず、最後まで一気に食べ進めてしまいました。

その後は奥武山公園駅からゆいレールに乗り、那覇空港へと戻ります。まだ少し時間があったので、お土産選びもゆっくりと楽しみました。ほんの数時間でも、空港の外に出てみるだけで旅の印象は大きく変わります。乗り換え時間を待つだけで終えるか、“小さな旅”へと変えるか——その選択ひとつで、旅の奥深さは大きく変わります。那覇で過ごした短い時間は、そのことを教えてくれました。そして同時に、過去の戦争の悲惨さに向き合い続けなければならないと、静かに胸に刻まれました。