OTHER 2025.10.08

瀬戸内の風に誘われて。海道をめぐる4つの絶景サイクリング旅

瀬戸内海の島々を結ぶ海道は、穏やかな青い海と緑豊かな島影を眺めながら、潮風とともに走るサイクリングにぴったりのルートです。今回は広島・江田島の「かきしま海道」、しまなみ海道、安芸灘の「とびしま海道」、そして周防大島の「サザンセトオレンジ海道」をご紹介。橋を渡り、島から島へとペダルを進める時間は、日常を離れ、心が解き放たれるひとときになるでしょう。絶景や島グルメ、歴史に触れる旅が待っています。

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
海軍ゆかりの島へ。歴史と自然が息づくかきしま海道

広島県呉市のJR呉駅を起点に、音戸大橋(おんどおおはし)や早瀬大橋を渡って江田島市の切串港(きりくしこう)へと続く「かきしま海道」。全長およそ70kmのこのルートでは、海風を感じながら島々をめぐる爽快なサイクリングが楽しめます。道中には、歴史や文化にふれられるスポットも点在。音戸の瀬戸公園からは、平清盛が交易のために切り開いたと伝わる航路を望む絶景が広がり、倉橋島では遣唐使船の歴史を伝える「長門の造船歴史館」に立ち寄ることもできます。さらに江田島に渡ると、旧海軍兵学校(現・海上自衛隊第1術科学校)の施設見学など、海軍ゆかりの地ならではの見どころも満載です。コース全体は起伏が緩やかで、信号や車の通行も少なめ。サイクリング初心者でも安心して走れるのが魅力です。島々を結ぶフェリー航路を利用すれば、片道だけのライドや途中でのショートカットなど、旅のアレンジも自在。レンタサイクル拠点も各ポイントに整っています。また海道沿いには新鮮な海の幸を味わえる食堂や、ご当地名物「大豆うどん」を楽しめる店も点在しています。かきしま海道は、複雑に入り組んだ島の地形が生み出す多彩な景観も魅力。海と島、橋と街、そして歴史と日常が交わる「かきしま海道」は、日帰りでも、ゆったり1泊2日でも満喫できる、多彩な表情を持つサイクリングルートです。

サイクリストの聖地・しまなみ海道で、海峡を渡る感動体験

本州・尾道と四国・今治を結ぶ「しまなみ海道」。全長約60kmにわたって島々と橋が連なり、日本で初めて海峡を横断できる自転車道として整備されたこのルートは、今ではサイクリストの“聖地”として知られています。その象徴ともいえるのが、三連吊り橋「来島海峡大橋」。橋の上からは、まさに海峡を縦断している壮大な眺めが広がります。さらに、その橋を見下ろす絶景スポット「亀老山(きろうさん)展望公園」では、橋と島々、遠くに連なる山並みを一望でき、思わず息をのむ美しさです。しまなみ海道には、歴史と文化を感じられる名所も多く点在しています。大三島(おおみしま)にある大山祇(おおやまぎ)神社は全国の山祇神社の総本社で、境内には樹齢数千年の御神木がそびえ立ちます。生口島の「耕三寺・未来心の丘(こうさんじ・みらいしんのおか」では、白い大理石に包まれたミステリアスな空間が広がり、アートと建築の魅力を存分に味わえます。旅の途中で味わいたいのが、因島(いんのしま)名物「はっさく大福」。柑橘のさわやかな酸味が広がる和菓子は、サイクリングの合間にぴったりの甘味です。ルートは起伏が比較的緩やかで、初心者から上級者まで楽しめる構成。春は桜が彩り、夏は海風が心地よく吹き抜けるなど、季節の移ろいとともに、違った表情を見せてくれます。橋を渡り、島々をつなぐ「しまなみ海道」は、まさに“海を渡る旅路”を満喫できる稀有な場所。宿泊を交えてゆったり巡れば、その魅力をさらに深く味わえるでしょう。

“飛び石”のように島を渡る、とびしま海道サイクリング

「安芸灘(あきなだ)とびしま海道」は、広島県呉市から島々をつなぎ、最終的に愛媛県・岡村島へと続くルートです。7つの橋で島を結ぶ景観が、まるで庭園の“飛び石”のように見えることから、この名が付けられました。海道の途中にある大崎下島・御手洗(みたらい)地区は、ぜひ立ち寄りたい見どころのひとつ。江戸から昭和にかけて潮待ちの港町として栄えたエリアで、今も石畳の小道や趣ある町並みが当時の面影を残しています。サイクリングルートとしては、橋へ向かう際に少し坂道がありますが、島の海岸線は比較的穏やかで、海風を感じながら気持ちよく走ることができます。特に橋を渡る瞬間、青い海と島々が視界いっぱいに広がる風景は、とびしま海道ならではの醍醐味です。絶景を楽しむなら、下蒲刈島(しもかまがりじま)の「大平山(おおひらやま)公園」へ。標高275mの山頂からは、島々と橋が織りなす美しい景色が一望でき、天気の良い日には遠く四国の山々まで見渡せます。橋のたもとにある「であいの館 蒲刈」では、海を眺めながらの休憩や特産品の購入も楽しめます。また、下蒲刈島の三之瀬地区には、かつて参勤交代船や朝鮮通信使が立ち寄った歴史があり、今も伝統的な建物が点在しています。サイクリングでのんびりと“海と島をつなぐ道”。穏やかな時間とともに、風景と歴史が息づく旅が待っています。

白壁の町並みから絶景へ。周防大島・サザンセトオレンジ海道

「サザンセトオレンジ海道」は、山口県東部・周防大島(すおうおおしま)を中心に、本土の柳井(やない)と島をつなぐ海岸ルートの総称です。島をぐるりと一周する全長約100km超のロングコースをはじめ、半周などのショートコースも設定されています。瀬戸内海に浮かぶ周防大島は、本州と大島大橋で結ばれた穏やかな島。温暖な気候とやさしい陽光に恵まれ、「瀬戸内のハワイ」とも称されます。島のあちこちで育つみかんが、海を望む風景に彩りを添えています。海道沿いには、特産品や海の幸が揃う道の駅「サザンセトとうわ」を中心として、食事処やカフェが点在し、旅人を温かく迎えてくれます。北側は道幅が広く観光施設が多い一方、南側は静かな山間の道や、海を間近に感じながら走れる区間が続き、同じ島でもまったく違った景色を楽しめるのが魅力です。また、白壁の町並みが残る柳井の歴史情緒と、周防大島の美しい自然の両方を堪能できる点も、このルートならではの魅力です。一方で、他の海道に比べて距離が長い分、ロングライド経験者向けのルートと言えます。なお毎年開催される「サザンセト・ロングライド in やまぐち」では、多くのサイクリストがこのルートを駆け抜けます。サザンセトオレンジ海道では、海とみかん畑、ゆったりとした島の暮らしが織りなす風景を、潮風を感じながら満喫できます。

橋を渡り、風と島を感じる。瀬戸内海道の旅へ出かけよう

海のきらめき、島の緑、そして頬をなでる潮風——瀬戸内の海道は、走るほどに新しい表情を見せてくれます。絶景やグルメ、地元の人との出会いなど、どのルートにもその土地ならではの魅力が詰まっています。日常を少し離れて、心の赴くままにペダルを回せば、きっと思い出に残る時間が待っているはずです。