島と観光客をつなげる沖永良部愛深いコンダクター

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沖永良部島鹿児島県

一般社団法人 おきのえらぶ島観光協会

森岡 峻一

SYUNICHI MORIOKA

大阪の飲食店で数年働いた後
離島への移住を決意して沖永良部へ

大阪の飲食店で責任者として数年働いた後、離島への移住を考えて南の島へ。いくつかの島をまわってから移住先を決めようと思っていましたが、最初に訪れた沖永良部島の魅力にハマってしまってそのまま移住することにしました。島の中でもエリアによって雰囲気は異なりますが、小学校は人数が少ないので、運動会は学生や親だけじゃなくて地域の対抗戦のような感じですごく盛り上がるんですよ。僕が最初1か月だけ体験で島に来ていた時に駅伝大会があったんですけど、集落の人がみんな出てきて、団扇やボンボンみたいなものを持って走っている子どもたちを応援していたんです。オリンピックの聖火ランナーみたいな感じで、島をあげて応援している姿を見て、大阪とか都会では見られないシーンだと思って、すごくびっくりしたし、素敵な島だなと思いました。

きっかけはTwitterで見つけたバイト募集
憧れの先輩の姿を追って観光協会へ

移住した当初は、大阪で料理人をしていたこともあり、島にある介護施設の給食センターで働いていました。それまでの人生はフラフラしていたんで、完全週休二日制で社会保険がある会社に初めて勤めました。給食センターには2年くらい勤めていたんですが、沖永良部という素晴らしい島に移住したのに、都会でもできる仕事をしていることに疑問を感じて、休みの日に何かバイトをしようと決意しました。そのタイミングで観光協会がTwitterでバイト募集をしていたんです。坊主に髭で面接にいったので、周りからは「アイツ大丈夫か?」と懐疑的な意見が多かったらしいんですが、その時の事務局長が「アイツは絶対光るから」と採用してくれたんです。観光協会の仕事が面白すぎたことと、僕のことを認めてくれた事務局長がすごくかっこいい人で、その人の下で働きたいと思って、バイト期間を経て正社員へ。事務局長に「あなたの下で働きたいから正社員にしてください」と頼みに言ったんですけど、その人は僕が正社員になって3か月後くらいに辞めちゃって(笑)。独立して島のために起業しているので、今でも関わることは多いんですが、びっくりですよね!

沖永良部への愛が深まり
島のことを本気で考えた観光を

観光協会の仕事って、沖永良部に関心を持ってくれた人と島民をつなげる仕事だと思っています。まだまだ島の全ての人と関係性が構築できているわけではありませんが、外から来た人間だからこそ気づける島の魅力があると思うんです。僕からしたらその辺に落ちている石一つですら面白かったりするので。観光協会としていろんな場所で開催される旅行説明会で沖永良部の観光について話す機会があります。僕はその時に沖永良部には大人数の団体旅行はむいてませんよってハッキリ言うようにしているんです。それについては賛否両論あるんですが、僕は沖永良部に団体が来ても島の魅力は伝わらないと思っているんですよ。団体旅行のバスツアーで景勝地を巡ったとしても、例えばフーチャ(潮吹き洞窟)に行った時に、先に行ったら海ガメが見えるスポットがあったとしても、都会の添乗員が知らないから手前の穴を見て終わるんですよ。全然価値が違うじゃないですか。それで沖永良部に行ったけど面白くなかったって帰られるのが嫌なんですよ。僕が作ったナイトビーチピクニックも島では夜のアクティビティがないこともあって企画しました。夕日が沈むころからその時々のタイミングでベストなビーチを選定して、そこで島唄の演奏を聴きながらBBQをするってとっても素敵じゃないですか!

故郷である白馬への思いから
島を守る強い使命感で行動

僕の育ちは長野県の白馬村ってところなんですが、スキーで有名な白馬って今ではオーストリア人の街になってしまったんです。お店にいくと最初に英語メニューが出てくるほどで、街ではほぼ英語しか通じないほどになってしまいました。実は沖永良部に移住する前に、白馬に帰ることも考えていたんですが、土地の値段が一気に上がって住めなかったんですよ。観光客が多く訪れて活性化するのは良いことではありますが、1度出たら戻ってこられない村になってしまったことが寂しくて。地元がそうなったという過去があるので、沖永良部はそうならないとは思いますし、僕がなんとかできる話ではないんですが、島を守らないといけないという使命感はすごくありますね。お客さんが多く来て欲しいという思いはもちろんありますが、沖永良部にあった、沖永良部を好きになってくれる観光客を出来るだけ誘致していきたいと思っています。

長野県で育ち、大阪の飲食店で長く勤務。その後に離島への移住を決意して、2018年に沖永良部島へ移住。現在は、一般社団法人 おきのえらぶ島観光協会のコーディネーターとして、アクティビティの企画・運営のほか、広く沖永良部島を発信する広報活動などに尽力している。