
瀬戸内の島々をサイクリングで探訪。一度は走りたいアイランドホッピングルート4選
島国と呼ばれる日本のなかでも、瀬戸内は離島の多さで群を抜いています。有人離島の約半数が瀬戸内海に位置するほど、その数は圧倒的です。そんな瀬戸内ですが、しまなみ海道などの海上ルートが整備され、多彩な島々を巡るアイランドホッピングの旅を楽しめるのはご存知でしょうか?私のイチオシルートと楽しみ方をご紹介します。
まず初めに、アイランドホッピングという言葉をご存知でしょうか?これは本来、船で島々を巡る旅のスタイルを指していましたが、近年では島々を結ぶ陸路が発達し、車や自転車でも楽しめるようになりました。その象徴的な例が、海道(海辺の道路)です。しまなみ海道・とびしま海道・かきしま海道・ゆめしま海道・さざなみ海道の5つのルートが認定されていますが、そのうち4つのルートが4島以上の離島をつないでいます。
そんな海道を走り、アイランドホッピングを楽しむ足として最適なのが自転車です。抜群の機動力で島を駆け抜け、爽快な海や橋の景色、道中のここでしか味わえないグルメを楽しむ旅は最高ですよ。スポーツ自転車(ロードバイク・クロスバイク)や電動自転車のレンタルも充実しているほか、途中で乗り捨て、スタート地点もバスで戻ってくることも可能です。
そんな瀬戸内の海道ですが、2022年に岩城島と生名島を結ぶ岩城島橋が開通し、ゆめしま海道が完全に整備されたことが記憶に新しいのではないでしょうか。サイクリストの聖地であるしまなみ海道の隣に、新たにミニチュアサイクリストの聖地としてゆめしま海道が加わり、瀬戸内アイランドホッピングの魅力がますます高まっています。




続いて、瀬戸内の各海道について、アイランドホッピングの旅の魅力や楽しみ方をご紹介します。まずは瀬戸内の代表ともいえる「しまなみ海道」です。広島県尾道市から愛媛県今治市まで約70kmにわたるこのルートは、自転車で海峡を渡れる世界でも有数の規模を誇ります。向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島の6つの島々を巡るアイランドホッピングが楽しめるルートです。
「しまなみ海道」の魅力は大きく3つあります。まず1つ目は、サイクリストの聖地と呼ばれるにふさわしいサイクリングロードが整備されていることです。その象徴ともいえるのが、他のルートとは一線を画す島を結ぶ橋のスケールです。特に、大島と四国をつなぐ来島海峡大橋は全長4kmにも及びます。橋を一つひとつ越えるたびに、海峡を渡る臨場感を味わうことができます。潮風を感じながら、美しい海を横目に颯爽と自転車で駆け抜ける爽快感は、言葉では言い表せないほどの気持ちよさです。
2つ目は瀬戸内グルメの宝庫であることです。柑橘類をはじめとして、名産品の多い瀬戸内の島々。因島名物・はっさく大福や大三島にあるリモーネのレモンケーキなど個性豊かなスイーツが揃います。またCMでも有名な伯方の塩の産地が、伯方島だと聞いて驚く方もいるでしょう。さんわ 伯方島本店でいただく伯方の塩ラーメンは絶品です。
3つ目は、他のルートへとつながる重要な経路であることです。因島から船に乗れば弓削島や生名島へ行き、ゆめしま海道にアクセスできます。また、大三島から船を利用すると岡村島に渡り、とびしま海道へつながります。ルート自体の素晴らしさに加え、拡張性の高いアイランドホッピングルートと言えるでしょう。




近年、しまなみ海道と並んで注目を集めているのが「とびしま海道」です。このルートは愛媛県今治市の岡村島から広島県呉市まで、5つの島をつないで総延長約30kmにわたる海道です。「とびしま海道」へのアクセス方法は2つあります。愛媛県今治港もしくは大三島・宗方港から岡村島行きの船に乗る方法と、広島県呉市側から安芸灘大橋を通って入る方法です。
とびしま海道の魅力は、一言でいうと瀬戸内離島の原風景が残る、閑静なルートだということ。しまなみ海道に比べて、観光地化がなされておらず、それ故に島本来の漁村の風景や島の時間に浸ることができます。島をつなぐ橋もコンパクトで、こじんまりとしたアイランドホッピングを楽しむことができますよ。
おすすめの場所は、大崎下島にある御手洗の町並みです。この港町は江戸時代に瀬戸内海運ルートの寄港地として栄えました。大波止(おおはと)や高燈籠など、港町の生活に必要な建造物が当時のまま現存しています。町の中には、レントゲン科越智醫院(おちいいん)を改築して2016年にオープンしたGUESTHOUSE 醫(KUSUSHI)も。まるで大正時代にタイムスリップしたかのような風情を持ち、オーナーや他の宿泊客と談笑しながら楽しいひとときを過ごせる宿です。
近年、岩城島橋が架けられたことで待望のルートが完成した「ゆめしま海道」。このルートでは弓削島、佐島、生名島、岩城島の4つの島々をアイランドホッピングできます。しまなみ海道やとびしま海道と比べて非常にコンパクトで、気軽に旅情あふれるサイクリングを楽しめるのが魅力です。中でも海道の象徴となっているのが、弓削大橋と生名橋という二つの橋が一連となった区間。生名橋記念公園にはゆめしま海道の石碑も建てられており、ちょっとしたフォトスポットになっています。
また新たに陸路で開通した岩城島も、サイクリストにおすすめの場所です。島の中心部には積善山(せきぜんざん、標高約370m)があり、海抜0mからはじまる片道約5kmのコースは、ヒルクライマー(自転車で坂を上るのが好きなサイクリスト)から人気を博しています。瀬戸内らしい多島美を望むパノラマは素晴らしく、毎年4月上旬には桜と海がコラボレーションする絶景を楽しめるのも醍醐味です。
そんなゆめしま海道ですが、いろんなパターンでアクセスできるのも魅力。広島県側からは因島の土生港(はぶこう)や家老渡港(かろうとこう)からゆめしま海道の各島々に船で渡ることができますが、実は愛媛県からは今治港から運行している快速船・芸予汽船(げいよきせん)一本でアクセスできるのです。海道サイクリングと船旅を組み合わせて、実にバラエティーに富んだアイランドホッピングを楽しむことができます。




最後にご紹介したいのは、公式には海道と認定されていないものの、ほぼ海道と言っても良いのではないか?と筆者が考えている広島県福山市の田島〜横島をつなぐ道です。また近くには百島(ももしま)という離島があり、しまなみ海道・向島へアイランドホッピングを楽しむことができます。これまでご紹介した3つの海道と比べて、さらに閑静な雰囲気を醸し出しているのが魅力。コンパクトな道でありながら、意外とアップダウンがあり、走り応えも抜群です。
特におすすめなのが、横島の先端付近にある横山海岸海水浴場です。ほとんど人がいないこのビーチでは、静かな波の音とゆったりとした時間が流れ、潮の香りが漂います。「まさか、こんな場所があったなんて…!」と驚かされるような秘境ビーチです。また、そこから約2.5kmの坂を上った場所にある「王城切石山公園」もぜひ訪れてみてください。岩の上に立つと、瀬戸内の多島美が広がる絶景を堪能できます。ややハードなコースですが、訪れる価値ありです。
いかがでしたでしょうか?今回はアイランドホッピングの聖地、瀬戸内のおすすめコースをまとめてご紹介しました。自分の自転車を持参するも良し、レンタサイクルを利用するも良し。機動力の高い自転車での訪問が特におすすめです。ぜひ、気の向くままにアイランドホッピングの旅を楽しんでみてください。

