OTHER 2023.11.08

最北の島の魅力を丸ごと楽しむ
約60kmの「利尻島」
原付一周旅をレポート

日本最北端の島の一つ「利尻島」。中央に雄大な利尻山(りしりさん、標高1,721m)を擁し、一周約60kmという手頃な大きさの島には、絶景・食・文化などあらゆる魅力が詰まっています。今回はそんな利尻の魅力を、半日で丸ごと楽しむ原付一周旅をご紹介します。

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
島旅に最適な原付レンタル
鴛泊港フェリーターミナルからスタート

はじめに、島旅に交通手段の確保は必須ですよね。しかし、離島ではレンタカーは比較的割高で、バスだと便数が少ないこともしばしば。そこでおすすめしたいのが、原動機付自転車(原付)です。時間をそれほど意識せず、思うがまま島をめぐることができ、自由さやラフさが島旅にぴったりではないでしょうか。利尻島では鴛泊(おしどまり)港フェリーターミナルの前にある「雪国レンタル」で原付を借りることができます。しかし、他にレンタル屋さんがないので争奪必至。お店が営業開始する8時に訪れるのがベターです。雪国レンタルは、同じ系列で「旅館 雪国」も経営されています。旅館 雪国に宿泊してレンタルバイクを利用すると半額になるのでおすすめです。

姫沼にも寄り道
利尻富士と見渡す絶景ツーリング

一周約60km、ほぼ円形の島「利尻島」。地図では単調に見えますが、実際走ってみるとその劇的な景色変化に驚かされます。中でも”利尻富士”と称えられる「利尻山」の山容が見事です。爽快な海の景色に浸りつつ、天高くそびえる山を一緒に眺められるのは、利尻島ならでは。海から山まで一続きの壮大な自然を目の前にしていると、日頃の小さな悩みごとも、何だか些細なことに思えてきます。気持ちの良い潮風を浴びて、まず向かうのは北部の景勝地「姫沼」。かつて爆裂火口だったと推定されている窪地に、湧水が堰き止められてできた風光明媚な沼です。たどり着けば、水面に映り込む利尻山と緑の水鏡に目を奪われます。霧が出て山が見えないこともありますが、一面真っ白に包まれる風景も幻想的です。姫沼は一周1kmほどなので、時間に余裕があればサクッとハイキングを楽しむのもおすすめ。敷地内の売店には、四季折々の利尻島の瞬間を捉えた素晴らしい写真が飾られており、お土産に購入するのも良いでしょう。

人情味や島の歴史
利尻島のディープな魅力に触れる鬼脇

利尻島には大きく3つのエリアがあります。フェリーの発着点にもなっている鴛泊(おしどまり)と沓形(くつかた)、そしてその中間にある鬼脇(おにわき)です。一見スルーしてしまいがちな鬼脇ですが、立ち寄りたいスポットがいくつかあります。一つ目は「利尻島郷土資料館」。利尻の自然や生き物に加えて、ニシン漁をはじめとした水産業や交易まで、利尻島の歩みを知ることができ、興味深い展示ばかりです。中でも遭難者を装って、鎖国下の日本へ入国したラナルド・マクドナルド氏の展示から、利尻島の人々の人情味が伝わってきて、なんだか心が温かくなりました。そして二つ目に立ち寄りたいのは「寺島菓子舗」。商店の一角には、お母さんの手作りスイーツコーナーがあり、手軽にテイクアウトすることができます。名物・利尻プリンは、地元民にも観光客にも愛される一品。瓶を返却すると、40円キャッシュバックという昔ながらのスタイルにも何だかほっこり癒されます。お母さんの笑顔にも元気をもらいました。

山が見えないのも利尻島の情緒
南部の景勝地へ立ち寄り

鬼脇で資料館の見学とスイーツを楽しんでいたら、何だか雲行きが怪しくなってきたため先を急ぐことに。北海道銘菓・白い恋人のパッケージにも使用された、利尻山の風景がみられる「沼浦展望台(白い恋人の丘展望台)」へと向かいましたが、利尻山はあいにくの雲の中でした。利尻島といえば、真っ青な空の下でそびえる利尻富士(利尻山)がトレードマークですが、地元民の方によると、実は快晴の日は滅多にないとのこと。晴れの天気でも、方角によって山は見えたり見えなかったりというのが、日常茶飯事なのだそうです。少し残念ではありましたが、これも洋上に高山がそびえ立つ、”利尻島ならではの情緒”ですね。展望台の下にある「オタトマリ沼」には、たくさんの海鳥が飛来し、一面の原生林が水面に映り込んでいました。まるでパソコンのデスクトップ壁紙のような美しい風景を眺めつつ、穏やかな静寂に浸りました。曇りでも周囲に目を凝らせば、利尻島らしい自然や生き物との出会いに満ちています。

温泉・グルメ・ドリンク
利尻島の魅力が詰まった沓形へ

スタートから約3時間で、利尻島西部の中心地・沓形(くつかた)へ。島のリゾートホテルも点在し、活気のある港町です。お昼には「利尻らーめん味楽本店」に立ち寄りました。ミシュランガイド北海道 特別版でも2度ビブグルマンに選ばれている人気店で、利尻昆布を使った焼き醤油ラーメンをいただけます。スープは甘くて、香ばしさとコクがあり、ラーメンでありながら身体に良いものを食べている気分でした。そしてお腹を満たしたら、地元民憩いの「利尻ふれあい温泉」へ。源泉温度33度のお湯はぬるいのですが、しばらく浸かっていると身体がポカポカになってきます。浴槽から出ても温かさが持続しながら、爽やかな余韻もあり、国内屈指の炭酸水素塩泉の効能を感じられました。続いて温泉でひとっ風呂浴びてから向かったのは、沓形のはずれにある「ミルピス商店」。ミルピスとは利尻島で愛されている手作りの乳酸飲料。昭和の時代を感じさせる無人の販売所で、レトロな音楽を聴きつつ、真心の込められた天然ドリンクをすっきりといただきました。居合わせた他のお客さんとのコミュニケーションも、ミルピス商店を訪れる魅力の一つです。

劇的な景色変化
山から海まで一続きの絶景を楽しんだ北部

あとは利尻空港の横を通過して、スタート地点の鴛泊港フェリーターミナルを目指します。道中はずっと利尻山の方角が曇っていたのですが、北部に向かうにつれ山の姿が見えてきました。「島の北と南でこうも違うものなのか!?」と驚きましたが、北部に至ると、風になびく草原と利尻山が共演する富士野園地や、海底までくっきり海の色が透き通ったポンモシリ島、空と緑の対比が美しい夕日ヶ丘展望台など、思わず息を呑む素晴らしい風景が待っていました。母なる利尻山の噴火でできた溶岩台地が、一つの島を呈している「利尻島」。思わず手を広げて深呼吸をしながら、壮大な地形美をしっかりと目に焼き付けることができました。ラストは港まで爽快に走り抜け、約6時間にわたる原付一周旅の完了です。半日ほどですが、原付の機動力で利尻島の魅力を存分に満喫できた気がします。

利尻山へ登ることを目的に、多くの方が足を運ぶ「利尻島」。利尻登山に加えて、その前日か翌日を利用して原付で島を一周すれば、利尻の山頂から山麓までめぐり尽くす大冒険の完成です。一生忘れられない島旅が待っているので、ぜひみなさんも挑戦してみてください。