OTHER 2023.05.10

島の名前に誘われて
冒険心がくすぐられる
そこは宝島

『宝島』と聞いて何を思い浮かべますか?子供の頃、一度は絵本やアニメで目にした事があるのではないでしょうか。大人になるにつれて「宝島なんてあるわけない・・」幼かった時の気持ちは薄れていきますが、実は『宝島』は存在するのです、私たちの住む日本に。

市丸エイト
(八丈島移住者)
離島巡りにどっぷりハマり、訪れた島は50島以上。ときには同じ島に1ヶ月以上滞在することもある。東京都の離島「八丈島」に流れ着き、現在は移住者として島の魅力を発信している。ちょっぴりシャイだけど情け深い、酒豪島人達と生活中。
上陸難易度、MAX級。
簡単には踏み込めない日本の秘境

鹿児島県本土と奄美大島の間に位置するトカラ列島は、7つの有人島と5つの無人島からなる日本一長い村。訪れるには飛行場はなく、フェリー1択です。フェリーは週2、3回程しか就航しない上に、欠航率も高く、簡単には上陸がむずかしい島。文科省の定めた基準をもとに各都道府県がつくる「僻地等級」という行きづらさを著したランク付によると、トカラ列島は最大等級の「僻地5級地」にあたります。

無事に上陸が叶ったとしても、島からなかなか出られなくなることもしばしば。ふらっと気軽に旅行へ行ける場所ではありません。余裕を持った旅行の計画を強くお勧めします。私が聞いたなかでは、過去に船が1ヶ月くらい来ず、島に閉じ込められた旅人がいたこともあったそうです。新船に変わり、就航率は良くなったものの、それでも行きづらい事に変わりはありません。実際、船が欠航して島にもどれなくなった方と鹿児島本土でお会いしました。しかし簡単にたどり着けない。だからこそ宝島。

トカラ列島へは「鹿児島-奄美大島」間を往復する「フェリーとしま2」が就航しています。鹿児島から13時間、奄美大島からは3時間。宝島はトカラ列島の中でも奄美大島の近くに位置するため、私は奄美大島に滞在し、そこから宝島に向かうことに。

一瞬で心奪われる。
「海底都市」のカラフルな巨大アート

奄美大島から揺られること3時間弱。青一色の世界から汽笛とともに現れる港には、「海底都市」をモチーフにしたカラフルな巨大壁画がお出迎え。期待値が一気に上がります。ここにはきっと何かが、ある。そう思わずにはいられない。一歩踏み出せば、いよいよ冒険の始まりです。

外界から離れた手つかずの大自然を
冒険家気分で散策

宝島のビーチといえば「大籠海水浴場」。入り江を利用した白い砂浜にトカラブルーが映える海水浴場です。敷地内にはキャンプやトイレ・シャワー施設も併設しており、宿泊することも可能。目の前にビーチが広がる宿泊施設は、都会では味わえない贅沢なロケーションです。

他にも、宝島の西側にある「大間泊」には小さな防波堤があり、そこでも海を堪能することができます。先ほどと変わって、深いブルーが広がる海でした。同じ島とは思えないほど異なる色で二重で、楽しむ事ができますね。

宝島は海だけではありません。イマキラ岳は宝島で一番高い山で、標高は約300m。海に囲まれている宝島の頂上付近には展望台もあり、晴れていると最高の景色が見渡せます。

また、宝島には有名な鍾乳洞があります。たくさんの鍾乳洞がある中でも、島内最大の鍾乳洞「観音堂」。キャプテンキッドのお宝が隠されていると言われている場所です。鍾乳洞独特の空気感に包まれ恐る恐る入るも、トカラヘビが出そうなので即退散。海に、山に、鍾乳洞。敵のトカラヘビまで・・・。宝島を歩いているだけで、冒険心が掻き立てられます。

動物と共存
自然と一体

宝島を巡っていると動物達を見かけます。訪れた牛小屋では黒毛和牛の飼育がされていました。
宝島では畜産も盛んで、宝島で育った黒毛和牛は柔らかく、ファンが多いそう。こんな大自然で伸び伸び育った牛達なので、美味しくない訳がありませんね。

都内から移住されて畜産に挑戦された方も居て生き生きと生活をされていました。畜産以外にも島バナナの栽培をされている方がいたりと移住者が様々な事に挑戦できる環境の様です。そんな環境のおかげもあってか近年、移住者が増えているそうです。

トカラ列島は積極的に移住に力を入れており、その理由はの一つに。現在、7島に人々が暮らす十島村には、もう1つ有人島がありました。臥蛇島(がじゃじま)という名の島は、人口減少の影響で無人島となってしまいました。その過去から、『第二の臥蛇島をつくらないこと』を目標としています。

島は良い意味でも閉鎖的な所が多く、新しい風を入れたがらない。そのおかげで独自の文化、個性が守られている側面もあるので、非常に大事な事ではあると思います。ただ、その壁を無くして柔軟に受け入れてくれる所も、この島の魅力の1つなのだと思います。

生活を垣間見る
これこそ島旅

島民数130人余りのこの島では、集落はひとつ。集落内には診療所や、名前だけでかっこいい宝島郵便局などがあります。民宿も4件ほど。飲食店はないので旅行に来た際には民宿で3食いただくのがお勧め。出張所では乗船券を購入することもできます。

この集落で筆者にはどうしても行きたい場所がありました。売店です。売店にはお土産等も置いてあり、旅の思い出を、と思っていたのです。しかしこちらの売店は朝は1時間、夕方2時間で1日に3時間程しか開いていないので時間に間に合うかひやひやしたものでした。

売店の開店時間には島の人達も集まり気さくに声をかけてくれます。島の方はすごく大らかで、自然と溶け込める、受け入れてくれる。そんな空気感を持った方が多かったです。

実はこの旅で宝物を見つけました。島の人達と明かり一つない星空の下、ビーチの前で語り飲み明かした夜は私にとって大切な宝物です。それは、今でも続いています。

ロマン溢れるこの島に、ぜひ宝探しに来てみませんか。