OTHER 2025.05.07

爽快な風と島の情緒に浸る。家島諸島アイランドホッピング×サイクリング旅

瀬戸内海に浮かぶ家島諸島を、自転車とともに巡るアイランドホッピングの旅へ。姫路港から船に乗り、爽やかな潮風を感じながら島々を渡り歩けば、そこには昔ながらの漁村風景や息をのむ絶景が広がります。歴史を感じる名所や、雄大な海の眺めを堪能しながら、島ならではのご褒美ランチに舌鼓。心地よいペダリングと船旅を織り交ぜ、非日常のひとときを楽しむ――そんな自由気ままな離島サイクリングの魅力を、存分に味わってみてはいかがでしょうか?

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
姫路港から出航!自転車と巡る家島諸島の旅

瀬戸内海には無数の離島が点在し、主要な島だけでなく、多くの島々を巡ることができるのが大きな魅力です。姫路港といえば、小豆島フェリーで香川県・小豆島へ渡るルートが知られていますが、実は家島諸島への船も運航しています。播磨灘に浮かぶ家島諸島は大小44の島々から成り、そのうち家島、男鹿島(たんがしま)、坊勢島(ぼうぜじま)の3島へ定期船が通っています。今回は、そんな家島諸島を愛用の自転車とともに訪れてみました。

姫路港は、学生時代に何度も小豆島へ渡る際に利用した馴染みの港。新たな島へ向かうために再び訪れるのは、新鮮な気持ちになります。乗船したのは小型の船ですが、自転車の持ち込みが可能。交通費を抑えたいなら、自転車を専用の袋に収納して運ぶ「輪行(りんこう)」を活用するのもおすすめです。少し手間はかかるものの、持ち込み料金が無料になるメリットがあります。

30分ほどの船旅を楽しみながら家島に到着。真浦(まうら)港に降り立つと、漁船が並ぶ離島ならではの風景が広がります。天気が良ければ、真っ青な空が海に映り込み、まさに絶景! 爽やかな気分でペダルを漕ぎ出すと、防波堤に描かれた地域の小学生たちによるカラフルなペイントが目を引きます。温かみのある風景に心が和み、気の向くままに自転車を走らせる心地よい旅の始まりです。

海風を感じて巡る、家島の展望スポットと名所探訪

自転車で島を巡るなら、必ず立ち寄りたいのが景色の美しい展望台。離島ならではのアップダウンの激しい道のりに苦戦することもありますが、辿り着いた先には、必ずと言って良いほど思わず息をのむような絶景が待っています。

そんな展望台を目指す前に、まずは家島の東側にある「清水の浜海水浴場」を通過。夏には多くの海水浴客で賑わうこのビーチも、オフシーズンには静寂に包まれた穴場スポットに。透き通る海を眺めながら、自転車を降りてひと休みするのも一興です。その先、島の東端には「姫路藩 家島台場跡(天神鼻砲台跡)」が。かつて鎖国時代に対岸の飾磨(しかま)港を守るために築かれた歴史の名残が、今も静かに佇んでいます。

そして、次に目指すのは「清水公園」。ここへ向かう道は、地元でも有名な“激坂”が待ち受ける難関ルートです。坂を登り切ると、高台にある「清水公園」に到着。眼下には真っ青な瀬戸内海が広がり、かつて採石業で栄えた男鹿島の姿が望めます。公園内にはベンチが設置されており、絶景を眺めながらしばしの休息を。さらに反対側には、家島十景のひとつにも数えられる名所、「監館(かんかん)眺望」が。港町を見下ろす壮大な景色は、訪れた者だけが味わえる感動のひとときです。

清水公園を後にし、ほど近い場所にある「家島神社」へ。神武天皇が橿原(かしはら)へ向かう航海の途中、安全を祈願したと伝えられる由緒ある神社です。国生み神話にもゆかりがあり、古くから海上交通の要衝として島を見守り続けてきた、まさに家島の守り神といえる存在。境内を包み込む「鎮守の森」も、家島十景にも数えられる名所のひとつ。シイの木が生い茂り、どこか神秘的な空気が漂います。その静寂のなか、木々の隙間からは男鹿島の姿が垣間見え、まるで島全体が神々に守られているような厳かな雰囲気に包まれています。

島のご褒美ランチと束の間の船旅

家島の絶景とディープな魅力を満喫した後は、港の近くへ戻り、楽しみにしていたランチタイム。訪れたのは、地元でも評判の高い「家島料理旅館おかべ」。ここでいただく「ミックスフライ定食」は、驚くほどのコストパフォーマンスを誇ります。大ぶりのエビフライが3尾に、サクサクの魚フライが2枚、さらにコロッケやおでんといったお惣菜まで付いた、豪華な一皿。揚げたてのフライはサクッと軽やかで、中はふわふわ。頬張るたびに幸せが広がり、ご飯がどんどん進みます。さらに、魚の旨味が凝縮されたあら汁が、体の芯まで染みわたるおいしさ。温かみのある店内と、気さくな接客が心地よく、離島ならではの素朴な雰囲気を感じながら、お腹も心も満たされました。

さて、次に向かうのは本日二つ目の島、坊勢島。そのために、家島南部にあるもう一つの港「綱手(あで)港」へ移動します。こぢんまりとした漁港には、待合室と船乗り場があるだけ。家島の素朴な風景が色濃く残り、まるで昭和からの時間がゆっくり流れているようです。渡船の料金は、事前に切符を購入するのではなく、船内で直接支払うスタイル。一般的なフェリーターミナルをイメージしていると、そのシンプルさに驚くかもしれません。バス停のような待合所で船を待ち、特別な手続きもなく、そのまま乗り込む――そんな気取らない島の暮らしに溶け込むような渡船体験も、旅の醍醐味のひとつです。

坊勢島へ続く旅—離島サイクリングの第二章

約10分の船旅で坊勢港に到着。港のそばには、鮮やかな朱塗りの橋を渡って参拝する「海(わたつみ)神社」が鎮座しています。漁師の父に代わって海へ身を投じた美しい娘の伝説が残る、漁師たちの守護神。海とともに生きる島ならではの信仰を感じられる場所です。坊勢島は一周およそ2時間。帰りの船の時間を確認し、いよいよサイクリングスタート!

まず向かうのは、島の南部へ続く「オカズラ林道」。舗装状態もよく、道の最高地点にはベンチが設けられ、瀬戸内海や小豆島のパノラマが広がります。島の最高地点へと続く道ですが、思いのほか緩やかな勾配で、マイペースに走れるのが嬉しいポイント。ペダルを踏み進め、目の前に広がる瀬戸内海の絶景に思わず息をのむ瞬間も。ハイライトは、瀬戸内海と小豆島を一望できる展望所。「こんな小さな島に、こんなスケールの景色が!?」と驚くほどの絶景が待っています。そして、正面に男鹿島を望む下り坂へ。ここまで頑張って登ったからこそ、海へ飛び込むような爽快なダウンヒルが最高のご褒美です。

そのまま島の東部へ。沿岸沿いを駆け抜けるルートは、急な坂道や驚くほど狭い道など、変化に富んだ道のり。メイン道路とは思えないローカル感たっぷりの道から、快適に走れる一周ルートまで、自転車ならではの自由な旅が楽しめます。途中で足を止め、瀬戸内海の穏やかな風景を眺めたり、愛車を撮影したりと、思い思いの時間を満喫。

帰りの船まで少し時間があったので、ぶらりと散策も。堤防でつながった島に鎮座する恵美酒神社からの景色は、息をのむほど美しく、旅の締めくくりにふさわしい絶景でした。
そして坊勢港から姫路港へ。短いながらも濃密な離島旅は、古き良き島の風景や、ゆったりと流れる時間に癒されるひとときでした。日常の喧騒を離れ、何も考えずにのんびりと過ごすのも旅の醍醐味。姫路へは新幹線やJRが利用でき、大阪や京都からもアクセスしやすいので、気軽に離島サイクリングの旅に出かけてみてはいかがでしょうか?