豊かな湧き水が
食とアートを育む島
SHIMA INFORMATION
四国エリア/ 香川県
豊島 てしま
- 面積
- 14.5㎢
- 人口
- 約760人
- 観光スポット
- 豊島美術館、唐櫃(からと)の棚田、島キッチン
- 特産
- オリーブ、レモン、いちご、みかん、海苔、そうめん
- アクセス
-
①高松港から家浦港まで高速艇で35分
②宇野港から家浦港まで高速艇で25分またはフェリーで40分
③土庄港から家浦港まで高速艇で35分またはフェリーで50分
- URL
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豊島 teshima
数々の「〇〇の島」を経て
2010年からは「現代アートの島」にも
温暖な気候と穏やかな波が特徴の瀬戸内海で、本州と四国のほぼ中間に位置しているのが豊島(てしま)です。岡山県の宇野港、または、香川県の高松港から船が出ており、それぞれ約30分で豊島の北西部にある家浦港に到着します。中世からは島で採れる「豊島石」の採掘や加工が盛んになり「石の島」とも呼ばれていました。100年ほど前は技術の高い石工が約1000人おり、国会議事堂の工事を担当した職人もいたそう。また、島中央にそびえる檀山は雨を溜め込む地質です。そのため、古来から離島には珍しい稲作が盛んで、温暖な気候からミカンなどの果樹もよく育ちます。瀬戸内海が良質な漁場であることは言うまでもなく、近代に入ってからは「ミルクの島」と称されるほど酪農が栄えるなど、まさに「食の豊かな島」です。戦後間もなく、その豊かさを求めて乳児院や特別老人ホームなど先進的な福祉施設も建てられたことから「福祉の島」と呼ばれた時代もありました。「豊かさ」から数々の異名を誇ってきた豊島。2010年には豊島美術館をはじめとする美術施設やアート作品が誕生し、「現代アートの島」という新たな肩書きも獲得しました。豊かな自然が育む食や景観、島民のあたたかな気質など昔ながらの島の魅力に、現代アートという新たな魅力が掛け合わされ、国内外から多くの方が訪れます。さらに、観光客のなかにはリピーターも多く、何度も通ううちに豊島が好きになり移住した人もいるのだとか。島内の移動は町営バスのほか、レンタカー、レンタサイクルがおすすめ。小回りがきく上に、起伏の多い島内も快適に移動できます。
島の景観と調和したアート作品は
本当の「豊かさ」を考えるキッカケに
美術館やアート作品を巡るコースは豊島周遊の王道と言っても過言ではありません。中でも目玉は「豊島美術館」。瀬戸内海を臨む唐櫃(からと)の小高い丘に建てられた美術館で、アーティストの内藤礼氏と建築家の西沢立衛氏による美術館です。港がある家浦地区の古い民家を改修した「豊島横尾館」は、アーティストの横尾忠則氏と建築家の永山裕子氏による美術館。30歳から現在まで「生と死」を主題として制作してきた横尾忠則氏の作品が新作と併せて公開されています。「生と死」を扱ってきたもう1人のアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキー氏は2008年から人々の生きた証として心臓音を集めるプロジェクトを展開しています。これまで収集してきた世界中の人々の心臓音を保存し、それらを聴くこともできる美術館が「心臓音のアーカイブ」です。ここでは自身の心臓音を録音し、作品として残すこともできます。
涸れることのない水を蓄えて
島民の生活を支えてきた檀山
瀬戸内海にある島の中でも比較的大きな標高約340mの檀山は豊島のシンボルで日本の「しま山100選」にも選ばれています。スダジイやクヌギなど多様な樹木が原生林のように自生しており、その中を進むトレッキングも楽しめます。「スダジイの森」と呼ばれるエリアは道の両脇に群生する樹々が緑のトンネルを形成し、樹齢250年と推定される大木もある荘厳な雰囲気から「トトロの森」と呼ばれているそう。山からの景観も素晴らしく、島民によって建てられた檀山展望台からは360度のパノラマで瀬戸内の島々を一望できます。そこから南側に進むと公園があります。断崖絶壁の上にある公園なので、六角堂からは、島々を行き交う船や多島がおりなす瀬戸内海ならではの眺望を堪能できます。また、檀山は島に降る雨をろ過して蓄えることで、集落に清らかな水を届けています。その豊富な伏流水は島民の飲料水や生活用水としてだけではなく、田畑や果樹園も潤します。豊島の生活を支える、豊かさの根源です。唐櫃地区には、弘法大師が喉を潤すために地面を掘ったところ水が湧き出したのが始まりとされ、現在まで涸れることなく湧き水が出ている「唐櫃の清水」もあります。さらに、唐櫃地区には海を臨む傾斜に棚田が広がっています。一時期はそのほとんどが荒地となったり、畑に転用されていたりしましたが、2010年の瀬戸内国際芸術祭の開催と豊島美術館の開館に合わせて島民や行政が参加する唐櫃棚田保存会によって再生されました。田んぼに水が引かれる時期には水面が夕陽や月明かりを反射して輝き、夏には生命力がみなぎる青々とした階段に、稲穂が実り頭を垂れる秋は一面が黄金色に染まります。眼下に広がる瀬戸内海との対比は日本の原風景です。豊島を象徴するこの景観は一見の価値ありです。
島の食材を使った島グルメ
温暖な気候と檀山の恵みによって育まれた農産品と豊穣の瀬戸内海から獲れる新鮮な魚介類は豊島の自慢。そんな島グルメを味わえるスポットも充実しています。唐櫃地区にある「島キッチン」は建築家の安部良氏が空き家をリノベーションしたお店で、なんと「瀬戸内国際芸術祭2010」のアート作品でもあります。会期終了後も「食とアート」でたくさんの人々をつなぐ出会いの場として存続が決定。料理やドリンクにはもちろん島の食材がふんだんに使用されており、東京丸の内ホテルのシェフと共同開発したオリジナルメニューを島のお母さんたちが真心込めて作ってくれます。円形の縁台がユニークなオープンテラスは吹き抜ける風が心地よく、ゆったりと流れる島時間を感じられる場所の1つ。イベントやワークショップも開催されるので、観光客同士、島民同士、そして観光客と島民が気軽に交流できるコミュニティースペースにもなっています。同じ硯地区にある「海のレストラン」では、海を間近に臨みながら島グルメをいただけます。レストランには自家菜園も併設していて、そこで採れた新鮮な野菜も味わえます。豊島はアートに自然にグルメに1日では満喫しきれない魅力で溢れています。来島の際は島民と触れ合いながら島の暮らしをまるごと体験できる民泊もおすすめ。郷土料理や釣り、野菜の収穫なども体験できるので、ぜひ調べてみてください。お土産に迷った時は、家浦港にある「豊島マルシェ」へ。特産のオリーブ、レモン、いちご、棚田で作ったお米、季節の野菜、それらを使った加工品からオリジナルグッズなどを取り扱っています。観光案内所に併設されているので、旅の初めと終わりに2回訪れても良いかもしれません。
情報提供 / NPO法人 豊島観光協会
画像提供 /
福武財団(豊島美術館)豊島美術館 Photo:鈴木研一(3枚目)
安部良「島キッチン」 Photo:Osamu Nakamura(4枚目)