向島から発信する新たなチョコカルチャー
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向島広島県
USHIO CHOCOLATL
栗本 雄司
YUJI KURIMOTO
尾道の魅力に惹かれた3人
偶然の出会いから全てが始まる
広島市内から尾道に移住してきて約8年になります。当初は大それた目的や理由があったわけではなく、ただ都会を離れたスローライフがしたくて移住してきました。店舗を構える向島を含め、尾道の街並みや雰囲気はまさに僕が求めていた環境で、ちょっと一人になりたいときは海沿いに車を停めて海を見ながらぼーっとできるし、ロケーションも抜群でどこにいても癒されるのが魅力だと思います。ゆっくりとした時間が流れる田舎ですが、その中にも独特のカルチャーが醸成されていて、そこも面白い部分ですね。そんな尾道の魅力に惹かれてか、僕と同じように創業メンバーの2人もそれぞれ別の場所から移住してきました。尾道で偶然出会った僕らですが、大きな理由なく移住してきた境遇も同じで、同世代ということもありすぐに意気投合。今の代表がチョコレートを作りたいと言うアイディアを持っていて二人を誘ってくれたことから全てが始まりました。
0からチョコレートを作る
スパイシーな挑戦の日々
3人ともコーヒーが大好きでしたが、コーヒーの世界は僕らが参入する隙間がないくらい競合が多い。コーヒーのように素材の味を楽しめるものは無いかと考えていたときに、マストブラザーズというNYで兄弟2人だけで始めたビーントゥバー(Bean to Ber)※で、カカオ豆本来の味を楽しむタブレット(板チョコ)を作っていることを知りました。これなら日本でまだ浸透していないし、自分たちだけで面白いことができるのではと。カカオ豆と砂糖だけで作るので、ショコラティエのように修行が要らなかったのも大きい理由ですね。最初はカカオ豆を仕入れるためにグアテマラなどの産地に行きますが、全員英語が話せないから、現地に住む日本人を探すことから始まりました。機械類も海外製しかないので輸入するために訳のわからない書類をたくさん書いたり、実際のチョコ作りもYoutubeを見ながら手探りの状態。全てが初めての経験で大変でしたが、苦しいというよりは、刺激的で楽しかったです。それは今でも同じで、オンラインショップの開設や海外への輸出など、日々勉強しながら成長できていると思います。
※カカオ豆の選定や仕入れからチョコの製造販売まで自社で行うスタイルのチョコレート店
シンプルだからこそ懐(ふところ)が深い
コラボで広がる繋がりの面白さ
僕らが作るタブレットは基本的にカカオ豆と砂糖だけなので、カカオ豆本来の味をダイレクトに感じられます。たとえばガーナ産はココナッツミルクっぽく、ベトナム産はブルーベリーが入っているのかと思うくらいフルーティー。産地ごとの味の違いはコーヒーより明らかで、初めて食べられる方は「知らなかった!」と驚かれたり「これなら食べられる!」と喜ばれます。日本ではまだまだ珍しいジャンルなので、色んな人が面白がってくれて、よくコラボのお話もいただくようになりました。しまなみの農家さんとコラボでドライレモンを練り込んだり、倉敷の農家さんの薄荷をブレンドしたり、レストランと一緒にチョコを開発したり。なかにはアパレルブランドなど異業種とのコラボもありました。パッケージデザインは商品ごとに違うアーティストさんに依頼しています。チョコのフレーバーをアーティストさんが解釈してデザインに落とし込んでくれるので、僕らも毎回楽しみですし、パッケージで選ぶお客様もいるくらい好評なんです。コラボもパッケージも、自分たちが思っていた以上に繋がりが増えてワクワクしますし、こうした繋がりが向島に良い影響を与えられたらなと思っています。
より自分たちらしく
向島や尾道を盛り上げたい
向島は観光地として開かれているし、スローな時間の流れの中にも刺激を感じられるカルチャーがある。だから山奥にある店舗で、市販のチョコとは違う個性的なチョコを売っていても今までやって来れたのかなと思います。遠方からたくさんの方に来ていただけるようになりましたが、さらにリニューアルして進化を続けたい。そのために、今は賃貸で営業している建物を買い取る予定です。賃貸だと現場復帰できるように使ってくださいってルールがありますが、購入すれば好きなように使えるので。今は2階の一部屋のみで営業していますが、1階を製造フロアにして、2階はカフェスペースとイベントスペースにしようかなと構想中。実際にお店が7周年のとき、店舗にDJを招いてLIVEイベントをしました。どうなるか不安でしたが、立花海岸を眺められるロケーションのなかでの音楽イベントは皆さんに楽しんでもらえたので、定期的にイベントを開きたいなという話も出ていて。建物を買い取ってキャパシティを増やしつつ、より自分たちの世界観を表現できるような空間に改装する。そこで定期的にイベントも開催して、向島や尾道を盛り上げることが近い未来の目標です。
広島市内から尾道に移住し、そこで偶然出会った2人とともにビーントゥバーのUSHIO CHOCOLATLを立ち上げ。向島の山腹に佇む工場で、カカオと砂糖のみで作られたチョコレートを製造・販売しながら、日々チョコレートの可能性を探っている。合言葉は「食べるチョコレートから感じるチョコレートへ」。