OTHER 2023.03.22

歴史と自然に囲まれた
ディ-プな孤島、
蓋井島

皆さんは蓋井島をご存じですか?初めて聞いた方がほとんどだと思います。ちなみに「ふたおいじま」と読みます。実はこの蓋井島、非常にディ-プな島なんです。この蓋井島に結婚を機に移住した私が今回はこのディープな魅力をお伝えします。

周防千明
(民宿女将)
西日本中心の小売業で8度の転勤、管理職を経験し15年ほど勤めたのち、結婚を機に山口県下関の離島「蓋井島」へ移住。20代の頃に行った屋久島を皮切りに島旅に目覚め、大小40以上の島をめぐっている。旅で宿業に興味をもち、沖縄にてゲストハウスヘルパーを経験。現在は小さな島で小さな民宿を営んでいる。
本州最西端の離島
蓋井島とは?

蓋井島は山口県下関市よりさらに北西約6kmの響灘に浮かぶ本州最西端の小さな島です。本土の吉見港から定期船で約35分の場所にあります。島の周囲は険しい岩石海岸が続き、日本海の荒波で浸食された岩門と名付けられた洞窟など奇岩が多く見られ、周辺海域は海流の影響もあり海産物の宝庫でアワビ、ウニ、サザエなどの海の幸が豊富に獲れます。マニアの間では釣りスポットとしても有名です。

また、昭和初期から終戦時まで、旧日本陸軍の下関要塞の要となっていたため、島には砲台跡や観測所の跡が残っています。辰年と戌年の11月には重要有形民族文化財に指定されている「山の神」神事が行われます。島は漁業中心に栄えており、人口約80人のうち40代以下の割合が人口の約37%と若い世代が多いのも特徴です。

響灘に浮かぶ孤島で
動物たちに癒される

蓋井島の魅力を語るうえで外せない動物がいます。その動物は「エミュー」。なぜ、こんな小さな島にエミューがいるの?とよく聞かれます。20年ほど前から、島おこしの一環として飼育がはじめられたのがはじまりで、今は島のシンボルともいえる存在なのです。エミュー牧場は島に数か所あり、一か所は島の小学校のすぐ近くで学校の児童たちを見守っています。

もう一か所は島の集落から離れた山の中にあります。この集落から離れたエミュー牧場は、牧場で自由に過ごすエミューを間近に見ることができるんです。この牧場、足を踏み入れた瞬間「外国か!?」と思ってしまう世界観に包まれ、隠れた人気の撮影スポットでもあります。

また、島には島民の数以上の猫が住んでいます。もちろん飼い猫もいますがほとんどがいわゆる野良猫。マイペースで個性的な猫が沢山います。ひそかに猫好きには人気の猫島なのです。そして、最近の蓋井島のアイドルといえば、「イルカ」1年ほど前から島の周りで頻繁に見られるようになり、最近では漁をする船についてきたり定期船についてきたりとすっかり島の住人になっています。元々島に迷い込んできたミナミバンドウイルカだそうです。イルカを見たくて来られる観光客の方も増えています。定期船に乗った際は是非、イルカを探してみてください。

圧倒的な絶景に
心奪われる

蓋井島は日本海の荒波で浸食されており、周囲を波食崖や波食棚によって取り巻かれています。沢山の地層も露出しており、中でも定期船で蓋井島に到着する直前には「幕紋岩(まくもんいわ)」と呼ばれる白と黒の斑模様を織りなす岩石を間近で見ることができます。白亜紀にマグマ同士の混合でできたという非常に珍しい地層だそうです。自然が作り出した絶景は大迫力です。


また、島の中央部には「しま山100選」にも選定されている標高148mの金毘羅山という山があります。山頂からは、漁港や集落を見下ろすことができ、関門海峡の北西に広がる響灘を一望できます。その風景はまさに絶景!運が良ければ角島、沖ノ島まで見えることも。圧倒的な絶景にしばらく心を奪われること間違いなしです。

また、金毘羅山から下りさらに山道を進むと、蓋井島灯台にたどり着きます。こちらは昭和26年に日本で初めて風力発電が導入された灯台として知られています。(現在では電源は商用電力に切り替えられています。)灯台に上ることはできませんが敷地内には入ることができこちらからも響灘を一望することができます。

島の新鮮な海の幸で
お腹も心も満たされる

島で獲れた新鮮な海の幸。島には飲食店がありませんが、島内にある民宿にて食べることができます(要予約)。魚の刺身や煮付けはもちろん、特産品でもある島のサザエは、刺身やつぼ焼も絶品ですが、新鮮なサザエと島のしょうゆで作った「サザエご飯」は大人気。何杯でもいけてしまいます。

また、島のお母さんたちが磯へ行って刈り、煮込み手間をかけて作る乾燥ひじきはお土産としても人気です。島のひじきは非常に歯ごたえがあり、一度食べたら病みつきに。リピーターが非常に多いのも納得なのです。

蓋井島のディープな魅力、伝わりましたか?大きな観光スポットやアクティビティはありませんが、自然や動物にふれあい、島の雰囲気にどこか懐かしさを感じながら、時を忘れてゆったり島時間を過ごせるあたたかい島、それが蓋井島なのです。これを機会に蓋井島に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。皆様を蓋井島でお待ちしております。