海を愛し、海と暮らす小値賀島で叶えた想い

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小値賀島長崎県

海士

吉岡 美紀

MIKI YOSHIOKA

「海のそばで暮らしたい」
実現するために小値賀島へ

幼い頃から水泳が好きで、学生時代は水泳部に所属していました。大学進学を機に北九州へ移ってからは、よく海へ出かけるようになり、潜ったり、魚を突いたりして過ごすことが多かったです。その頃から「ずっと海のそばで暮らしていきたい」と思うようになりました。そこから海に関わりながら暮らしていける場所を探す中で見つけたのが小値賀島。海が綺麗な小値賀島に魅了され、ここなら海と共に生きていけそうと直感的に思ったのが、移住の理由です。
もう一つ、小値賀島で海と関わりながら暮らしていく上で、海に潜って魚や海藻を採る“海士(あまし)”になりたいという目標がありました。世間でよく知られている“海女さん”はチームになって海に潜り、漁をするスタイルですが、海士は個人で漁に出ます。小値賀島には、漁師や海士のコミュニティがあるところも私にとっては魅力でした。

島の方々のサポートもあり
小値賀島で初の女性海士に

factory333として独立してから、まずは漁協へ入りました。海士になりたいといってもすぐになれるものではないと思っていましたが、小値賀の方々はそう言う私を快く受け入れてくださり、漁師さんたちも「なれなれ!」とあたたかく応援してくれて、本当に心強かったです。小値賀島の漁協は、最高齢が86歳と年齢層も高いですが、みなさん現役で漁に出ています。その中で、海士としての知識やスキルを取得するため、教えてくださる方に弟子のように付いて、潜る場所や漁をする上でのルールなどを学びました。海士が潜れる漁期は決まっていて、前期は6月下旬から7月初旬まで、後期は7月下旬から8月上旬までです。毎日の漁ができる時間も決まっているので、漁期中は朝から師匠の船に乗って島の周りで潜っています。みなさんのサポートがあって、小値賀島の海で海士として活動ができています。

海の恵みへの敬意が詰まった
商品開発に挑戦

小値賀島へ来た時、漁師さんや水産加工品を作っている方々に現場を見せていただきました。魚を使った商品など興味はあったのでとても興味深かったですが、一方で、後継者不足の問題や、水揚げされた魚の中でも廃棄になるものがあるなど、水産業の実態をはじめて知りました。そこで「捨てられてしまう魚を何かに活用できないか…」と思い、挑戦したのが“魚醤”の商品化です。魚介類を発酵させて作る調味料で、発酵食品に関する知識はありませんでしたが、島で味噌を作るおかあさんたちに教えてもらったり、水産試験場の方に魚醤の作り方を聞いたり、ほかの地域の魚醤作りを見学したり、色んな方の知恵をお借りしながら、2016年に商品化が実現しました。小値賀近海で獲れた魚と五島灘の海塩、自家製の麹をあわせてゆっくり熟成させたオリジナルの魚醤です。ほかにも、ドレッシングやアヒージョ、アオサなど海産物を活かした商品を作って、島の売店や、島外でのイベントで販売しています。

大切な海と小値賀島の
漁業のためにできること

「海からいただいた資源を無駄にしたくない」という想いが今の商品開発につながっています。魚だけでなく、海士をしていると獲れる新鮮なタコやサザエなど、美味しい海産物を無駄にせず、より多くの人たちへ届けたいと思っています。そして、こういった取り組みが、大切な海と小値賀島の漁業に少しでも還元できたら嬉しいです。
私の周りにはいつもあたたかく見守ってくれる島民の方々、誇りに思っている海士の仕事、大好きな海があります。小値賀島は私にとってかけがえのない場所です。

小値賀島へ移住後、海士として活躍。小値賀の海で獲れる魚を使った「五島ノ魚醤」などを製造・販売している。