奄美群島をめぐる旅

AMAMI ISLANDS

九州のはるか南方
鹿児島の島々に残された
独自の魅力を堪能する

奄美群島第1弾

日本復帰70周年を迎え
生命のパワーに満ち溢れる
奄美群島をアイランドホッピング

鹿児島と沖縄のほぼ中間に位置している奄美群島。有人離島には奄美大島、加計呂麻島、与路島、請島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の8つの島があり、ありのままの自然や珍しい動植物といった島の原風景が残り、どこか懐かしい気持ちに浸れる場所として人気を集めている。そんな奄美群島は、今年で日本復帰から70周年を迎えた。かつての島民たちの懸命な復帰活動を後世に伝えるため、各地でさまざまな式典やイベントが開催されている。記念すべき節目で盛り上がる奄美群島のShima旅の第一弾として、徳之島、沖永良部島、与論島の3島の魅力をご紹介。

船旅という
心踊る選択肢

鹿児島から奄美群島を経由して、沖縄への航路を結ぶのは、
マルエーフェリーとマリックスラインの2社のフェリー。
両社が毎日交互に運航しており、私たちを穏やかな海の旅へと連れ出していく。

※写真は、マルエーフェリーで就航しているフェリーあけぼの

見渡す限りの水平線
海に浮かぶ快適な宿で
思い思いの船内ライフを

奄美群島を目指して、夕方ごろに鹿児島新港を出発。デッキに出て夕日から星空へと変わりゆく海景色を楽しんだり、広々とした船内でのんびりと過ごしたりと、船旅の楽しみ方はさまざま。客室は家族連れやご夫婦での旅行にぴったりな個室タイプから、リーズナブルな2等船室まであり、旅のスタイルに合わせて自由に選択できる。レストランや売店、シャワールームも完備しており、長い船旅でも安心だ。慌ただしい日々から少し離れて、時間に縛られることなく、ただ船に揺られる贅沢な時間。まだ見ぬ目的地での旅を想像していると、最初の島が見えてきた。

■取材協力/マルエーフェリー株式会社・
マリックスライン株式会社

船旅をもっと楽しく!御船印めぐり

「御船印」とは、神社仏閣でもらえる御朱印の船バージョンのこと。北海道から沖縄まで全国各地の船会社が独自の印を発行しており、奄美群島を運航するマルエーフェリーとマリックスラインでも購入することができる。船によって異なる個性豊かなデザインが特徴で、船旅の思い出としてコレクションを楽しむ人も増えている。

奄美群島のお土産

SHIMA-Omoiスタッフが
現地で買ったきたお土産を
読者にプレゼント

01徳之島Tokuno
shima

独自の文化と
島の原風景に出会う

手付かずの大自然や
パワフルな闘牛たち
生命力に満ち溢れた島

 周囲は約80と奄美群島で2番目に大きい「徳之島」。一年を通してとても暖かい気候に包まれ、生命力溢れるダイナミックな自然に多くの人が惹きつけられている。アマミノクロウサギなど希少な動植物が数多く生息することから、2021年には奄美大島と沖縄島北部、西表島とともに、世界自然遺産に登録された。また徳之島の歴史や文化を語る上で、欠かせないのが闘牛だ。400年以上の歴史があり、今なお島民の生活に深く根付いている。島で開催される闘牛大会は全国的にも有名で、老若男女問わずその勇姿を見ようと駆けつける。それほど観光地化されていない分、奄美群島のありのままの自然が残る島。素朴で穏やかな雰囲気の中で、飾らない自分と出会う旅に出かけよう。

世界自然遺産にも登録された
島独自の大自然に触れ
心と体を解き放つ

大陸や周辺諸島との分離・結合を繰り返し、独自の進化を遂げてきた島の動植物。絶滅危惧種の生物や希少な植物などが多く生息する自然環境が評価され、2021年7月に世界自然遺産に登録された。ここでしか見られない神秘的な光景に、心が揺さぶられる。

島に流れる力強いパワー
かつての面影を感じながら
島の歴史に触れる

民家の庭先にそびえ立つ樹齢300年を超えるガジュマルを、一目見ようと阿権集落へ。ガジュマルは島の各地で見ることができるが、これほどの大きさになったのは島内でもここだけ。周辺には、サンゴ礁の石を使って緻密に積み上げられた石垣が立ち並び、その堂々たる風格から自然や海とともに生き抜いてきたかつての生活がうかがえる。

全国的に注目される
闘牛大会に向けて
牛たちと海辺でお散歩

島の一大イベントとして、年に3回ほど開催される闘牛大会。400年以上の歴史があり、闘牛は今でも島民の日常生活に溶け込んでいる。夕方ごろ海沿いに立ち寄ると、牛たちが砂浜を散歩したり、浅い岩礁に入ってトレーニングしている姿を見られることも。

国の天然記念物であるオカヤドカリを発見。徳之島は国内最大級の生息地として知られている。

のソウルフードは
朴でやさしい母の味

食文化としては豚骨や油そうめんなどが有名で、全体的に甘く濃い味付けが特徴になっている。島の郷土料理といえば、海苔の代わりに薄いたまごを巻いた「たまごおにぎり」だ。島のスーパーやコンビニに必ず置いてあるほど、島民にとって欠かせない存在となっている。定番は塩むすびだが、甘い豚味噌を具に入れて食べてもおいしい。素朴でどこか懐かしさを感じられる味わい。

雄大な景色の中で
凛と佇む慰霊碑
未来につなぐ戦争の記憶

自生する青々とした芝生と、その先に続いていく海と空。犬田布岬は雄大で美しい景観から、奄美十景のひとつに選ばれている。岬の突端にそびえ立つのは、太平洋戦争末期に米軍の攻撃により沈没した戦艦大和の慰霊碑。昭和43年に、戦艦大和の司令塔と同じ24mの高さで建てられた。毎年この犬田布岬では慰霊祭が行われおり、多くの島民が先人たちに祈りを捧げている。

徳之島でちょっと寄り道!!

太平洋に面する花徳集落で車を走らせていると、道沿いにパン屋さんを発見。フレッシュベーカリー「むぎ工房」のパンは、添加物が入っていないもっちり食感が特徴で、お店には甘い菓子パンやハード系のパン、可愛らしいキャラクターパンが並んでいる。豊富な種類とお手頃価格についつい買いすぎてしまいそう!

風味豊かな天然酵母
島民の食を支える
島のパン屋さん

カイザーロール
(白ごま・黒ごま)

70円

早い時間に立ち寄ってね!

うしくん(クリーム入)

170円

シャンピニオン

60円

↓

02沖永良部島Okino
erabujima

隆起サンゴの島は
洞窟の聖地

自然が造り出した
日本最大級規模の
アート作品を探検

 徳之島の南に浮かぶ「沖永良部島」。隆起サンゴでできた島には、鹿児島県天然記念物に指定されている「昇竜洞」をはじめ、豊富な地下水が作り出した大小300ほどの鍾乳洞が存在する。その美しさは日本でも有数で、〝洞窟の聖地〟としても知られている。自然が造り出すダイナミックな景観は地上にも広がっており、荒波で浸食されてできた潮吹き洞窟のフーチャや高さ51m断崖絶壁の田皆岬は圧巻。島のほぼ半分は農地になっており、エラブユリやサトウキビ、ジャガイモなどの栽培が盛ん。こういった文化的景観や自然環境が評価され、2017年には「奄美群島国立公園」が誕生した。また近年、生まれ育った島へのUターンや島外からのIターンをきっかけに、新たな取り組みを行う若者が多いのも魅力のひとつだ。

地下水と鍾乳石が織りなす
神秘のケイビングへ出発

隆起サンゴでできた島の地底には、約300程度の洞窟や鍾乳洞が存在。沖永良部島の洞窟は水量が多いのが特徴で、ケイビングではひんやりと冷たい水に浸かりながら、ヘッドライトの明かりひとつで暗闇の中を進んでいく。足場の悪い洞窟の先で待っているのは、棚田状に広がるリムストーンプールの絶景だ。

海岸線には、田皆岬や潮吹き洞窟、半崎といったダイナミックな景観が広がっている。運が良ければ、海面から顔を出すウミガメの姿を見ることができるかも。

新鮮な海の幸に舌鼓
黒糖やシマ桑を使った
特産品も誕生

島周辺は、伊勢海老漁に適した絶好のスポット。「西郷食堂」では、店主自ら獲ってきた海鮮を堪能することができる。獲れたての伊勢海老は焼いてはもちろん、贅沢に海老汁にして濃厚な旨味を味わう食べ方も。また島土産におすすめなのが、特産品の黒糖を使った伝統菓子だ。純黒糖を贅沢にたっぷり使った糖みつアンダギーは、素朴でやさしい甘さに仕上げており、一度食べたらやみつきに。

スーパーフードである「シマ桑」を使った青汁。苦みやクセがなくゴクゴクと飲める心地いい口当たりで、料理やお菓子にも使用することができる。

波と三線が織りなす
ハーモニーに癒される
夜のビーチピクニック

夜を楽しむアクティビティとして、今人気を集めているのがナイトビーチピクニックだ。海風に吹かれながら、開放感あふれる夜のビーチで手ぶらBBQを楽しんだり、島民が奏でる三線と島唄を聴きながら一緒に踊ったり。天気がいい日には、頭上に満点の星空が広がっている。島を知り尽くしたコーディネーターが、その日の天候や希望に合わせて、ぴったりのビーチに案内。至れり尽くせりのサービスで、夜のビーチを安心して満喫できる。

沖永良部島でちょっと寄り道!!

島で唯一の黒糖工場があると聞きつけ、訪れたのが「まごころ製糖」。気さくで明るい店主が、さっそく中に迎え入れてくれた。お店に並んでいたのは、自家製農園で採れたサトウキビのみを使用した純黒糖。ほかにも、糖みつアンダギーやピーナッツに黒糖を絡めたやじ豆、島流ホットケーキのやちむちなどの加工品も購入することができる。

使用するのは
サトウキビの搾り汁のみ
ピュアな黒糖にこだわる

早い時間に立ち寄ってね!

純黒糖

380円

やじ豆

400円

生姜入純黒糖

380円

↓

03与論島Yoron
jima

幻の砂浜が浮かぶ
地上の楽園

天国に一番近い場所
透き通る海と白い砂浜は
まさに東洋の真珠

 鹿児島県の最南端に位置する「与論島」。沖縄本島から約23の距離にあり、古くから琉球文化の影響を色濃く受けてきた。この島の魅力はなんといっても、世界でトップクラスの美しい海だ。島の周囲はサンゴ礁に囲まれており、島内には60ほどのビーチが存在。エメラルドグリーンに輝く海の色は他の島と比べても際立っており、訪れた人々を魅了し続けている。島は一周するのに車で一時間程度と奄美群島の中で最も小さく、コンパクトに旅を楽しめるのもいいところ。リゾートホテルでゆっくり過ごしたり、気が向いたら海に出かけたり。ヨロンブルーと呼ばれる美しい海に囲まれた島では、特別な計画を立てなくとも、時の流れに身を任せてのんびりと島時間を楽しむだけで、自然と心と体が満たされてくる。

干潮時のみ出現
ヨロンブルーが輝く
幻のビーチに癒される

島内には日本屈指の透明度を誇るビーチが多数存在。その中でも“幻のビーチ”と称されるのが「百合ヶ浜」だ。大金久海岸の沖合約1.5㎞の場所に、大潮の干潮時にだけぽっかりと浮かび上がる。そんなエメラルドグリーンの海と白い砂浜のコントラストが美しいビーチでは、SUPやシュノーケリングといったマリンスポーツも楽しめる。

美しく壮大な
島の自然を
閉じ込めた焼き物

島で唯一の窯元である「ゆんぬ・あーどぅる焼窯元」へ。島の言葉で「ゆんぬ」は与論、「あーどぅる」は「赤土」を意味している。京都から移住してきたご夫婦が手作業で丁寧に焼き上げており、お店にはお茶碗やマグカップなど一つひとつ表情が異なる陶器が並ぶ。釉薬(うわぐすり)に、島で育ったサトウキビやヤシ、サンゴ、ガジュマル、ソテツ、海草を使用しており、自然素材が詰まった個性豊かな風合いに注目したい。

島の暮らしや文化を学べる「ゆんぬ体験館」。今回は数ある体験メニューのうち、コーヒー焙煎体験に挑戦した。専用の陶器に乾燥した豆を入れて焙煎すると、パチパチと豆の弾ける音や香ばしい豆の香りが部屋いっぱいに広がる。コーヒー豆を挽いてドリップしたら、それぞれのコーヒーを飲み比べ。焙煎時間の長さによって、浅煎り、中煎り、深煎りの味の違いを楽しめる。今後は島で栽培を始めたコーヒ豆を使って焙煎体験ができるように、準備を進めている。

キラキラと輝く海を眺めながら、ゆったりとカフェタイム。数あるオーシャンビューのカフェの中でも、ヨロンブルーが最も美しく見える場所と言われているのが「YORON SEASIDE GARDEN」だ。一面に広がる海と潮風、波音を聞きながら、イギリス人の店主が作る本格ハンバーガーを味わう贅沢なひととき。辺りは緑に囲まれた穏やかなガーデンで、つい長居したくなる心地よさ。

時間を気にせず島ステイ
のんびりとした
スローライフを満喫

時間に縛られずゆったりと旅することで、見えてくる島の本当の魅力。エーゲ海を思わせるリゾートホテルでくつろいだり、夕日を眺めながらのんびりと散歩したり。予定を詰め込みすぎず、時間の経過とともに移り変わる島景色を楽しむのも島旅の魅力のひとつ。スローに流れる島時間を満喫しよう。

頭上に広がるのは
見渡す限りの星空
心に残る特別な体験を

街の灯りが少なく、空気が澄んだ与論島で眺める星空は格別。南十字星を見ることができる国内最北端の地でもあり、夏には美しく輝く天の川が現れる。地元の人におすすめの星空スポットだと教えてもらった「ヨロン駅」へ。昼間はフォトスポットとしても人気の場所。周辺に高い建物や山がないので、水平線ぎりぎりまで星空が広がり、ときおり流れ星が降り注ぐ。頭上に広がる星を眺めて、一生の思い出となる旅の締めくくりを。

与論島でちょっと寄り道!!

島めぐりの合間に、甘いスイーツでエネルギーチャージ。せっかくなら抜群のロケーションで、島素材を使ったグルメを味わおうと、中心地から少し離れた海のそばに佇む「くじらカフェ&商店」へと車を走らせた。

与論産やオーガニックにこだわったやさしいメニュー

オープンしているのは水・金・土曜のみで、旅の日程が合えばぜひ訪れてほしいカフェ。島野菜を使ったパスタや自家製マフィン「SHIMA”ffin(シマフィン)」などのカフェメニューを、オーシャンビューを眺めながらゆったりと楽しめる。今回いただいたのは、北海道産バターと与論の塩を使ったダッチベイビーパンケーキ。素材のおいしさが、体中にやさしく染み渡る。小さなお土産コーナーもあり、島でしか手に入らないグッズもあるのでチェックしてみて。

旅を終えて

薩摩と琉球の面影を残す奄美群島
知れば知るほど奥深い
各島の歴史や文化に触れる

鹿児島から沖縄へと続いていく奄美群島は、薩摩と琉球の両方の影響を受けながら、独自の文化を築いてきた。同じ奄美群島の中でも、鹿児島に近く薩摩藩に強く統治されていた徳之島は薩摩文化、沖縄に近い与論島は琉球文化の影響を色濃く受け、その間にある沖永良部島は薩摩と琉球を半分ずつ取り入れたハイブリット文化なんだと島民が教えてくれた。島ごとに残されてきた自然や食文化、島唄の雰囲気までもが違っていて、その奥行きの深さに驚く。島の根底にある歴史や文化に触れ、その魅力をより深く体感してみてほしい。

取材協力

マリックスライン株式会社/マルエーフェリー株式会社/一般社団法人 奄美群島観光物産協会/一般社団法人 徳之島観光連盟/一般社団法人 おきのえらぶ島観光協会/一般社団法人 ヨロン島観光協会/徳之島・沖永良部島・与論島で出会った多くの店舗や人々たち