親子三世代で楽しむ!日間賀島で赤ちゃんと初めての島旅
年に一度、親族が離島に集まり、三世代で旅を楽しむ——そんな特別な時間を過ごせるのは、離島へのアクセスが良い名古屋ならではの特権かもしれません。今回は我が子の1歳の誕生日に合わせて、日間賀島へ赤ちゃん連れ旅をしてきたので、その旅行体験記をお届けします。
離島というと住んでいる県によって、身近な場合と、遠い場合の両方のイメージがあると思います。その点、愛知県はちょうど中間的な立ち位置にあります。愛知県と聞くと海のイメージはあまりないかもしれませんが、実は日間賀島・篠島・佐久島という3つの有人離島があり、知多半島や渥美半島から気軽に訪れることができます。名古屋から最も近い河和港へは、電車と徒歩を合わせても約1時間。離島というと遠い印象があるかもしれませんが、実は名古屋に住んでいても意外と身近な存在なのです。
三河湾に浮かぶ3つの離島は、アクセスの良さだけでなく、様々な魅力があります。まず注目したいのは、アットホームな雰囲気と高い評価を誇る宿の多さ。じゃらんや楽天トラベルなどの宿泊予約サイトを見ても、口コミ4.5以上の宿が多数あり、エリア全体の宿泊満足度の高さがうかがえます。さらに、手軽に船旅の風情を楽しみながら、島ならではの新鮮な海の幸を味わえるのも魅力の一つ。特に三河湾は全国有数のふぐの好漁場として知られ、天然とらふぐの漁獲量は国内トップクラスです。冬の味覚の王様とも称されるとらふぐは、身が引き締まり、弾力のある食感が特徴で、多くのお客さんを魅了しています。
三河湾に浮かぶ離島の中で、今回訪れたのは「日間賀島」。師崎港から高速船でわずか10分、「名古屋から一番近い島」として知られています。私の自宅からも、知多半島道路と下道を合わせて片道1時間ほど。このアクセスの良さは、赤ちゃん連れの旅にはとてもありがたいポイントです。初めて高速船に乗った我が子は、窓から波を眺めながらリラックス。私はというと、いつものように船の後方へ向かい、三河湾の風景を写真に収めました。寒さの厳しい季節ですが、この日は少し暖かく、潮風が心地よく感じられるほど。わずか10分の船旅ながら、旅のはじまりを実感できる特別な時間でした。
平日の14時頃、飲食店が閉まっているところが多い中、西港からすぐの「KITCHEN macha」でランチをいただきました。タコやふぐが名物の日間賀島ですが、実はしらすの漁獲量も豊富。塩気の効いた風味豊かな釜揚げしらすに醤油をひと垂らし、清涼感のある青じそと一緒に頬張ると、間違いのない美味しさです。そして、このお店の隠れた名物が「ガーリックたこ飯ボール」。ほんのり優しい味わいのタコめしに、ガーリックの香ばしさが加わり、外はカリッと、中はふわっと仕上がった特別な一品でした。幸い我が子はぐっすり眠っていたので、夫婦水入らずで島グルメを堪能。宿にチェックインするまでに小腹を満たしました。
赤ちゃん連れの旅行では宿選びが重要ですが、私は特に次の2点を意識しています。まず、赤ちゃんが安心してハイハイしたり歩いたりできるよう、清潔で広々とした和室であること。もう一つは、幼児向けの料金設定が良心的であること。これが整っている宿は、赤ちゃんや幼児連れの家族を歓迎している証でもあります。これらのポイントを踏まえ、今回は「人情味あふれる宿 大成」さんを選びました。新しく改装したばかりの客室は綺麗な畳敷きで段差が少なく、水回りも清潔で快適に過ごせました。また、窓の外には漁船が連なる風景が広がり、島旅ならではの旅情を存分に味わえたのも良かったです。
ミルクや離乳食の準備もあるため、私たちは15時より少し早めにチェックインし、まずは部屋でゆったりと過ごしました。しばらくすると、16時過ぎに私の父・母・妹も到着し、これで3世代が勢ぞろい。広々とした和室を予約することで、みんなが自然と集まりやすく、家族団らんのひとときを過ごせます。さらに、この日は我が子の1歳の誕生日。祖父母や叔母からたくさんのプレゼントをもらい、部屋の中をハイハイしながら嬉しそうに遊ぶ姿が微笑ましく、祖父母にもすっかり懐いていました。旅先で家族の時間をゆっくり過ごせることも、何だかとても特別に感じられます。
楽しみにしていた夕食は、三河湾の冬を代表する味覚「とらふぐ」。てっさ(ふぐの刺身)、てっちり(ふぐ鍋)、てっぴ(ふぐの皮刺し)に加え、ふぐの唐揚げ、さらに日間賀島名産の島タコをまるごと1杯堪能しました。透き通るように美しいてっさは、まるで宝石のような輝き。一切れ口に運ぶと、その弾力に驚かされ、もみじおろしの酸味とピリ辛さがふぐの甘みを一層引き立てます。唐揚げは外はカリッと、中はホクホク。そして、てっちりの〆にいただく雑炊は、とらふぐの旨味がたっぷり染み込み、何杯でも食べたくなる美味しさでした。さらに、タコはシンプルな塩味が素材の風味を際立たせ、ブリンブリンの弾力で噛むほどに旨みが広がります。最後は、お宿自慢の炙りチーズケーキを別腹で楽しみ、大満足の夕食となりました。
3世代の家族がそろい、特別な食卓を囲むひととき。かつて実家で暮らしていた頃は当たり前だった光景も、今ではとても久しぶりで、改めて家族と過ごす時間の大切さを実感しました。さらに、お宿の方の温かいもてなしや、島の暮らしについてのお話も興味深かったです。日間賀島や篠島ではふぐ料理を提供する宿が多いものの、そのためには「ふぐ処理師」の資格が必要とのこと。試験の時期が近づくと、島の人々が協力し合い、試験対策を行うのだそうです。そんなエピソードからも、島ならではの温かい絆を感じることができました。
思い返せば、私が小学生の頃、毎年恒例だったのが祖父母と過ごす三河湾・佐久島への1泊2日の旅でした。大浦海水浴場で遊んだり、佐久島と橋でつながる大島釣りセンターでアジを釣り、自宅に持ち帰って唐揚げにするのが楽しみで、祖父母との思い出の多くはこの島とともにあります。人生のステージが変わった今、親になった自分が思うのは、子どもにとっての祖父母とのかけがえのない時間を大切にしたいということ。そんな思いから、三河湾の離島を舞台に、家族みんなで年に一度旅をする機会をつくれたら――そんなふうに考えています。