CLEAN OCEAN ACTIVITY 離島の海洋ごみ対策

地図

年間800万トン発生する
海洋プラスチック
各離島で行われている
ユニークな対策とは

世界では、年間800万トンの海洋プラスチックごみが発生していると言われており、日本にも多くの漂着プラごみが流れ着いている。離島にとって、いつまでもキレイな海を維持していくことは必要不可欠。夏の観光シーズンが本格化する前に、各離島のユニークな海洋ごみ対策を知って、訪れた際にはクリーンオーシャン活動に貢献してみよう。

深刻化する海洋ごみ問題
離島特有の透き通った海を
未来へと持続するために

世界で発生している海洋プラスチックごみは年間800万トンもあり、日本の沿岸地域にも多くのプラスチックが漂着。2050年には海洋プラスチックごみの量が海にいる魚を上回るとも言われており、プラスチックは自然界での分解が困難なことから、海洋環境や生態系への影響が懸念されている。なかでも5ミリ以下のマイクロプラスチックは、水中の化学物質が吸着し、それを食べた魚を私たちが食す可能性もあり、その悪影響も心配になる。多くのプラスチックが漂着する沿岸部には各離島も含まれていて、過疎化が進む離島地域では、ごみを集め続ける人々の負担が増大。多くの団体や個人からのサポートが必要な状況となっている。

離島の漂着ごみ問題を解消するため、各種企業や団体などが海洋ごみゼロを目指して、さまざまな取組みを行なっている

Clean

漂着ごみを拾うビーチクリーン活動
楽しみながら行うのが離島流

海洋ごみ対策としては、漂着ごみを拾うビーチクリーン活動が一般的。現在では、活動を通して地域とのつながりを深めていく新しい取組みが進んでいる。

新しい地球の楽しみ方を提案

MANATII

沖縄県

※マナティができる離島は、宮城島・奥武島・渡嘉敷島・阿嘉島・座間味島・ 伊是名島・久高島・石垣島・宮古島・多良間島・久米島

沖縄発の新しいカタチ
地域パートナーとつながって
手軽にクリーンアップ

2020年に地域と来島者とをつなぐビーチクリーンの新しい取組みとしてスタートした「プロジェクトマナティ」。拾った漂着ごみが正しく分別・処理されるまでを考慮。来島者が気軽に行えるクリーンアップとして注目されている。やり方は簡単。カフェや民泊、ダイビングショップ、観光協会など、沖縄県内の110か所以上に存在するパートナーの中から好みで選択。パートナーに500円を支払って袋や軍手をレンタルしよう。あとは自由にクリーンアップしたら、ゴミをレンタル品と一緒に返却するだけ。地域のパートナーともつながれて、参加すれば大好きな離島がキレイになるマナティを体験してみよう。

ワンコインで準備なし
楽しみながらキレイに
クリーンアクティビティ

沖縄県内の110か所にパートナーが存在。マナティを通して出会ったパートナーから、地域の文化や自然などを知ることができるコミュニケーションの場としても有効

拾ったゴミを分別・処理するまで行うのがクリーンアップする際のマナー。マナティでは、漂着ごみを行政に申請して正しく処理するまでの流れを構築

情報提供/株式会社マナティ

あたたかい気持ちの交換

理想通過

宮古島

エコ活動参加のお礼として
宮古島にいいコトをした人に
ちょっといいコトでお返し

宮古島の環境保全や文化の継承など、島の資産を守っていくためのエコ活動。その想いに共感してエコ活動に参加してくれる人と、その人たちをサポートしたいという店舗とをつなげる取組みとして誕生した「理想通貨」。理想通貨は、エコ活イベントに参加した人のみに支払われる協力店からの感謝の通貨。協力店で使用することができ、ちょっとしたサービスを受けることができる。宮古島の環境保全にいいコトをした人に、ちょっといいコトでお返しするこの取組みは、宮古島を想う人たちの気持ちを紙幣というカタチで可視化したもの。使えば使うほど、ステキな島になる。そんな想いを込めて運用されている。

宮古島を想う人たちの
気持ちを可視化した
想いがつまった通貨

理想通貨の裏面に書かれている「いいコトをしたら、ちょっといいコト。」がプロジェクトのコンセプト。エコ活に参加した人のみに支払われる通貨

理想通貨をゲットしたら、理想通貨を使える協力店で使用。理想通貨を協力店で使うことは、エコ活を応援しているお店や企業を支援することにもつながる

情報提供/宮古島市エコアイランド推進課

気軽に環境保護活動に貢献

OJIKA ISLAND
GREEN TRIP

小値賀島

ごみを減らすための第一歩
クリーンキットを通して
暮らしを見直すきっかけに

長崎県にある小値賀島で活動する特定非営利活動法人「おぢかアイランドツーリズム」が手掛けた「クリーンキット」。観光客が自主的に素手で漂着ごみを拾っていたことをきっかけに、その気持ちへの感謝として生まれた。キットの中には、不要になった大漁旗をリメイクしたバッグのほか、軍手、生分解性プラスチックで出来たゴミ袋、環境に配慮した紙を使用したポストカード、取組みやプラスチックゴミについて書かれたリーフレットがセットになっており、手軽にゴミ拾いをすることができる。ロゴは小値賀にも縁がある長崎佐世保出身のイラストレーターダテユウイチさんが手がけたものを採用。

小値賀らしさを活かし
大漁旗で手作りした
クリーンキット

クリーンキットはショルダーとトートの2種類があり、おぢか島旅のネットショップでも購入可能。クリーンキットを広める活動もしている

バッグには、引退した船など不要になった「大漁旗」をリメイク。バックの紐は使われなくなった「漁網」を使用して、すべて島のおかあさんたちの手作り

TOPICS

持続可能な地域づくりのため
学生対象のモニターツアーも実施

おぢかアイランドツーリズムでは、2021年から社会貢献やツーリズム、SDGsに興味のある学生を対象とした「学びと体験のモニターツアー」を実施。島暮らしを体験しながら「海洋プラスチックごみ」など海の課題と解決に向けての取り組みについて学ぶ2泊3日のプランとなっている。

情報提供/おぢかアイランドツーリズム

Recycle

海洋プラスチックごみを活用し
新しいプロダクトを生み出す

ビーチクリーン活動などで回収した海洋プラスチックを活用して、新しい商品に生まれ変わらせるアップサイクルの取組みも広がっている。

海洋ごみを知るきっかけに

made in kamigoto

新上五島町

魚型キーホルダー

海洋プラスチックごみで
魚型キーホルダーをつくる
ワークショップを開催

九州最西端の島である五島列島の北部に位置する新上五島町。キレイな海が自慢のかみごとうにも、海辺を歩くと潮に流されて漂着したプラスチックごみが多数。長崎県のなかで、漂着するマイクロプラスチックの量が特に多いのが新上五島町蛤浜海水浴場といわれている。そこで、海洋ごみ問題を知るきっかけになればとの想いから、新上五島町観光物産協会がはじめたのがオリジナルキーホルダー作り体験。体験には上五島の海岸で拾ったプラスチックごみを使用。専用のフィルムに好みの色のプラスチックを並べ、熱を加えてプレス。カットしてやすりでキレイに仕上げれば、自分だけのオリジナルキーホルダーが完成。 九州最西端の島である五島列島の北部に位置する新上五島町。キレイな海が自慢のかみごとうにも、海辺を歩くと潮に流されて漂着したプラスチックごみが多数。長崎県のなかで、漂着するマイクロプラスチックの量が特に多いのが 新上五島町蛤浜海水浴場といわれている。そこで、海洋ごみ問題を知るきっかけになればとの想いから、新上五島町観光物産協会がはじめたのがオリジナルキーホルダー作り体験。体験には上五島の海岸で拾ったプラスチックごみを使用。専用のフィルムに好みの色のプラスチックを並べ、熱を加えてプレス。カットしてやすりでキレイに仕上げれば、自分だけのオリジナルキーホルダーが完成。

情報提供/一般社団法人 新上五島町観光物産協会

上五島の海岸で自身で拾ったプラスチックごみを体験に使用することも可能。その場合は、5ミリ程度に切っておこう(キーホルダーの材料にはペットボトル3個分程度必要)

情報提供/一般社団法人 新上五島町観光物産協会

おしゃれなアクセサリーに再生

TOBA TOBA ACCE

喜界島

ネックレス、ピアス

plastics TURQUOISE
mini necklace 
6,600円~
plastics clear blue Leaf 
4,200円~
※購入時に
イヤリングへの
変更も可能

もっと、あなたらしくを叶える
世界にひとつだけの
お守りアクセサリーを

鹿児島県の奄美群島に位置する喜界島。「喜界ブルー」ともいわれる美しい海が特徴の島で、クラフトコーラシロップ「TOBA TOBA COLA」の製造者が贈るアクセサリーブランドが「TOBA TOBA ACCE」。〝エシカルなアクセサリーを〟という想いから、ビーチで海洋プラスチックを集め、ハンドメイドでアップサイクルしている。集めた海洋プラスチックを細かくペレット状にし、色を混ぜて板状に。それを樹脂で包み込んでつくるアクセサリーは、ひとつひとつの素材や色が違い個性豊か。同じものは2つない、自分だけのアイテム。売り上げの一部は、海を守るための活動に使われている。 鹿児島県の奄美群島に位置する喜界島。「喜界ブルー」ともいわれる美しい海が特徴の島で、クラフトコーラシロップ「TOBA TOBA COLA」の製造者が贈るアクセサリーブランドが TOBA TOBA ACCE」。〝エシカルなアクセサリーを〟という想いから、ビーチで海洋プラスチックを集め、ハンドメイドでアップサイクルしている。集めた海洋プラスチックを細かくペレット状にし、色を混ぜて板状に。それを樹脂で包み込んでつくるアクセサリーは、ひとつひとつの素材や色が違い個性豊か。同じものは2つない、自分だけのアイテム。売り上げの一部は、海を守るための活動に使われている。

クラフトコーラ製造時に出る資源もアクセサリーに変換。アクセサリーのパーツには、金属アレルギーの出ないサージカルステンレスを使用している

情報提供/TOBA TOBA

新しい命に生まれ変わらせる

SEA you again
プロジェクト

小値賀島

ネックレス、ピアス

石けんケース
「mu(ムー)」
3,500円(税抜)

海洋プラスチックを用いた
4社コラボの石けんケース
福岡デザインアワード大賞

OJIKA ISLAND GREEN TRIPの第2弾として、拾った海洋プラスチックを新しい命に生まれ変わらせようとスタートしたのが「SEA you againプロジェクト」。横浜にあるプラスチックメーカー「テクノラボ」と九州産業大学芸術学部ソーシャルデザイン学科の協力により、海洋プラスチックを用いた小値賀島オリジナルのブローチが完成。さらに、永く環境問題に取り組む、福岡県北九州市にある無添加石けんのパイオニア「シャボン玉石けん」も加わり、4社コラボとして製品化されたのが石けんケース「mu」。海洋ごみゼロとシャボン玉石けんの無添加の意味も込められて命名された。 OJIKA ISLAND GREEN TRIPの第2弾として、拾った海洋プラスチックを新しい命に生まれ変わらせようとスタートしたのが「SEA you againプロジェクト」。横浜にあるプラスチックメーカー 「テクノラボ」と九州産業大学芸術学部ソーシャルデザイン学科の協力により、海洋プラスチックを用いた小値賀島オリジナルのブローチが完成。さらに、永く環境問題に取り組む、福岡県北九州市にある無添加石けんのパイオニア「シャボン玉石けん」も加わり、4社コラボとして製品化されたのが石けんケース「mu」。海洋ごみゼロとシャボン玉石けんの無添加の意味も込められて命名された。

小値賀島オリジナルのブローチは、来島者へのワークショップとして展開。海洋プラスチックをヒーターで加熱し、プレス機でプレスすれば完成。おぢか島旅のお土産に!

情報提供/おぢかアイランドツーリズム

海洋ごみから生まれたプロダクト
buoyとは

いつかなくなる為に
存在している
海洋プラスチックごみの
アップサイクルブランド

IoT機器を中心に100製品以上を製造している横浜市にあるプラスチックメーカー「テクノラボ」。多くのプラスチック製品を生み出してきた同社が、海洋プラスチックごみと本気で向き合って開発したのが、海洋プラスチックごみのアップサイクルブランド「buoy」。海洋プラスチックごみを100%使用し、汚染物質が流失しないようフィルムでコーティング。商品の重さがそのまま海洋ごみの重さであり、着色など行わないことからひとつひとつの色や模様が異なる。「buoy」を手に取ってもらうことで、日本各地の漂着ごみを考えるきっかけになって欲しいとの想いから、原料採取地を記載して販売。
商品は、コースター[波紋]1枚1,100円~のほか、歯ブラシスタンドやトレイ、植木鉢など多数展開。海洋プラスチックを長く大切にされる工芸品に生まれ変わらせることを目的としている。

異種材料を一体で成型する必要があり、汚染されている海洋プラの表面をフィルムで保護するなど、特許取得の技術開発で製品化を実現した

Energy

漂着プラスチックごみの
クリーンエネルギー化が可能に

漂着プラスチックごみをクリーンエネルギー化することによって、離島が抱えるエネルギー問題にも寄与できる画期的な取組みが行われている。

漂着プラをクリーンエネルギー化&付加価値化

Clean Ocean Project

対馬

捨てるなんてもったいない!
海洋プラスチックゼロを目指し
島内エネルギー循環

北海道に本社がある株式会社エルコムは、2000年以降日本での環境への意識の高まりと同時に、廃棄物の運搬にかかる環境負荷を抑える様々な減容機を開発。2007年から関係省庁と連携しながら、日本沿岸に流れつく漂着プラスチックの有効利用に向けて技術開発を行い、プラごみを燃料ペレットに変えて小型専用ボイラで温水や蒸気利用ができる「e-PEPシステム」を開発した。
開発当時、海洋プラスチックはあまり知られていない問題だったが、日本の沿岸では漁業用の使用済み発泡フロ
ートが流れ着き、目を疑うような光景が広がっていた。特に離島では減容して埋立てするだけでは限界があり、ごみとなったプラスチックに温存する高いエネルギーをその場で安全かつ有効に利用。最小限のコストや環境負荷で島内エネルギー循環させるという画期的なシステムが、SDGs未来都市の対馬市で稼働をされている。年間30トン以上も島内に漂着する発泡スチロール製漂着フロートのペレット燃料化を2021年にスタート。今後温浴施設の燃料利用のため備蓄されている。また、2022年には、 硬質漁具やカゴなどを破砕資源化するラインも稼働させ、海洋プラスチック由来のボールペンやスーパーのカゴなどに生まれ変わっている。
また、エルコムは、海洋プラスチック問題を解決するためには、そのアクションに対して経済的付加価値の創出が不可欠であり、さまざまな企業、団体、関係機関との連携が必要と考え、海洋プラスチックゼロを目指す『クリーンオーシャンプロジェクト』を発足。現在20の連携企業とともに、プラスチックが海を汚さない世界の実現を目指している
北海道に本社がある株式会社エルコムは、2000年以降日本での環境への意識の高まりと同時に、廃棄物の運搬にかかる環境負荷を抑える様々な減容機を開発。2007年から関係省庁と連携しながら、 日本沿岸に流れつく漂着プラスチックの有効利用に向けて技術開発を行い、プラごみを燃料ペレットに変えて小型専用ボイラで温水や蒸気利用ができる「e-PEPシステム」を開発した。
開発当時、海洋プラスチックはあまり知られていない問題だったが、日本の沿岸では漁業用の使用済み発泡フロートが流れ着き、目を疑うような光景が広がっていた。特に離島では減容して埋立てするだけでは限界があり、ごみとなったプラスチック
に温存する高いエネルギーをその場で安全かつ有効に利用。最小限のコストや環境負荷で島内エネルギー循環させるという画期的なシステムが、SDGs未来都市の対馬市で稼働をされている。年間30トン以上も島内に漂着する発泡スチロール製漂着フロートのペレット燃料化を2021年にスタート。今後温浴施設の燃料利用のため備蓄されている。また、2022年には、硬質漁具やカゴなどを破砕資源化するラインも稼働させ、海洋プラスチック 由来のボールペンやスーパーのカゴなどに生まれ変わっている。
また、エルコムは、海洋プラスチック問題を解決するためには、そのアクションに対して経済的付加価値の創出が不可欠であり、さまざまな企業、団体、関係機関との連携が必要と考え、海洋プラスチックゼロを目指す『クリーンオーシャンプロジェクト』を発足。現在20の連携企業とともに、プラスチックが海を汚さない世界の実現を目指している

コストも環境負荷もミニマル化
最小ループで資源循環を目指す
プロジェクトが発足

対馬に流れ着いたポリタンクやプラスチックカゴ等を分別・色分けして破砕・資源化処理を行っている。状態の良いものは再生マテリアルとして利用し、汚れや劣化の激しいものは燃料チップとして備蓄されている

プラスチックを破砕・資源化するクダックのほか、樹脂ペレット燃料をつくるステラ、樹脂ペレット専用ボイライーヴォルなど、株式会社エルコムが開発するプラスチック小型循環システムが漂着プラスチックの有効 利用を加速させる

ネガティブな漂着プラを地域活性の新素材として有効化。クリーンオーシャンプロジェクトでは、再利用が困難な漂着プラスチックを地域の資源としての利用を推進すると同時に地域産業に付加価値創出や活性化を図る

情報提供/株式会社エルコム

最後に

日本全国の有人離島を
紹介するサイトとして
クリーンオーシャンプロジェクトに賛同
今後も様々な側面から
海洋ごみと向き合う

透き通った海が観光資源となる各離島では、漂着ごみ対策は大きな問題となっている。今回の特集取材を通して、各企業や団体が真摯に海洋プラスチックごみの問題と向き合い、様々な取組みを行なっていることに感動。私たちも日本全国の有人離島を紹介するWEBメディアとして、観光や物販などの情報だけでなく、各離島が抱える課題を理解し、世の中に発信していくことは使命だと再認識しました。その想いから今回取材協力いただいた株式会社エルコムが推進している「クリーンオーシャンプロジェクト2050」に賛同し、同プロジェクトの賛同企業として、今後も様々な側面から海洋ごみと向き合っていこうと考えています。夏の観光シーズンが本格化するこの時期、多くの人が離島を訪れると思いますが、「訪れた時よりもキレイにして帰る」そんな気持ちで離島を楽しんでほしいと思っています。

取材協力