MOUNTAIN 2023.07.12

小豆島が私の原点。自転車旅から派生する離島の楽しみ方

まるで一つの島が一つの国のように、個性的な空気感を醸し出す日本の離島。そんな島を楽しむ最適のツールこそ自転車ではないでしょうか。今回は私の経験をもとに、自転車から派生する島旅の広がりについてご紹介してみたいと思います。

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
自転車旅のマルチな楽しみ方を教えてくれた小豆島

私の島旅の原点は、瀬戸内海に浮かぶ小豆島です。オリーブ栽培や醤油が有名で、エンジェルロードや日本三大渓谷美にも選ばれている寒霞渓などの観光名所を擁しています。思えば、最初から自転車で訪れていました。当時、学生時代を過ごした京都から、ほどほどに近くて遠い旅行先を選んだところ、初めての自転車旅の旅先が小豆島に決まった訳ですが、この選択が人生を変えてくれたと言っても過言ではありません。2泊3日という比較的短い期間ではありましたが、自分の旅スタイルが芽生え始めました。そして小豆島のファンになり、何度も島を再訪する中で、島旅のさまざまな楽しみ方が確立されていったのです。

道の数から生まれる旅の可能性

道の数こそ出会える風景の数。旅のツールとして自転車に乗る、最大の魅力と言っても良い観点に気づくことができました。入り組んだ迷路のような道、海辺を走る爽快な道、本当にここは島か!?と思う鬱蒼とした林道まで、島には実にバリエーション豊かな道が根付いています。そして冒険心をかき立てられるシーンの連続です。同じ旅先でもルートを変えて何度でもめぐってみたくなる。結果的にいろんな角度から旅先の表情をとらえ、よりディープかつ感度高く、現地での時間を過ごせるようになります。

自転車旅ならではの一期一会

道の風景と似ていますが、ひくルートによって一期一会の出会いも変わってきます。これが自転車旅のジョーカー(最高の切り札)的な面白さです。あと数分遅かったり早かったりしたら出会っていない方と談笑を楽しみ、それがとても印象に残ったりする。自分の身体ひとつで自転車にまたがり、壁がないからこそ生まれる偶然のコミュニケーションは、自転車旅ならではだと思います。基本的にウェルカムで人情味豊かな方の多い離島。ディープな出会いを楽しみながら旅をしたい方には、自転車という手段はもってこいです。

海だけではない。内陸も魅力的な島

離島といえば海のイメージが強いですが、自転車に乗ればのるほど内陸にも目が向きます。最初は何気なくペダルを漕いだだけかもしれません。しかし高台から眺める海が言葉を失うほど美しいことを知り、島の内陸に日本の原風景のような景色が根付いていることに気づくと、内陸の隅々まで走破してみたくなります。「道の先には、どんな風景が待っているのだろう?」これが旅のモチベーションになると、急な坂道を登った先にあるアクセス困難な展望台を目指す理由も生まれます。

道をめぐった先に行き着く登山

島を隅々までめぐっていると、残すところ訪れたことのない場所は山の上だけに。高台からの絶景を求めて、気づいた時には自転車を降りていることもしばしば。標高は低いのですが、海から山まで一気に立ち上がる離島の山らしい高低差を味わえます。眼下には真っ青な海を望み、その周囲にはダイナミックな地形を覆い尽くす山肌の緑。青と緑の鮮烈なコントラストに心を奪われ、爽やかな風がそよぐ山頂でクールダウンするひとときはたまりません。自転車旅の途中に登山を加えることで、一気に冒険感が高まるのもポイントです。

遠慮なし。エネルギーとしても重要な食

当たり前ですが、自転車で走るためにはエネルギーが必要です。いっぱい食べて、いっぱい動くのがベスト!ということで、食について妥協しなくなりました。かなりのカロリーを消費する自転車旅では、「太るかも」「食べ過ぎかも」という心配は杞憂と言えます。むしろアップダウンに富んだ走りごたえのある島を旅するときは、ハンガーノック(長時間の運動により極度の低血糖状態になること)を防ぐため、多めに食べておいた方が安心なのです。旅先でご当地グルメをいただく回数や一度にいただく量が増えたことも、旅の満足度向上につながっているかもしれません。

アートめぐりがきっかけ。寄り道の旅

2008年からはじまった瀬戸内国際芸術祭の会場の一つである小豆島。毎回たくさんのアート作品が制作されますが、中には会期後も撤去されず、一定期間展示される作品も多いです。小豆島を再訪するたび、アート作品をつなぐようにルートを組んでいたため、必然的に旅の道中で寄り道をする癖がつきました。ずっと走り続ける自転車旅も良いですが、機動力の高い自転車だからこそ、フレキシブルに乗り降りすることで、旅の可能性は一気に広がります。「いかにいろいろな要素を寄り道に盛り込むか?」この面白さを小豆島から学びました。

自転車旅に相性抜群な写真

最初はスマートフォンで撮影していた旅先での写真。しかし素晴らしい景色に出会うほど、「その臨場感を残せる高画質の写真を撮りたい!」と思うように。今ではすっかりCanonの一眼レフが自転車旅の相棒になりました。息を呑む絶景から、旅先でのちょっとした発見、愛車の記念写真まで、プライスレスな旅の思い出を持ち帰ることができますよ。昨今カメラの価格が急騰していますが、OLYMPUS(現OM SYSTEM)の中古ミラーレス一眼には、軽くて丈夫で安価という三拍子が揃ったモデルが多く出回っているのでオススメです。

自転車から広がる島旅の魅力

いかがでしたでしょうか。今回は私の旅体験をもとに、自転車で島をめぐることで広がる旅の楽しみ方についてご紹介しました。まるで一つの国であるかのように、様々な要素が詰まっている離島だからこそ、自転車でとことん島の風景に向き合ったり、自転車の機動力を生かして寄り道をして、グルメや観光の良いところどりをするのも面白いです。まずはぜひ一度、島に渡って自転車に乗ってみてください。きっと現地で濃い経験をすればするほど、旅のスタイルも楽しみ方も進化をしていくと思います。