OTHER 2022.07.20

国境離島や猫島など、
日本には個性豊かな離島が
あふれている!

「離島」にどのようなイメージをお持ちでしょうか?海がきれいで、自然が豊かで、ゆったりとした時間が流れている。もちろんどこもそういった側面はあるとは思いますが、「海が綺麗な田舎」と一括りにできないのが日本の離島の魅力です。離島それぞれに個性があり、体験できるアクティビティはもちろん、心に刻まれる情景も違ってきます。離島に行ってみたいけれど、選び方がわからないという方は必見ですよ。

小林 希
((一社)日本旅客船協会の公認船旅アンバサダー)
元編集者で旅作家。2011年にサイバーエージェントの出版社を退職して、1年間世界放浪の旅へ。帰国後に本を出版して作家デビュー。これまでに海外70カ国、日本の離島を130島以上めぐり、旅や島、ネコなどをテーマに執筆活動を続ける。
実際に訪れて感じた
離島の「違い」と「つながり」

今、日本に有人島は416島あります。私は島旅を始めてから、北は北海道、南は沖縄まで、約120島に足を運びました。離島と聞くと、どの島も「自然豊か」「海が綺麗」「田舎」という画一的なイメージを持たれるかもしれません。でも、離島には豊かな自然だけじゃない魅力が詰まっていて、実際に訪れてみないとわからない多彩な個性を持っています。それはエリアによる違いであったり、歴史的背景による違いであったり、離島を深く知ろうとすることで見えてくるそれらの特徴はさまざま。

そんな個性豊かな離島をめぐってきて面白いと感じたのは、一島一島に特徴があって違うはずなのに、どこか「つながり」が見えてきたことです。北と南でエリアが違うのにつながりがあったり、太平洋側ならではのつながりがあったり、そんな風に思ったときに離島をめぐりながら日本全体が見えてきた気がしました。日本列島は海に囲まれているから、そもそも島国ですしね。それぞれに文化や歴史を有した離島がたくさん集まって構成しているのが日本なのだ!という認識に変わりました。

歴史が好きな人におすすめ
ロマンあふれる国境離島

離島にはエリア等によって違いがあることをお伝えしましたが、私がおすすめしたい「○○な離島シリーズ」として2種紹介させていただきます。

1つ目は、一味違った離島旅を体験できる国境離島です。国境に位置する離島はかつて大陸との玄関口だったことから、日本史のスタート地点になるような歴史や文化に出会うことができます。例えば、対馬は朝鮮通信使を朝鮮まで迎えにいって江戸まで案内するという、まさに玄関口の役割を果たしていましたし、北海道の奥尻島は遺構や遺物から北方のオホーツク文化の影響を色濃く感じられます。壱岐対馬は蒙古襲来のときに多大な犠牲を出しながら防波堤となった場所。文化や技術の伝来から国防まで、積み重ねてきた日本の歴史を間近で感じられるのが国境離島ならではの魅力ですね。また、長崎県の壱岐諸島は朝鮮半島が近くて韓国の釜山が見えますし、日本最西端の与那国島からは天候の条件が良いと視界を覆うくらいの台湾の山脈が見えるんです。日本の果てを踏破したようなロマンあふれる景色も魅力ですよね。外洋に位置している島が多いので、波風によって形作られた自然美も圧巻ですし。日本は他国と陸でつながっていないので国境というボーダーラインを意識する人は多くない。だからこそ、日本の国境を感じてみたい!という方は、訪れる価値があると思います。

猫好きにはたまらない!
猫を神様として祀る田代島

2つ目としておすすめしたいのが猫島です。日本各地に猫の島といわれている離島はいくつかありますが、私のおすすめは宮城県石巻市の田代島です。実は、私が日本の離島にハマったきっかけが猫島めぐりでした。猫が暮らす島は人も穏やかで、ギスギスしていない雰囲気が魅力です。でも、たくさんの猫島を訪れるなかで、猫島のリアルな事情を知ることにもなりました。それは、観光客が猫に餌を与えたりすることに嫌悪感を持たれる島民もいらっしゃるということ。当然ですが、勝手に情報発信することが現地の方の迷惑になってしまうこともあります。その点で、東日本を代表する猫島の田代島は、猫を神様にしていることもあり、島全体で猫を推しています。
島内には猫を祀る猫神社、猫型のログハウス、御朱印ならぬ猫印めぐりも開催されるほど。車道に猫がいたら車が避けて猫が横切るなど、完全に人間と共生していて、まさに猫の楽園です。船で港に着くと一斉に猫たちがお出迎えしてくれて癒されますよ。観光客が猫に餌を与えたり触れ合ったり自由にさせてくれる場所は猫島といってもたくさんあるわけじゃないと思いますので、猫好きの方にとってはとても心地いいと思います。田代島は、日本だけじゃなく世界中から猫好きが訪れる島。自信を持っておすすめできます。

自分だけのテーマを設定
離島選びや旅の計画も楽しみのひとつに

国境離島に行けば、ロマンあふれる景観や海外との交流の軌跡を見ることができます。日本にいながら海外の香りを感じることができるので、ご時世的に海外旅行は憚られる場合にも行きやすく、狙い目なのではないでしょうか。国境の離島で異文化と日本文化の融和点を垣間見ることが、改めて日本のよさを知る機会にもなると思います。

日本には416島の有人離島があるので、今回ご紹介させていただいた国境離島や猫島以外にも、個性豊かな離島がまだまだたくさんあります。離島をめぐってみたいけれど、どのように選べばいいのかわからないという方は、私のように最初は猫島に絞るなどテーマを設定すると選びやすくなりますよ。
テーマは「歴史を辿る」「自然を堪能する」「ご当地グルメを食べる」など何でもOKです。自分が何を楽しみたいかを考えながら離島を選べば、旅の計画自体も楽しみのひとつになるのではないでしょうか。