奄美群島のライフラインを担う船の仕事

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奄美大島鹿児島県

マルエーフェリー株式会社

原山 省悟

SHOUGO HARAYAMA

営業マンから船員への転身
叔父が勤めるマルエーフェリーへ

私がマルエーフェリー(以下、マルエー)で船員になったのは、マルエーで働いていた叔父がきっかけです。大学時代、鹿児島に住む叔父の家から通わせてもらい、毎年夏休み、冬休み、春休みにはマルエーの船に乗ってアルバイトをしていました。当時は鹿児島航路だけでなく、東京航路や阪神航路も運航していたので、各航路を転々としながら船のアルバイトを楽しんでいました。
大学を卒業後、私は別の企業に就職して、営業マンとして13年間勤めたのですが、「やっぱり船の仕事がしたい」という気持ちが強くなりました。その時、現在の私と同じくマルエーで事務長をしていた叔父に相談し、入社することになりました。

奄美群島のライフラインとして、
島と島をつなぐ船の仕事

マルエーフェリーが運航する鹿児島航路は、観光で利用される方はもちろんですが、島民の生活に欠かせない重要な航路になります。島で暮らす学生が鹿児島市内の大会へ行くために乗ったり、高齢の方が島外の病院へ行くために利用されたり、また各島への貨物運搬も担っているので、奄美群島で暮らす方々を支えるライフラインとなっています。私は現在、事務長として船の仕事に従事していて、この重要な役割と責任を感じながら日々勤務しています。

鹿児島を出港して、翌日に奄美大島、徳之島、沖永良部島、与論島の島々を経由しながら沖縄に入港します。次の日に同じ経路を辿って3日後に鹿児島へと戻ってきて、次の日に鹿児島出港というサイクルになります。このルートで約1ヶ月間乗船して、10日間のお休みがあるというのが一連の出勤体制となります。妻や子どもたちに寂しい思いをさせたこともありましたが、家族の理解や支えがあってできている、この船の仕事を誇りに思っています。

島民と観光客と船員と
船ならではのコミュニケーション

乗客の中には島在住の常連さんもいて、乗った時は声をかけていただき、「これ食べて!」と島で採れた野菜や果物、永良部島のユリなど、各島の特産品などをいただくことがあります。このような温かいコミュニケーションに感謝しています。観光客と島民が船の中で仲良く話していることもあって、島のおすすめスポットなどを教えたり、案内したり。中には、島で泊まった民宿の方が、船着場まで来て、手を振って見送ってくれている光景も見かけます。私たちが運航する船が、島民や観光客の交流の場にもなっているんだと感じますね。

船からの景色を楽しみながら
ゆったりと過ごせる船旅の魅力

私自身、旅行をするときに車の運転や、飛行機の手続きや乗り換えは大変だなと感じるのですが、船での移動はせかせかと焦る気持ちもなく、のんびりと島へと向かうことが最大の魅力かなと思います。
船での過ごし方も自由で、レストランで食事をしてもいいし、自分のスペースで寝ていてもいいし、船のデッキに出て外の空気を感じることもできます。また、360度海に囲まれる景色が見られるのも船旅ならではだと思います。沿岸から見る海とは違う、深い海の色はぜひご覧になってほしいです。

船旅を多くの人に楽しんでもらえるように、期間中何回でもフェリーに乗って周遊できるチケットや、奄美群島をフェリーでめぐる色んなツアーも用意しています。これからも、島の方々のライフラインとして、そして観光客の方々と奄美の島々をつないでいけるように、引き続き船の仕事を頑張っていきたいですね。

叔父が勤めていたマルエーフェリー株式会社で、大学時代にアルバイトを経験。その後、船の仕事への思いを胸に入社。現在は事務長として、「フェリーあけぼの」「フェリー波之上」に乗船する方々のサポートや、船員教育などに尽力している。