OTHER 2022.10.19

自然×歴史×グルメ
魅力がギュッと詰まった
2泊3日の隠岐諸島旅へ

日本の離島では、広大な自然や独自の文化、新鮮な島グルメなど、都会では味わえないような島ライフを堪能できます。そんな島に溢れる魅力をまるごと楽しみたい方におすすめしたいのが、2泊3日の隠岐諸島旅。約180の小島からなる隠岐諸島の中でも、4つの有人離島を巡る島プランをご紹介します。

小林 希
((一社)日本旅客船協会の公認船旅アンバサダー)
元編集者で旅作家。2011年にサイバーエージェントの出版社を退職して、1年間世界放浪の旅へ。帰国後に本を出版して作家デビュー。これまでに海外70カ国、日本の離島を130島以上めぐり、旅や島、ネコなどをテーマに執筆活動を続ける。
世界ジオパークに登録され
日本屈指の絶景が広がる島々

3つの島がある島前(どうぜん)と、島後(どうご)の2つのエリアに分かれています。大自然が織りなす壮大な景観に加え、古事記の「国生み神話」では3番目に生まれた島として記されるなど長い歴史を持ち、格式高い神社が数多く存在しています。後鳥羽上皇や後醍醐天皇の遠流の地としても有名で、歴史的な資産が豊富。新鮮な魚貝類にも恵まれ、ブランド岩牡蠣や幻の隠岐牛などの島グルメや、古くから伝わる伝統行事にも触れられる魅力たっぷりの島々です。

【1日目】島後(隠岐の島町)
古代より続く歴史ロマンに触れ
奇跡の夕日に心奪われる

島根県の七類港か鳥取県の境港から船に乗り込み、島後を目指します。伊丹空港か出雲空港からは飛行機でもアクセスできますが、移りゆく海景色や潮騒の音を聞きながら、ゆったりと過ごす船旅がおすすめです。隠岐で1番大きな島の島後で、まずは西郷港にある隠岐自然館(隠岐ジオゲートウェイ2階)で隠岐の歴史や自然を知ってからスタート。「世界に認められたジオパークとは?」「隠岐独自の生態系とは」などが分かりやすく紹介されています。その後は、隠岐三大杉の1つ、八百杉がある玉若酢命神社や、岩壁の中央に社が入った神聖な雰囲気を味わえる壇鏡神社(壇鏡の滝)など、大自然を満喫できるスポットへ。ぜひ体験してほしいのが島のシンボルであるローソク島の遊覧船。季節や天候など気象条件が揃ったとき、ローソク島に夕日が灯るような光景が見られ、とても幻想的です。大きな島なので、移動はレンタカーが便利です。

【2日目】中ノ島(海士町)
島の自然が生んだ絶品グルメや
展望船から眺める海中世界を満喫

島後で1泊した後は、西郷港から中ノ島の菱浦港へ向かいます。暖流がもたらす鮮魚はもちろん、岩牡蠣や隠岐牛など、豊かな自然が生み出す中ノ島ならではのごちそうが魅力です。魚介類を鮮度を保ったまま冷凍保存する技術に力を入れており、ここでは1年中美味しい牡蠣を食べることができます。海を楽しむアクティビティは、海中展望船あまんぼうが人気。半潜水型になっているので三郎岩といった島の奇岩や海に潜む真鯛やブリ、小魚の大群など水上と水中の両方を堪能できます。火山の島ならではの、ゴツゴツとした海底も見所です。また、後鳥羽上皇の流刑地としても知られ、上皇の700年祭の年には隠岐神社が建てられました。夜の参拝も可能なので、神主による本格的な夜祈願を体験してみるのもいいですね。これらのスポットは港付近に集まっているので、移動手段はレンタサイクルでも充分周ることができます。

【3日目】西ノ島(西ノ島町)
天空の大草原でのお散歩や
パワースポットで癒される

最終日は中ノ島の菱浦港から内航船に乗って、西ノ島の別府港へ。西ノ島の独特の風景美はなんといっても、東西約7kmにわたって断崖絶壁が続く国賀海岸。長い年月をかけて、日本海の波風の力で造り出されました。海抜257mの高さに、垂直にそびえ立つ摩天崖は、トレッキングにもおすすめ。馬が放牧されており、海と山のコントラストを眺めながら、のんびりとした散策を楽しめます。また、隠岐観光が「国賀めぐり」クルーズを運航しているので、船上からダイナミックな断崖を仰ぎ見ると迫力満点。
パワースポットとしては、海上安全の神として知られる焼火神社が有名。隠岐諸島と本土を結ぶ隠岐汽船とも関わり深い神社です。焼火神社には、かつて海上から3つの火が浮かび上がり、今の社殿のある場所に入って社ができたという伝説が残されています。神官の松浦斌さんが「大きな蒸気船で、安全な航路を開こう」と始めたのが、今の隠岐汽船。隠岐汽船のシンボルマークは、3つの火玉に由来しています。そのため今でも船が焼火神社の前を通るときは、汽笛を鳴らして安全航海を祈り、敬意を払っています。そういった歴史に想いを馳せながら、汽笛を聞くのも面白いですね。移動距離が長くなるので、観光にはレンタカーがおすすめです。

余裕があればもう1泊!
自然が生み出した大迫力の
景色が広がる知夫里島へ

時間に余裕がある方は、もう1泊追加してダイナミックな自然美が広がる知夫里島へ。隠岐諸島の中で最も手付かずの島で、島の半分以上が森の状態のまま。この島に来たら必ず見てほしいのが、約1㎞に渡ってそびえ立つ火山の断面である赤壁です。火山活動の中で作られたもので、日本離れした圧巻の光景が広がります。島内で最も標高が高く、360度の大パノラマを見渡せる赤ハゲ山もおすすめです。また隠岐諸島でこの島だけにタヌキが生息しており、その生息数は2000匹を超えるのだとか。島の至る所が放牧場として利用されているので、牛やタヌキが悠然と歩く珍しい姿を見ることができます。移動にはレンタカーがおすすめですが、台数が少ないのと、道路に動物たちが立ち往生するケースもあるので、不安な方は予約制のタクシープランを利用するのがいいでしょう。

●ローソク島遊覧船、隠岐汽船、隠岐観光、あまんぼうの船では、それぞれ御船印も販売しています。

COLUMN

旅作家が選ぶ! ジオパークを味わえる“とって隠岐”のホテルEntô

海士町(中ノ島)の港にあるホテルで、自然との一体感を味わえる「Entô(エントウ)」。隠岐のジオパークの「泊まれる拠点」をコンセプトに建てられました。特に、2021年に別館「Entô Annex NEST」がおすすめ。木のぬくもりを感じられる空間で、窓を広くとった開放的なお部屋。部屋にいながら目前の島前カルデラ(海に沈んだカルデラ)が視界いっぱいに映り、そこを行き交う船や移り変わる空の色を眺めながらゆっくりと過ごせます。 夕食や朝食は、「地産地消」をモットーに、主に地元の食材が使われ、幻の隠岐牛や郷土料理を楽しめます。温泉やライブラリー、展示室ジオルーム、ジオラウンジなどもあり、滞在そのものが、まるごと隠岐観光を味わえる体験となります。 滞在中、ホテルが実施する夜の焚き火体験(無料)やアクティビティ、ツアーなどもあるので、初めての隠岐でも安心して楽しめます。