佐合島 さごうじま

瀬戸内海国立公園の区域に指定され
澄んだ海と白い砂浜、緑に囲まれる

佐合島は、山口県東南部にある熊毛郡平生町佐賀から南西へ約2kmの、瀬戸内海に浮かぶ小さな有人離島です。佐賀漁港から渡船で約8分揺られた先にあるこの島は、瀬戸内海国立公園の区域に指定されています。小さな島ですが、地形としては北と南に100mを超える山があり、丘陵地が多く平坦地はわずか5％ほどです。澄み切った海と白い砂浜、豊かな緑に包まれており、島全体が自然豊かで美しく、まるでタイムスリップしたかのような懐かしい雰囲気が漂います。海岸線には薬草のオカヒジキをはじめ、ハマボウフウ、ツルナ、アシタバなどが自生しており、岩場では釣りが楽しめます。海沿いには静かな集落があり、石垣や石段のある古い家々が並んでいます。佐合島の人口は1842年には694人、1889年には975人を数えましたが、徐々に過疎化が進み、2007年には43人になり、2021年には13人にまで激減。わずか9世帯の少ない人口が暮らす島となりましたが、本土からの距離が近く船便も比較的多いため、島内には釣りを楽しみに来る人や実家の手入れをしに来る人など、島に通う人は多くいます。島内に公共交通機関はありませんが、小さな島のため端から端まで歩いて周ることが可能。また島内には商店や飲食店、診療所、宿泊施設などはないため、食事や宿泊は本土で行う必要があります。気候は瀬戸内海式気候で1年を通して雨量が少なく、比較的温暖で過ごしやすいです。

俳人・水彩画家の久保白船誕生の地
島内には今も白船の生家跡地が残る

佐合島の歴史は古く、1600年には検地帳に島の名前が記されています。また佐合島は「海の青さ山の青さに雲重なれり」などの代表作で知られる、俳人・水彩画家である久保白船が生まれた地でもあります。白船は1884年、佐合島で醤油醸造業を営む家に誕生。県立山口中学校を卒業した後、家業を継ぐために佐合島へ帰り、仕事のかたわらで句作に励みました。1911年には萩原井泉水の自由律俳句誌「層雲」の同人になり、中学校からの友人である種田山頭火や、田布施町の俳人である江良碧松とともに活躍。昭和の初年には日本水彩画会で入選するなど、俳句だけでなく絵画の世界でも才能を発揮しました。佐合島は島民による自治とそれをサポートする島外の人によって成り立っており、あたたかい人と人とのつながりを感じられる場所でもあります。人口が少なく、狭い平地で細々と農業が行われている島ですが、静かな時間が流れるなかでのんびり何もしない贅沢を味わいたい方にはぴったりの島です。

夏は海水浴スポットとして人気
運が良ければスナメリにも出会える

佐合島観光のベストシーズンは夏。渡船乗り場から、海岸に沿って南へ歩いたところにある砂浜は、海水浴場として整備されているわけではありませんが、知る人ぞ知る人気の海水浴スポット。透明度の高い澄み切った海と、白い砂浜から成る海岸の景観は美しく、夏になると本土から訪れる多くの海水浴客でにぎわいます。佐合島対岸の平生町佐賀地区にはマリンレジャーを提供するお店があります。シーカヤックやサップで佐合島の裏側にある砂浜や穏やかな瀬戸内海を観光することも可能。運が良ければ、世界最小クラスのクジラ「スナメリ」に出会えるかもしれません。夏は海水浴やマリンスポーツでにぎわう佐合島ですが、岩場はフィッシングスポットとなっており、1年を通して釣り人に人気です。また島の南部にある山の頂付近には、2か所の狼煙場があります。この狼煙場はかつて、馬島を経て上関町の室津に知らせるために使われていたものであったといわれています。島の中腹あたりには「佐合島八幡宮」があり、宇佐八幡宮から勧請したものと伝えられています。境内とその周囲には大木や古木が生い茂っており、厳かな雰囲気。佐合島港の近くで、集落を少し入ったところにある常緑針葉樹「ビャクシンの大木」は、直径約1mもの大木で上品な香りのする香木です。

何もしない贅沢な時間を堪能
地形を活かしたサイクリング企画も

佐合島内ではお祭りや季節のイベントを開催していませんが、本土の平生町内では10月に、県内外からの参加が可能な自転車レース「大星山サイクルフェスタinひらお」が開催されています。全長約8kmの大星山ヒルクライムは見ごたえ十分。平生町の観光名所や地元のグルメスポットをサイクリングで巡る企画や、小学生未満の子どものランバイク体験といった企画もあり、家族そろって楽しめます。佐合島では、静かに流れる時間の中で、何もしないという贅沢な過ごし方をするのもいいものです。美しい海を見たり、釣りをしたりしながらのんびり過ごすのもいいですし、島内をゆっくり歩いて散策して周るのもおすすめ。集落を散策しながら島民や島外から来た人たちとのコミュニケーションを楽しむのもいいでしょう。日々の忙しさを忘れ、豊かな自然のなかでゆったりと何もしない時間を過ごしに訪れてみてはいかがでしょうか。

情報提供 ／ 平生町観光協会