小麦の味を感じる体にやさしいもっちりパン

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奄美大島鹿児島県

晴れるベーカリー

丸田恵/丸田朝羽

MEGUMI MARUTA/ASAHA MARUTA

母の言葉に導かれて
ご主人の故郷でパン屋を開業

ご主人:
奄美大島で生まれ育ったんですが、子供のころは漫画も1週間遅れで届くのが本当に嫌で、都会への憧れもあって卒業後に島を出て、都会の飲食店に就職しました。

奥さま:
私が同じ会社で店舗を回る部署に配属になり、主人が支配人をしている店舗を訪れたのが出会いですね。私の母が離島好きで、「今日、奄美大島出身の支配人と会ったよ」と母に伝えたら、「その人がいいわ!その人と結婚しなさい!」って言われて(笑)。母の予言通りになったんですけど(笑)。

ご主人:
両親が高齢だったこともあり、いずれは島に帰るつもりではいました。結婚して数年経って子供が生まれたんですが、最終の電車で帰宅して次の日も朝早く家を出るという生活だったこともあり、子育て環境も考慮して子供が3歳の時に奄美大島に戻ってきました。

奥さま:
島には仕事があまりないので、自分たちで何かを始めようと考えていた時に、母との他愛もない会話の中で「それならパン屋がいいわよ!パン屋だったら老若男女問わずに来てくれるし」と勧められて。確かに世界共通で海外の方にも喜んでもらえるしと納得しました。結婚に続いてパン屋も母の助言通りになってしまいましたね(笑)

38歳から始めたパン屋への道<>試行錯誤の末に2015年にオープン

ご主人:
神奈川県で暮らしている時にパン屋になると決意しました。38歳でパンの修行を始めるのは遅いし、時間がかかると思い、基本を教えてくれる学校に1年だけ通ったんです。業務用の機械は使ったことがないものもあったので、YouTubeで調べるなどして自己流で試行錯誤を繰り返しました。

奥さま:
オープンは2015年です。海が綺麗な北部でお店を出したいという想いがあって物件を探していたところ、元はサトウキビ畑だった場所をサイトで見つけて。不動産屋さんがすごく良い人で、若者が頑張るのを応援したいということで「手数料はいらないよ!」と待遇してくれました。地域に根差すようなお店をして欲しいという想いがあったみたいです。

ご主人:
島には学校給食に対応しているようなパン屋さんや個人で週末だけ開けているパン屋さんは以前にもありましたが、週5日で個人向けにやっているパン屋さんは奄美北部にはほとんどなかったんです。

奥さま:
晴れるベーカリーの名前の由来は、長男の名前が「晴太郎(せいたろう)」で、そこから取りました。ゆくゆくの夢は、お店の裏に1階がカフェ、2階が宿の建物を建てて『奄美でいちばん美味しいサンドイッチを出すお店』を作りたいです。

こだわったのは
小麦の味が感じられるパン

ご主人:
小麦の味が感じられるパンを作りたいと一番に感じました。自然の甘みを大切にしたモチモチ食感のパン。自分自身もそんなパンが美味しいと感じたので、島の人にも味わって欲しいと思っています。晴れるベーカリーに並ぶパンは、自分が食べてみて美味しいと思ったパンだけを出すようにしています。どこかで美味しいパンを見つけたら、自分なりに試行錯誤して自分流にアレンジして提供。目指すのはパンのセレクトショップのようなお店です。

奥さま:
島で平飼いされた有精卵を使っている四角い形のクリームパンが一番人気です。島の人は甘いパンを好まれることが多いんですが、私たちは生地の風味も感じてもらいたくて、中に入れるものは甘さを控えめにして素材の甘みを感じられるようにしています。クリームパンは、滑らかなカスタードクリームにこだわっていますので、通販には対応していない店だけで味わえるメニューです。

ご主人:
平飼いされている有精卵のほか、奄美の塩・砂糖などの地元の素材も使用していて、やわらかさが特徴の白神こだま酵母や国産小麦など素材も厳選。ふるさと納税に力を入れている奄美市から依頼いただいたのをきっかけに、2016年くらいから通販にも力を入れています。多い月は100件以上のオーダーをいただきますので、島に帰っても内地にいた頃と変わらない忙しさだなと嬉しい悲鳴をあげています(笑)

地元の人と観光客をつなげる
止まり木のような存在に

奥さま:
主人がこだわりのパンを毎日作って、私が接客を担当する役割になります。島に来て注意したのは、出来るだけ親しみをこめて話をすること。出身が神奈川県なので、丁寧な言葉を使いすぎてしまうと冷たい印象を与えてしまいます。常連さんの中には、おしゃべりをするためにお店を訪れてくれる方も多くいて、4人いる従業員のなかで2人は元々は常連さんだったんですよ。観光で訪れた方に対しても島を知ってもらうきっかけになるようなお店になれば嬉しいです。

ご主人:
私のパンへのこだわりと妻のトーク力でこの店は出来上がっている感じです(笑)。旅行期間中に毎日訪れてくれる人もいるんですよ。

奥さま:
お客さんの7割は地元の方なので、観光客にとっては高確率で地元の人に会える場所です。行き場所に困っている人には、島のおすすめを教えたりすることもありますし、ここで何かが生まれるそんな場所にできたらと思います。

ご主人:
お店が島の人と島を訪れた観光客とをつなぐ止まり木のような存在になれたらいいですね。

奄美大島出身とご主人と神奈川県出身の奥さま、3人のお子さまの5人家族。ご主人が生まれた奄美大島に家族で戻り、2015年に「晴れるベーカリー」をオープン。白神こだま酵母をはじめ、地元の素材を使用したこだわりのパンを提供している。