OTHER 2022.09.21

島をカメラで撮る魅力。
アイランドフォトトリップ
〜被写体別・撮影のコツもご紹介〜

懐かしくもどこか新しい、日本の原風景が根付く離島。どこまでも続く大海原や、入道雲との海のコントラスト、ドラマチックな夕日や、活気ある島の日常など。まるで島が一つの国であるかのように、印象的な情景との一期一会が待っています。

土庄 雄平
(トラベルライター)
商社・メーカー・IT企業と営業職で渡り歩きながら、複業トラベルライターとして活動する。メインテーマは山と自転車。旅の原点となった小豆島、転職のきっかけをくれた久米島など、人生の岐路にはいつも離島との出会いがある。
鮮烈な風景を撮る

島を訪れた時に、まず驚くのは色彩の豊かさです。どこまでも真っ青に広がる海に出会うと「根源的に求めている青色とは、この海の色だったのか。」と何だか腑に落ちる気がします。飾り気なく純粋な色調と、言葉には言い表せない絶妙なグラデーション。何の変哲もない海にこれほど心惹かれるのは、海の色を人間本来の色彩感覚が求めているからと思わざるを得ません。

ひとえに海といっても、劇的な色彩変化が待っています。真紅の朝焼けとともに白んでゆく朝。海の彩度が一段と増す日中。午後には、光の道を作りながら日が沈み、ドラマチックなオレンジ色からほのかに紫がかるマジックアワー。空の表情変化と連動する海を捉えることも、離島の風景を撮る一つの醍醐味です。

島の原風景を撮る

ヴィヴィッドな風景も良いですが、島を数々巡っていると、島の原風景にも目を向けるようになります。早朝、真っ暗なうちから活動する漁船、島民の集いの場でもある朝市、何気ない商店や街角のカーブミラー1つでさえも、島本来の生活や歴史を物語ってくれます。島の至る所に転がっている、その島がその島でたり得るピース。これを写真として拾い集めていくことに、なぜだか充足感と安堵感を覚えるのです。

都市に人が一極集中し、「本来の日本の姿が少しずつ失われているのではないか?」と感じられる昨今。古きよき日本の離島の原風景を撮ることで、きっと忘れてはいけない大事な感性と伝統を、心の中に大切にしまっておける気がします。そして、「その風景を守るために私たちに何ができるか?」ということを考える、きっかけもくれるのです。

島の今を撮る

変わりゆく離島。ただそれは、ネガティブな意味ばかりではありません。島本来の風景に、現代人の営みが反映された、いわば”島の今”といえる風景にも心惹かれることがあります。その典型的な事例が、瀬戸内国際芸術祭でしょう。島の伝統を受け継ぎ、その原風景に溶け込むように制作されたアート作品は、訪れる人に別の解釈を授け、まさにその島の心象風景を再構築しているようです。

島民と、その島に特別な思いを抱いたアーティストの協働により表現される、新たな島の顔。人の活動が垣間見えるという意味で、島の原風景と相容れないものではなく、むしろその延長線上にあるのではないでしょうか。近年移住者も増えてきている離島。新たな関係人口の動きが、”島の今”の魅力を高めており、その活気にカメラを構えてみるのも、何だか元気をもらえます。

高性能カメラを持って島旅に出たい理由

旅で見つけたとっておきの宝物である離島の風景。近年スマートフォンのカメラの性能もかなり向上してきましたが、それでも一眼レフカメラやミラーレスカメラといった高性能カメラを持っていくことをおすすめします。

その理由は大きく二つあります。まず一つ目は、表現の幅が大きく違うから。単に綺麗に写すだけであれば、スマートフォンのカメラでも申し分のないですが、変化に富んだ離島の風景や味を表現したいならば、どんなシーンにも対応できる高性能カメラがベターです。細かに設定を変えつつ、まるで自分しか撮れない作品を撮るアーティストのような心持ちで、フォトトリップを楽しむことができます。

二つ目は、高性能カメラを通じて、写真撮影をスキルアップできるというメリットがあるからです。前段でも少し触れたように、魅力的な被写体と、多彩な風景変化に富んでいるのが離島。仮に同じ島であっても、何度も通いながら写真を撮っているうちに、写真の切り取り方や感性、表現力を磨くことができます。風景・ポートレート・物撮りなど、どんな被写体にも対応できる撮影スキルが身に付きますよ。

被写体と筆者の撮影こだわりポイント

それでは次に、島旅でよく出会う被写体と撮影のこだわりポイントをご紹介します。カメラ初心者の方は、ぜひマニュアル撮影時の参考にしてみてください。

■海

まず最もスタンダードな被写体である海。平面的な構図になりがちですが、切り取り方によって少し印象が異なります。まず王道である広角、引きの構図。水平線を高さ1/2の位置に持ってきて、ダイナミックな海をそのまま写せます。

そこから水平線を高さ1/3の位置に持ってくると、画面のうち空を大きく写すことができ、雲などの表情によっては、よりドラマチックに切り取れることも。また色彩について、鮮やかさを重視したいときは風景モード、少しノスタルジックな情緒を出したい時には、忠実モードやニュートラルに設定します。

■夕日

島で眺める感動的な夕日。ともすると単調になりやすい被写体ですが、その臨場感を引き立てるために、人物のシルエットを生かします。夕日との明暗差により、人物の表情は表現しづらいものの、マジックアワーに対比するシルエットが、むしろ印象的な一枚に仕上げてくれます。

浜辺で夕日を眺めるなら、なるべく低いポジションから撮影するのがオススメ。波打ち際を前ボケにし、いっそう夕日を感動的に撮影することができます。また光が当たっている波打ち際を望遠で切り撮るのも味がありますよ。あえてピントを少しずらして、玉ボケを作ってみるのも面白いです。

■建物

年季の入った建物の歴史や味を出すためには、彩度は抑え目にコントラストを少し上げて撮影するのがオススメです。建物の節々に入っている線が、くっきりと表現され、どこかレトロな色合いが、そこにある人の生活を想起させます。細部まで目を向ければ、見所は際限がなく、建物の撮影こそ撮影者の感性や切り取り力を物語る被写体だと思っています。

引きで撮るならば、周囲の島の風景に溶け込んだ一枚を。ズームで撮るならば、建物の中にある規則性や不規則性に着目すると、より印象的な写真を撮影できる気がします。

■食べ物

旅に欠かせないグルメ。記録としてであれば引きで撮影しますが、より食べ物のしずる感を高めるためには、ズームでの撮影を行いましょう。被写体の手前の余白を使って、前ボケをフル活用します。

室内での撮影は暗くなることが多いです。暗所に対応し、撮影時に手ブレをしないように、ISO800〜3200に調整しながら撮影します。照明にも大きく色味が影響を受けるので、蛍光灯に対応するホワイトバランスを3000〜4000に調整すると、より忠実な写真を撮ることができますよ。

島の魅力を再発見する写真

いかがでしたでしょうか。本記事では離島の風景を撮る魅力と、ざっくりと被写体ごとに簡単な撮影方法やテクニックをご紹介しました。カメラを持って旅をするとき、これほど撮影していて好奇心が刺激される旅行先は、離島の他にありません。

自分ならではの感性や表現を大切に、ぜひ宝物のような風景写真を集めてみてください。きっと豊かな自然と人が織りなす、島の輝きを垣間見ることができるでしょう。