OTHER 2023.09.29

第二の故郷「喜界島」
花良治(けらじ)集落
の魅力

奄美大島から飛行機で約20分の場所にある喜界島。

多くの離島が観光ブームに沸く中、「のんびりといこう」と昔ながらの自然との共生を通してきました。

来島する人の多くは出張客や帰省客なので、まず観光客の少なさに驚くことでしょう。
島民性はゆったりと控えめ。そして優しくて親切。それを島内の至る所で感じる事ができます。

喜界島は周囲50キロ弱の小さな島ですが、その中でもさらに「シマ」と呼ばれる33の集落で分かれていて、それぞれに風習や行事だけでなく方言にも少しずつ違いがあります。

今回はよりミニマムに「シマ」ごとの違いを楽しむ旅の提案になればと思い、ここではあえて自身が移り住んだ「シマ」=花良治集落の魅力をすこしだけ紹介したいと思います。

田邉 大智
(喜界島観光物産協会 事務局長)
シマ紹介「花良治集落」

喜界空港から巡回バスで20分。
喜界島の南東部に位置している人口100人弱の小さな集落です。もともとはヒィラジィという呼び名の集落が、当て字で花良治という漢字が付き、けらじと呼ばれる現代の地名となりました。

サトウキビを中心とした農家が多く、その他にゴマ、カボチャ、島バナナなども栽培されています。
百之台国立公園の麓、海側に面しており、サンゴ礁が隆起して出来た地形からは地球と生命の壮大さを感じる事ができます。

また、水不足になりやすいサンゴ礁隆起の島にも関わらず湧水は豊富。島内では数少ない天然の沢が、今でも農業用水に利用されています。
特筆すべき特産品は「花良治みかん」こちらは後ほど紹介させていただきます。

スポット「花良治ビーチ」

ビーチと呼ぶには小さいですが、集落の中心に天然の入江があります。

商店のすぐ目の前にあるオウブチ公園からパノラマで海を眺める事が出来、ガジュマルの木の下でのんびり休憩をしながら、ゆったりとした心地良い空気を堪能できます。

さらに島内でも有数のダイビングスポットとして人気があり、毎年多くのダイビング客が訪れるほど。
沖まで出るとテーブルサンゴや枝サンゴがビッシリと育ち、カラフルな熱帯魚たちやハコフグ、クマノミなども見られます。

また、サンゴ礁研究のための生態調査も頻繁に行われ、貴重なサンゴ観測地にもなっています。
遊泳する際は岩やサンゴなどの浅瀬が多いので注意。マリンシューズや短めのフィンを使いましょう。

祭り「シマあそび」

いくつもある集落行事の中で一番盛り上がるのがシマあそび(豊年祭)です。

集落の神さまに豊作を祈願し、伝統的な八月踊りや相撲をとって賑やかに祝います。

余興の部では、小さなステージの上で島唄などのパフォーマンスも披露され、皆で楽しみを分かち合います。
花良治集落では毎年旧暦8月8日に行われ、島内外からの参加者・観光での見学も歓迎です。

神秘的なスポット「高尾神社」

集落の神さまが祀られた神社です。

山側の高所に位置し、他の集落も含めた広い範囲を見守っているそうです。

島内でもお参りのしづらさナンバーワンの神社。しかしながら最強のパワースポットと呼ばれる事もあるとか。
自然道に限りなく近く険しい山道が続きますが、登るにつれて神秘的な空気が辺りを包み込みます。
山頂付近に鎮座する大岩のすぐ真下に境内が設けられ、集落と自然を愛した先人たちの優しさが溢れている大好きな場所です。

また、この付近一帯は国立公園にも指定されており、希少な動植物の生息地でもあります。

特産品「花良治みかん」

集落発祥の在来みかん、その名も「花良治みかん」。

樹木自体の生育の難しさや、収穫量が少ないこともあり、幻のみかんとも呼ばれています。

高貴でスパイシーな香りとその希少性から、島内でも特別なみかんとして扱われることもしばしば。
本場の花良治集落で採れたものは、島内でもブランドものとして高値で取引されています。

新鮮なものは輪切りにして黒糖焼酎へ。じっくりと香りを楽しむのが通の食べ方です。
最近では、花良治みかんを使ったポン酢やエッセンシャルオイルなど新たな加工品も増え、喜界島を代表する特産品となっています。

商店「宜-よろし-」

バス停のすぐ横にある集落で唯一の商店です。

飲み物や食べ物、生活雑貨以外にも、花良治みかんを使用した商品や、名産の黒糖や黒糖焼酎といったお土産類、季節ごとの農作物やフルーツなど多数取り扱っています。

その他、子供向けのコーナーとして駄菓子や射的ゲーム、くじ引きなどもあり、どこか懐かしさを感じます。
観光で訪れるときの目印にもなり、休憩場所やトイレもあるので、ちょっとした立ち寄りにも最適です。
また、世間話や立ち話といった集落コミュニティの中心地でもあり、地域になくてはならない大切な場所となっています。
各種キャッシュレス決済にも対応し、配送・通販も行ってくれるのでとても便利。

古民家「花良治しまぐらしハウス」

民家を改修して出来た1日1組限定の1棟貸しの一軒家です。最大6名まで泊まる事ができます。

のんびりとシマ暮らしを体験したい方にオススメです。
希望が合えば皆で持ち寄り交流会なんていう素敵な企画が開催される事もあるかもしれません。シマ暮らしには欠かせないシマッチュとの交流体験が密かな人気となっています。

夜は遠くから聞こえる波の音を感じながら星空を眺め、朝日を浴びながら鳥のさえずりで目覚める、といった自然豊かなシマならではの暮らしが魅力です。

集いの場「花良治生活館」

集落の皆が集まって語らいをするための施設。

各集会だけでなく民謡を習ったり、意見交換をするための懇親会なども行われます。

もちろんシマの外から来てくれる人にも優しく迎えてくれるのが花良治集落の最大の特徴です。
また、隣接している公園から眺める星空は最高の一言で、煌めく星達はまるで天然のイルミネーションのよう。
夜空をのんびり楽しんでいると、たまに流れ星や人工衛星なども見ることが出来ます。

月の光が明るすぎて星が見えない事も多いので、月の満ち欠けや月が登るタイミングも大事なポイントです。

田芋畑、ヤギ小屋、夫婦ガジュマル、七島鼻

いかがでしたでしょうか?
小さな島の、これまたさらに小さなシマ(集落)の紹介をさせていただきました。
これでもまだ喜界島の33分の1しかお伝えしていないのが驚きですよね。

シマ(集落)ごとの小さな魅力がたくさん集まってできている喜界島。
まだ訪れた事が無い方は多いとは思いますが、この島は観光地として目立たなくてもそれで良いのです。
島の先人たちが観光地しない事を選んだからこそ、今の時代にあるがままの良さが生きているのだと思います。

以下は、古くからの言い伝えのようなものですが、この島では普段からよく耳にするコトバを日本語に訳したものです。

「ここで偶然出会う人達は、島の神さまのお導き。きっと前世にも何かしらのご縁があるのでしょうね。この出会いがこれからも永く続きますように。」

なんともロマン溢れるコトバですね。
ひょんな出会いというキッカケが頻繁に起こるのを間近で見ているのですから、本当に不思議なものです。
この記事を見て頂いた皆さんともご縁があれば、さほど遠くない未来に喜界島で偶然お会いできる日が来るのかもしれませんね。